可分債務と不可分債務

〇民法:427~435条
〇過去問
・管理業務主任者 H20問1、H28問4
・マンション管理士 H20問15、H21問14,16、H24問13、H27問16
 
 
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分割債権・分割債務の原則
●分割債権及び分割債務の原則(427条)
・数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
 
●分割債権、分割債務の性質
・各債券・各債務はそれぞれ独立したものであり、各債権者は各自の債権を独立して行使し、各債務者は各自の債務を弁済すれば足りる。
・一人の債権者について生じた事由の効力は、他の債権者に影響を与えず、一人の債務者について生じた事由の効力も他の債務者に影響を与えない。(相対的効力)
連帯債権
1)連帯債権とは
 
・数人の債権者が同一内容の給付について、各自独立して全部または一部の履行を請求でき、そのうちの一人が弁済を受けた場合には、その範囲において他の債権者の債権も消滅する。
例)転借人に対する転貸人と原賃貸人の賃料請求権
 
・各連帯債権者は、債権について、それぞれ内部的な持分を有する。
 
〇不可分債権との違い
・不可分債権は、債権の目的が、”性質上不可分”のもの。
・連帯債権は、債権の目的が、その”性質上可分”であるが、”法令の規定または当事者の意思表示によって”成立するもの。
 
2)連帯債権者による履行の請求等(432条)
 
・各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
  ↓
・各債権者が、単独で自己に給付せよ、と請求できる。
・債務者が任意に債権者の一人に対して履行することができる。
※単独で履行を受けた債権者は、他のすべての債権者に対して、内部的持分の割合に応じ、受領した給付を分与すべきとされている。
→その割合は、特別の事情がなければ平等と推定される。
 
3)連帯債権の絶対的効力
 
〇履行の請求、時効の完成猶予・更新
・債権者の一人が”請求”をすると、時効の完成猶予・更新の効力が生じる。その効力は、全ての債権者に及ぶ。
 
〇相殺(434条)
・債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合で、その債務者が相殺を援用したときは、他の連帯債権者に対してもその効力を生じる。
 
〇混同(435条)
・連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは、債務者は、弁済をしたものとみなされる。
 
〇更改・免除(433条)
・連帯債権者の一人と債務者との間に更改・免除があったときは、その連帯債権者が、自己の権利を失わなければ分与されるべき利益(連帯債権について各連帯債権者が有する持分的利益)に係る部分については、他の連帯債権者は、履行を請求することができない。
 
4)相対的効力の原則(435条の2)
 
・上記絶対的効力以外は、連帯債権者の一人の行為または一人について生じた事由は、原則として、他の連帯債権者に対して、その効力を生じない。
・連帯債権者の一人と債務者の間の特約で、その連帯債権者について別段の効果を合意することは可能。
不可分債権、不可分債務
1)不可分債権
 
●不可分債権とは
・数人の債権者があり、債権の目的がその性質上不可分であるもの。
 
〇”性質上”不可分の債権の例
・家屋を共同購入した場合の引渡請求権
・宅地の共有者と共有地上に家屋を建築する契約
・共有者の所有権に基づく共有物返還請求権(大判大10.3.18)
 
●不可分債権の絶対的効力
〇履行の請求、時効の完成猶予・更新
・連帯債権と同様。
〇相殺
・連帯債権と同様。
 
●不可分債権の相対的効力
〇混同
〇更改、免除(429条)
・不可分債権者の一人と債務者とで更改又は免除があった場合、債権自体が不可分なので、他の債権者は、なお本来の債務の全部の履行を請求できる。
 この場合において、更改・免除をした不可分債権者は、自己の権利を失わなければ分与されるべき利益(各債権者が有する内部的な持分利益)を債務者に償還しなければならない。
 
2)不可分債務
 
●不可分債務とは
・債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるもの。
例)
・管理組合が、管理会社に対して支払う委託業務費。
・2人が共有する1つの専有部分を賃貸する場合における当該専有部分の引渡債務。
・2人で専有部分を賃借している場合、その専有部分を借りる権利は不可分的なものと言え、それに対応する賃料債務も不可分債務になる(判例)
 
●不可分債務の効力
・混同を除いて、連帯債務の規定が準用される。
・不可分債務の場合は、混同は相対的効力。
 
3)可分債権又は可分債務への変更(431条)
 
・家屋の引渡給付の債権・債務について、当該家屋が焼失したために損害賠償債権や損害賠償債務に変わったような場合。

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