大規模修繕工事の瑕疵保険

マンション大規模修繕工事の瑕疵保険に関する情報をまとめました。
 
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
概要
1)大規模修繕工事の瑕疵保険の概要
 
・工事の請負業者が加入する保険。
・工事のうち保険の対象となる部分に対して検査員(一級建築士等)が2~4回(施工前、施工完了後等)検査を実施するので一定の品質が確保される。
・工事後に見つかった瑕疵(欠陥、不具合等)を直すための費用に保険金が支払われる。
 
2)保険対象
 
●構造耐力上主要な部
・柱・梁・壁等において行う、耐震診断・調査に基づく耐震補強・耐震改修工事
・そのほか耐震性能を向上させる工事など。
※新耐震基準に適合する工事に限る。
 
●雨水の浸入を防止する部分
・外壁の爆裂・クラック補修、目地補修、樹脂注入、アンカーピン工事等の外壁工事
・シーリング工事
・屋上防水工事
・省エネサッシ取替工事など
 
●給排水管路および給排水設備
・給排水管路の更新工事、更生工事など
※専有部分の給排水管路の工事を含む場合には、当該専有部分の給排水管路についても保険対象となる。
・受水槽、高架水槽の新設、直圧工事(ブースターポンプ設置)など
 
●電気設備
・分電盤、テレビアンテナ、LED照明器具等の取替工事
・高圧受電設備工事
・自動ドア新設・更新工事
・電気自動車充電設備工事など
 
●タイル(特約付帯時のみ)
・外壁、手すり壁におけるタイル仕上げの剥落事故が補償対象となる。
 
3)保険期間
 
・工事請負契約に基づくすべての工事を完了した日から起算して、原則5年間。
〇手摺・柵または防錆鉄部:2年間
〇タイル剥落(特約):5年間or10年間
〇屋上防水工事等に係る保険期間延長特約:10年間
 
4)検査
 
・建築士の資格を有する保険法人の検査員または保険法人が認定した団体の検査員による現場検査が、工事内容によって数回実施される。
 
●事前審査
・工事をする前に図面・仕様書・使用材料一覧表等を審査する。
・工事の内容、工事範囲、工事工程等の確認。
・設計施工基準に適合する工事内容となっているか審査する。
 
●現場検査
・着工前の検査で、修補する内容・現況を目視により確認。
・施工状況の目視確認、工事記録の確認・ヒアリング
・工事完了後、計画通りに工事されているかチェック。
→現場検査を行い、きちんと直っていない場合は保険証券が発行されない。
 
〇設計施工基準
・この基準をクリアした工事は一定の施工品質が確保される。
 
5)工事後に欠陥が見つかった場合の対応
 
・保険会社に連絡
→検査員が現場確認・調査し、工事の瑕疵に該当するか判断
→瑕疵に該当
→工事会社が修補
→工事会社に修補費用が保険で支払われる。
 
●工事会社が倒産していた場
・検査員が工事の瑕疵に該当するか判断
→瑕疵に該当
→新しい工事会社に見積依頼
→保険会社が見積内容を確認し、管理組合に修補費用を支払う
→新しい工事会社が修補
 
6)補修費用以外の支払い対象
 
〇事故調査費用
・修補が必要な範囲、修補の方法・金額を確定するための調査に要した費用。
・支払限度額:1事故につき、修補費用の10%または200万円のいずれか小さい額
 
〇仮住まい費用
・修補期間中に転居を余儀なくされた入居者から請求を受けた宿泊、住居賃借または転居に要した費用。
・支払限度額:1住戸につき50万円
 
●縮小てん補率
・施工業者が営業中の場合、支払われる保険金は修補費用等から免責金額10万円を控除し、80%の縮小てん補率を乗じた額となる。
→修補費用等を全額支払うと、かえって悪質な工事を助長しかねないため。
・施工業者が倒産や廃業の場合または修補が一定期間経過後もなされない場合、消費者保護の観点から縮小てん補率は100%。
 
7)保険申込を希望したのは?
 
※参考資料 マンション管理新聞2020年4月25日号
住宅あんしん保証の大規模修繕瑕疵保険の事例
 
・発注者側が希望:約9割
 設計事務所主体で特記仕様書に加入主体:約50%
 管理組合が加入を要望:約25%
 管理会社主体で特記仕様書に加入主体:約15%
・工事会社自ら加入:約1割
特約
1)あんしん大規模修繕工事瑕疵保険の主な特約
 
〇防水工事に係る保険期間延長特約(※10年間)
〇タイル剥落に係る特約(5年/※10年間)
〇外壁塗膜担保特約(5年間)
・塗膜の著しい膨れ、剥がれ又は割れが補償対象となる。
 
※)10年とする場合、より高品質な工事内容として設計施工基準に定める基準で工事を実施する必要がある。
 
2)特約を付けていないと支払い対象外となる事
 
※参考資料 マンション管理新聞2020年4月25日号
住宅あんしん保証の大規模修繕工事瑕疵保険の事例
 
〇タイルが剥落、防水性能は維持されている状態
・基本補償のみの契約では支払い対象外。
→基本補償の”雨水の浸入を防止する部分”はタイルが剥がれた箇所から漏水がなければ支払い対象とならないため。
 
〇塗装工事実施部分の膨れ
・基本補償のみの契約では支払い対象外。
→漏水がなければ膨れだけでは保険金が支払われない。
→外壁塗膜担保の特約を付けていないと対象とならない。
設計施工基準
RC造の設計施工基準の一例をメモ書きしました。
 
1)構造耐力上主要な部分
 
〇新設、撤去を伴わない場合
・工事の対象とする部位の状況にあわせて補修工法、補修材料を選定する。
 
2)雨水の浸入を防止する部分
 
①屋上防水
●工法の選定
・既存防水層・既存下地の状況・材質、端部の納まり、下地のムーブメント、強風時の負圧に対する抵抗性(下地の強度、既存防水層の接着性能)等を考慮する。
〇かぶせ方式の場合
・既存の防水層、既存の保護層及び下地に含まれる残留水分の存在が想定される場合は、脱気装置・改修用二重ドレンの設置等の対策を講じる。
 
●パラペットの上端部
・笠木の設置又は防水材料の施工等、雨水の浸入を防止するために有効な措置を講じるものとする。
 
●シーリング処理
・防水処理が施されていない屋根躯体(パラペット又は屋根躯体と一体の架台等)を設備配管等が貫通する部分又は金物等が埋め込まれた部分は、それらの周囲をシーリング材で処理する。
 
②勾配屋根の防水
・新規の下ぶき材の品質及びふき方は、次の各号に適合するものとする。
 ・下ぶき材は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)のアスファルトルーフィング940又はこれらと同等以上の防水性能を有するものとする。
 ・長手方向を横向きに用い、上下(流れ方向)100mm以上、左右200mm以上重ね合わせるものとする。
 ・谷部及び棟部の重ね合わせ幅は、谷底又は棟頂部より両方向へそれぞれ250mm以上重ね合わせるものとする。
 ・屋根面と壁面の取合部においては、壁面に沿って250mm以上立ち上げる。
 
③防水工事の保険期間延長特約付帯時
●工法
・指定された工法に適合するもの又はこれ以上の防水性能を有するもの。
 
●防水下地面の勾配
・1/50以上とする。ただし、保護コンクリート等により表面排水が行いやすい場合の勾配は、1/100以上とすることができる。
 
3)給水管路、排水管路、給水設備、排水設備、電気設備
 

 
4)手すり等の塗装改修工事
 
・塗装改修工事は、既存の塗膜の劣化状況に応じて、劣化塗膜を除去し塗装を行うものとする。
〇鉄部の下地調整の種別
・次に掲げる①又は②によるものとする。
①既存塗膜を全面除去して、発生している錆を除去する。
②既存塗膜の劣化部分を除去して、発生している錆を除去する。
 
5)外壁タイル剥落改修(10年の特約の場合)
 
次の各号のいずれかに適合するものとする。
●既存の外壁タイルを撤去しない場合
・次のいずれかの工法に適合すること。
①ピンネット工法
②特殊繊維強化アクリル樹脂カバー工法(ただし、アンカーピンを用いるものに限る。)
③乾式タイルカバー工法
④乾式サイディングカバー工法
⑤石調シート貼り工法(ただし、下地処理を適切に行うものに限る。)
⑥アスファルトシングル防水工法(ただし、既存仕上げ材を躯体に確実に固定する措置を行い、かつ斜壁の改修を行うものに限る。)
 
●既存の外壁タイルを撤去した上で改修する場合
・既存の外壁仕上げ及び下地状況・材質等を考慮して選定する。
・外壁タイル剥落改修に用いる材料は、所定のものであること。
・外壁の仕上り面は、所定の形状及び寸法を有し、所要の状態であること。
・タイル及び左官工事で塗りつけた材料には、有害な浮きがないこと。
保険料等の例
●物件情報
・延床面積:約1,000m2
・戸数:30戸
・請負金額:約1,300万円
 
●保険内容
・保険金支払限度額:2,000万円
・基本補償:防水(5年)
・特約:タイル剥落(5年)
 
●保険料等
〇保険料
・基本補償の保険料:約8.8万円
・タイル剥落特約の保険料:約0.7万円
 
〇検査料
・事前確認検査:約5.5万円
・防水等検査:約4.3万円
 
〇合計
・約19万円
 
※その他、施工会社の事務手数料が5万円程かかりました。

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