区分所有法 管理組合法人

〇建物の区分所有等に関する法律:47~56条
〇過去問
・管理業務主任者 H13問11,33、H14問36、H15問35、H16問、H17問32,39、H18問、H19問36、H20問36、H21問1,32,33、H22問3,29、H23問37,38、H24問31,34、H25問1,5,36、H26問31,32,37、H27問30,37、H28問36、H29問2,30,38
・マンション管理士 H13問28,32、H14問8,30、H15問8,14,27、H16問12,18、H17問10、H18問2,30,31、H19問11、H20問8,9、H21問26、H22問6、H23問6-8、H24問8、H25問5,8、H26問3,5、H27問2,5,7、H28問8,9、H29問7,8
 
 
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管理組合法人の概要(47,48条)
1)成立要件
 
・区分所有者および議決権の各3/4以上の多数による特別決議で以下を決める必要がある。
①法人となる旨
②名称(○○管理組合法人)
③事務所(主たる事務所の所在地において登記)
※定款の作成は不要。
 
●登記事項
①目的および業務
②名称
③事務所
④代表権を有するものの氏名、住所および資格(監事の氏名・住所は登記事項ではない)
⑤共同代表の定めがあるときは、その定め。
・次の登記事項は、その事由が生じた日から2週間以内にすること。
設立登記・変更の登記、事務所移転の登記、解散の登記、清算結了の登記
・一部管理組合法人の設立もできる。
・管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
 
2)メリット、デメリット
 
●メリット
〇管理組合法人名義での不動産の登記が可能
〇組合財産と区分所有者等の財産との区分が明確化
・法人化していない場合、既に不動産(駐車場や管理員室等)を所有する場合や新たに敷地や空室等の不動産を取得する場合、理事長個人名義(理論上は区分所有者全員の名義でも可能)で登記簿に記載しなければならない。さらに理事長が交代する度に”委任の終了”となるため、所有権移転登記をしなければならない。
・銀行口座や自動車、電話加入権なども管理組合名義で保有でき、管理組合の財産と、理事長個人の財産との区別が明確になる。
〇融資、資金調達
・大規模修繕工事等で金融機関から借入をする場合は、法人格を備えていた方が信用力が増すので、融資を受けやすく資金調達が比較的容易になる。
・法人でない場合には、理事長のほか理事全員の連帯保証が求められる場合があるなど、手続きが複雑になる。
 
●デメリット
・法人の登記事項に変更が生じる(主に理事長の交代)度ごとに登記手続きをしなければならない。
→登記事務の手間と経費が増える。
※理事長の変更が無くても(再任しても)、任期満了により改めて役員の変更登記手続きは必要になるので、これを司法書士に依頼する場合、2・3年ごとに数万円の出費となる
 
3)民法の準用
 
管理組合法人には、民法の法人の規定が準用される。
・法人の能力
・法人の不法行為能力等
・法人の住所
・財産目録、社員(区分所有者)名簿の作成等
各種の能力(47,48条)
・管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する(47条6項)
※以下は”管理組合法人”に対してのことで、”理事”ではない。
 
①不動産登記
 
②民事訴訟
・管理組合法人もその事務に関して”規約又は集会の決議を得て”、管理者と同様、区分所有者のために訴訟上の原告又は被告となることができる。
※規約の場合は、通知が必要。
 
③損害保険金の請求、共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領
・区分所有者を代理する。
※法人格を有していない管理組合が管理組合法人になった場合、管理者の職務のうち、不当利得による返還金の請求及び受領については、当該管理組合法人の代表理事が承継するわけではなく、管理組合法人が承継する。
 
④融資等
・取引の相手方である第三者との関係が明確になる。
※非法人でも権利能力なき社団としての性質を有している限り、その権利能力に実質的な差異はない。
 
⑤税務上の取り扱い
・公益法人と同様に、非収益事業による所得には課税されない。
 
⑥成立前の効力
・管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。
 
⑦管理組合法人の代理権に加えた制限
・善意の第三者に対抗することができない。
 
〇代表者の行為についての損害賠償責任
・管理組合法人は、代表理事その他の理事がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
・その行為は同時に理事の行為でもあるので民法709条”故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。”の要件を満たせば理事も法人と連帯して責任を負うことがある。
管理組合法人の理事(49条)
※管理者
・管理組合が法人化されると、管理者に関する規定は管理組合法人に適用されなくなるので、管理組合法人においては管理者を置くことはできない。
 
●理事
・理事は、管理組合法人を代表する。
※管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。(理事が管理組合法人を代理するわけではない。
・理事の責任は、管理組合法人に対する責任であり、各区分所有者に対して個別に不法行為責任を負わない。
 
例)管理組合法人と理事の損賠賠償責任
・管理組合法人の防災担当理事Aが、過失により防災訓練実施中に区分所有者Bにけがをさせてしまった場合、管理組合法人もBに対して損害賠償責任を負う。
→一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条の規定は管理組合法人に準用されており、一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
 
●代表理事
〇理事が数人の場合の原則
・各自管理組合法人を代表する。
 
〇代表理事定めるには
・規約又は集会の決議によって定める。
・代表理事以外の理事は代表権を有しない。
 
〇共同代表理事を定めるには
・規約又は集会の決議によって定める。
・共同してでなければ代表権を行使することはできない。
 
〇理事の互選によって代表理事を定めるには
・規約の定めが必要。
 
●理事の資格
・規約で定めがない限り、区分所有者以外の者を理事として選任できる。
・法人を理事として選任することはできない。
 
●理事の任期
・任期は2年。
・規約で3年以内において別段の期間を定めることができる。
任期の定めはあるが再任は禁止していない。
 
●理事の欠損
・規約で定めた理事の員数が欠けた場合において、その選任手続きを怠った理事は、20万円以下の過料に処せられる。
・事務が遅滞し損害を生ずる恐れがあるときは、裁判所は、利害関係人または検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。
 
●利益相反事項(51条)
・管理組合法人と理事との利益が相反する行為については、監事が管理組合法人を代表する。
 
●理事の代理行為の委任(49条3)
〇代理を他人に委任
・理事は、規約又は集会の決議によつて禁止されていないときは可能。
・特定の行為のみ可能。
※理事と管理組合法人の関係は委任関係であって、基本的に復委任はできないが、”特定の行為”については復委任を認めている。”特定の行為”ではなく、理事の持つ代表権を”包括的”に復委任することはできない。
監事(50条)
●監査の対象
・財産の状況
・理事の業務の執行の状況
 
●監事が集会を招集できる状況
〇対象
・財産の状況、業務の執行
〇状況
・法令や規約に違反
・著しく不当な事項があると認めるとき
財産・名簿・規約の管理、事務の執行
●事務の執行(52条)
〇原則
・管理組合法人の事務は、すべて集会の決議によって行う。
 
〇集会の決議以外による執行
・”規約”で定めれば、以下の事項以外は、理事その他の役員が決するものとすることができる。
※集会決議が必ず必要な事項:特別決議事項と57条第2項(行為の停止等の請求を、訴訟を提起して行う場合)に規定する事項
 
〇保存行為
・前項の規定にかかわらず、保存行為は、理事が決することができる。
 
〇理事が数人ある場合の事務の執行
・規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。
 
●規約の保管(47条12項)
・理事が管理組合法人の事務所において保管しなければならない。
 
●財産目録及び区分所有者名簿(48条の2)
・毎年1月から3月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。
・特に事業年度を設けるものは、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。
・区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。
・財産目録を作成せず、又は、不正の記載をした場合は、20万円以下の過料
管理組合法人の解散(55条)
①建物の全部が滅失したとき
・この場合は、法人格のない管理組合としても存続しない。
②建物に専有部分がなくなった場合
・区分所有者が一人になっても、専有部分が存続すれば、管理組合として存続するので、解散事由には該当しない。
③集会で解散の特別決議がなされた場合
 
※債務超過のような理由は解散事由とはならない。
 
●清算中の管理組合法人の能力(55条の2)
 
・管理組合法人が解散したときは、清算手続を行う。
・解散した管理組合法人は、清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまではなお存続する。
 
〇集会決議による解散の場合
・第3条の管理組合は存在するので、清算法人と併存する形になる。
※管理組合法人の財産は、解散後の第3条の管理組合の財産と区別した上で、清算されることになる。
 
●清算人(55条の3)
〇管理組合法人が解散したとき
・原則、理事がその清算人となる。
・規約で別段の定め、又は集会において理事以外の者の選任も可能。
 
〇破産手続開始の決定による解散の場合
・破産管財人が清算を行う。
 
●管理組合法人の債務、財産
〇管理組合法人の残余財産
・”規約に別段の定めがある”ときを除いて、共用部分の持分の割合により各区分所有者に帰属する(56条)。
 
〇管理組合法人の債務
・管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、共用部分の持分割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。
・区分所有者の特定承継人は、その承継前に生じた管理組合法人の債務についても、その区分所有者が負う責任と同一の責任を負う。
※この規定は譲渡人の責任を免除するものではないので、特定承継人とともに譲渡人も併存して責任を負う。

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