区分所有法 義務違反者に対する措置

〇建物の区分所有等に関する法律:57~60条
〇過去問
・管理業務主任者 H13問、H14問37、H15問40、H16問、H17問、H18問、H19問29、H20問、H21問、H22問30、H23問37、H24問、H25問39、H26問31,39、H27問、H28問37-39、H29問
・マンション管理士 H13問5,32-34、H14問5,6、H15問9,31、H16問4,10,31,32、H17問4,5,7,11、H18問10、H19問5,10、H20問9,17、H21問10,26、H22問、H23問8,32、H24問7,9,26,28,33、H25問2,3、H26問4,8、H27問9、H28問10、H29問8
 
 
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概要
・”共同の利益に反する行為の禁止”(6条)に規定する行為をした場合、又は、その行為をするおそれがある場合、に対する措置の規定。
 
●請求の主体
・他の区分所有者の全員又は管理組合法人。
 
●共同の利益に反する行為の対象行為
・建物の保存に有害な行為
・建物の管理又は使用に関し共同の利益に反する行為
 
●訴訟の提起、提起する者
〇訴訟の提起
・集会の決議が必要。規約で別段の定めは不可。
〇提起する者
・管理者
・集会において指定された区分所有者
行為の停止等の請求(57条)
●措置の内容
①その行為の停止
②その行為の結果の除去
③その行為を予防するために必要な措置を行なうこと
 
●請求、訴訟
・訴訟を提起するには集会決議が必要。
・裁判によらないで請求することもできる。
※この場合各区分所有者が単独でできる。
 
●弁明の機会、違反行為が占有者の場合
・違反行為をしているのが占有者の場合には、占有者のみを相手方として訴訟を提起すればよい。
・義務違反者に弁明の機会を与える必要はない。
・占有者が共同の利益に反する行為をしている場合、共同の利益に反する行為の”停止等の請求”はすることができるが、その専有部の区分所有者であっても、その行為の結果の除去等(看板の撤去など)の措置を取ることはできない。
・共同の利益に反する行為の原状回復は、”区分所有者”に対して行う。
→旧所有者が設置した物の場合は、撤去請求を受けるのは現時点で共同の利益に反している現所有者となる。なお、管理費の滞納なら、旧所有者にも請求が出来る。
使用禁止の請求(58条)
●”専有部分の使用”禁止請求(特別決議)
・建物の保存に有害な行為によって共同生活上の障害が著しく、単に行為の差止請求によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保、その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき。
 
〇弁明の機会
・義務違反者に弁明の機会を与える必要がある。
 
〇請求相手
・専有部分の使用禁止の請求は、区分所有者に対する措置であり、占有者に対して使用禁止の請求をすることはできない。
区分所有権の競売の請求(59条)
●区分所有権の競売請求(特別決議)
・建物の保存に有害な行為によって共同生活上の障害が大きく、他の方法(行為の停止等の請求)によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保、その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき。
・当該義務違反者が、専有部分をすでに譲渡した場合には、この競売請求は認められない。
・義務違反者の立場を長期間不安定にしないように、競売の申立ては、判決が確定した日から6月を経過したときは、することができない。
 
〇弁明の機会
・義務違反者に弁明の機会を与える必要がある。
 
〇無剰余取消し
・競売の目的である区分所有権及び敷地利用権にその価額を上回る優先債権がある場合には、配当を受けることは期待できないが、競売自体は行うことができ、配当要求をすることにより、時効を中断する効果はある。
 
●標準管理規約のコメント
・滞納管理費等の債権に優先する債権があって民事執行法第63条1項の剰余を生ずる見込みがない場合であっても、競売手続を実施することができるとした裁判例があり(東京高決平成16年5月20日(判タ1210号170頁))、区分所有者がいわゆるオーバーローン状態でも競売手続を実施することができる可能性がある。
 この場合には、区分所有法8条により特定承継人である競落人に滞納管理費等の支払を求めることができるため、滞納者を区分所有関係から排除した上で、新しい所有者から滞納管理費等の支払を受けることが可能となる。ただし、買受可能価額が競売の手続費用を下回るような場合には、無剰余取消しとなる可能性があることも考慮する必要がある。
 
●注意点
〇譲受人、特定承継人
・判決が確定した場合でも、競売の訴訟の口頭弁論終結後から競売開始までの間に、被告が区分所有権及び敷地利用権を第三者に譲渡することは妨げられず、この場合には判決の効力は譲受人には及ばず、当該訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。
・区分所有権等の競売は、担保不動産競売ではなく、民法執行法195条の”その他の法律の規定による換価のための競売”に該当する。
・管理費支払いの訴訟→口頭弁論の終結前に専有部分の譲渡を受けた特定承継人の財産に対しては、別途債務名義を得なければ、強制執行をすることができない。
 
〇強制競売と担保不動産強制競売の違い
・住宅ローンなどの支払いが停滞したときに、抵当権を実行して不動産を競売に掛けることで債権回収するのが担保不動産競売。
・裁判に勝訴して確定したなどの理由で債務名義を入手した債権者が、不動産を競売に掛けて債権回収するのが強制競売。
・担保不動産競売は強制競売の方法を準用するが、相違する部分も多くある。
例)抵当権競売で落札した買受人の権限は抵当権設定時にさかのぼるので、そのあとで賃借人になった占有者より優先されるが、強制競売では競売を申し立てた時点の権限になり、賃借契約に劣後する、などの違いが発生する。
占有者に対する引渡し請求(60条)
●占有者に対する引渡し請求(特別決議)
・占有者が共同の利益に反する行為をし、建物の保存に有害な行為によって共同生活上の障害が大きく、他の方法(行為の停止等の請求)によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保、その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき。
 
〇弁明の機会
・義務違反者に弁明の機会を与える必要がある。
・弁明の機会を与える必要があるのは、賃借人であり、賃貸人である区分所有者に弁明の機会を与える必要はない。
 
〇請求相手
・賃貸借契約等を解除して、専有部分の引渡しを請求する。
・この訴訟の被告は賃貸人・賃借人の両方。
→契約当事者以外の者の請求に基づき、契約の解除の効果を生じさせるもののため。不法占拠者の場合は占有者のみ。
・占有者が専有部分の転借人であるとき、専有部分の賃貸借契約の解除の対象となるのは、転貸借契約であり、転貸人と転借人を共同被告として訴えを提起すればよく、原賃貸人である区分所有者を共同被告とする必要はない。
・判決→原告(管理組合又は管理組合法人)に引渡し→区分所有者(賃貸人)に引渡しという流れになり、直接区分所有者に引き渡されるわけではない

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