売買契約、手付、売主の担保責任

〇民法:555~578条
〇過去問
・管理業務主任者 H13問43,44、H14問5,44、H15問43、H17問41,42、H18問1,42、H20問41、H21問2,41,42、H23問41,42、H24問40、H26問40、H27問40,41、H29問41
・マンション管理士 H13問16,21、H14問14、H15問17、H18問17、H20問16、H22問5、H23問12、H24問14、H25問14、H27問17、H28問14、H29問15
 
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
売買契約の概要
●売買契約に関する費用(558条)
 
・売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
例)目的不動産の鑑定評価、売買契約書に貼る印紙の費用、など。
 
〇対象外
・売主が目的物を移転したり、買主が代金を送ったりする費用などは、債務の弁済のための経費であり、債務者が負担する。
 
●代金の支払期限(573条)
 
・売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても”同一”の期限を付したものと推定する。引渡し”後”直ちに支払うべきものと推定されているわけではない。
・売買は双務契約なので、両当事者は常に同時履行の抗弁権を持っている。
 
●売買の予約(556条)
 
〇予約完結権
・通常は、買主になる予定の者に対して、後日売主に”本契約を締結する”という意思表示をするだけで売買契約を成立させられる権利を与えることをいう。
〇不動産の場合
・不動産に関する予約は、仮登記することにより権利を保全することができる。
手付
●手付とは
・売買契約の締結の際に、買主から売主に対して支払われる一定額の金銭。
 
●手付の種類
・定めなかった場合には解約手付と推定される。
 
○証約手付
・契約締結の証拠として交付される手付。
・全ての手付は、少なくとも証約手付の性質を持つ。
 
○違約手付
・債務不履行があった場合に、その損害賠償の額を予定する目的で交付される手付。
・単に”違約罰”として没収する趣旨のみで交付され、”別途損害賠償を請求できる”とする場合もある。
 
○解約手付
・手付の金額だけの損失(買主は手付放棄、売主は倍額を償還)により、相手方に債務不履行がなくても、契約を解除できる趣旨で交付される手付。
 
例)手付による解除は、手付を放棄したり、倍返しすることにより、売買契約を解除できるとするもので、それとは別に損害賠償を請求することはできない。
 
●手付による契約の解除(557条)
・買主が売主に手付を交付したときは、”相手方”が契約の履行(登記、引渡、代金支払)に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
※”相手方”が履行に着手すれば、手付解除ができないということは、逆に言うと、自分の方だけが履行に着手していて、相手方が履行に着手していない場合は、まだ手付解除ができる
・手付による解除が行われても、損害賠償の問題は生じない。
売主の契約不適合責任
1)売主の契約不適合責任とは
 
・売主は、契約の内容に適合したものを引き渡す責任がある。
 
〇不適合の内容
・引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない。
・買主に移転した権利が契約の内容に適合しない。
※不適合が隠れたものではなく、買主が悪意(知っていた場合)でも、契約不適合であれば、売主への責任追及が可能。
 
〇契約不適合時の買主の権利
・買主は、引き渡された権利や目的物が、上記のように契約の内容に適合しないものであるときは、売主に対して以下を求めることができる。
①追完請求
②代金減額請求
③損害賠償請求
④契約の解除
 
〇売主の帰責事由
・損害賠償請求以外は、売主に帰責がなくとも請求可能。
 
〇買主に帰責事由がある場合
・上記権利を請求することはできない。
 
2)買主の追完請求権(562、565条)
 
〇買主が請求できる事項
・目的物の修補
・代替物の引渡し
・不足分の引渡し
 
〇売主による異なる履行の追完
・売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
 
3)代金減額請求権(563、565条)
 
〇請求できる条件
・上記の追完請求を、”相当の期間”を定めて催促し、その期間内に履行の追完がないとき。
 
〇買主が請求できる事項
・その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
 
〇無催告で代金減額請求
・以下の場合は、無催告で直ちに代金減額請求ができる。
①履行の追完が不能であるとき。
②売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
③契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
④上記①~③のほか、買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
 
4)損害賠償請求(564、415条)
 
・契約不適合責任は、債務不履行責任の一形態なので、損害賠償請求も可能。
 
〇売主の帰責
・売主に帰責事由がない場合は、請求できない。
 
債権の概要、債務不履行参照

 
5)契約の解除(564、541、542条)
 
・契約適合は、売主がその債務を履行しない場合又は履行が不能な場合であるので、債務不履行として、契約の解除をすることができる。
 
契約の解除、危険負担参照
 
6)競売(強制、担保)における担保責任(568条)
 
〇競売の目的物の数量、権利に関する契約不適合の場合
・契約の解除、代金減額請求は可能。
 
〇競売の目的物の種類、品質に関する契約不適合の場合
・上記も含め請求はできない。
→善意無過失でも、買主は責任追求することができない
 
7)担保責任の期間の制限(566条)
 
〇目的物の種類、品質に関する契約不適合の場合
・買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、上記①~④の不適合責任の請求をすることができない。
・売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、請求可能。
 
〇目的物の数量、権利に関する契約不適合の場合
・上記制限は適用されない。
 
8)担保責任を負わない旨の特約(572条
 
・契約不適合の担保責任の規定は任意規定なので、担保責任を負わない特約も可能。
・ただし、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
 
○他法との関連
・宅地建物取引業者が販売したものであれば、宅地建物取引業法の特例が優先的に適用される。
・新築住宅であれば、住宅品確法の特例が優先的に適用される。
・上記法律では、”民法の規定よりも買主に不利となる特約は無効”と定められている。
権利に関する売主の義務
1)権利移転の対抗要件に係る売主の義務(560条)
 
・売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。
→登記等の移転の義務は売買契約の内容とされ、この義務に違反すると、債務不履行責任(損害賠償請求、契約解除)を負うことになる。
 
2)他人の権利の売買における売主の義務)(561条)
 
・他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
→他人物売買も契約としては有効。
→売主は、その他人の物を取得して買主に移転しなければならず、その移転ができなかった場合は、債務不履行責任(損害賠償請求、契約の解除)を負うことになる。
 
3)抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求)(570条)
 
・買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権又は抵当権が存していた場合において、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
例)抵当不動産の買主が、抵当権消滅請求をして権利を保存した場合など。

コメントを残す

Your email address will not be published.

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください