屋上防水は仕様の種類が多く相見積の比較が大変?

屋上防水の改修工事は足場がなくても実施できることもあり、大規模修繕工事とは別に実施する場合があります。
 
大規模修繕工事の見積比較の場合は、事前に共通仕様を決めた上で見積金額やアフターサービス、施工業者の施工実績・技術力等を比較するので、屋上防水の細かい仕様を検討することは少ないと思います。
 
しかし、屋上防水単独の改修工事の場合は、細かい仕様についても理事から要望・指摘が出たり、共通仕様を作らずに施工業者からの提案も受け入れたりすると、異なる仕様の見積が多く提出され、比較するのが困難になってしまうことがありますので注意が必要です。
 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
仕様を指定せずに相見積を実施し、苦労した事例(2014年)
(1)既存の屋上防水仕様の概要
 
〇既存の屋上防水の仕様
・露出アスファルト防水
 
〇改修工事の施工範囲
・屋上:約70m2
・下階の屋根1:約14m2
・下階の屋根2:約2.5m2
 
(2)管理会社の提案仕様
 
〇屋上:約70m2
・平場:ウレタン防水通気緩衝工法
・笠木:ウレタン防水密着工法
〇下階の屋根1:約14m2
・平場:ウレタン防水通気緩衝工法
・笠木:ウレタン防水密着工法
〇下階の屋根2:約2.5m2
・平場:ウレタン防水密着工法
・笠木:ウレタン防水密着工法
 
(3)理事の推薦業者に相見積を依頼
 
●管理会社の見積書の金額を空欄にして見積依頼
 
・管理会社に提案してもらった見積書の金額を空欄にして、理事が推薦する業者3社に見積を依頼しました。
・三社とも現場を確認したうえで見積提案するとの回答でした。
・三社とも既存が露出アスファルト防水であったため、材料の相性等考慮して露出アスファルト防水の仕様での提案となりました。
・露出アスファルト防水の共通仕様フォーマットは用意していなかったため、各社の提案仕様に任せる形になりました。
 
●4社でそれぞれ異なる仕様の見積が提出
 
項目名管理会社競合A社競合B社競合C社
防水種類ウレタンアスファルト常温粘着工法アスファルト常温粘着工法アスファルトトーチ工法
仕様通気緩衝工法複層密着工法単層密着工法2層絶縁工法
特記勾配調整含む
見積金額250万300万190万250万
 
●材料の種類、工法の種類、層数がまちまちで比較が困難
 
4社で防水材料(アスファルト/ウレタン)、工法の種類(常温粘着/トーチ)、仕様の種類(密着/絶縁)が異なっていて、単純に見積金額の比較で決めてしまってよいのか選定が困難となってしまいました。
 
まず先に複数の候補仕様のメリットデメリットを比較検討し、仕様を決めてから見積依頼をして比較した方が良いと思います。
仕様の指定の仕方が悪くて混乱した事例
(1)最初に指定した仕様
 
〇既存の屋上防水の仕様
・露出アスファルト防水
 
〇管理会社の工事担当が決めた仕様
・仕様:露出アスファルト防水トーチ工法2層
・防水材料のメーカー:田島ルーフィングを指定
・見積書のフォーマット:管理会社の協力業者が作成した見積書をベースに金額部分を空欄としたもの
 
(2)1回目の相見積結果
 
三社に見積を依頼しましたが、指定した仕様と異なる仕様で提案があったり、別の仕様を推奨するコメントをもらったりしました。
 
①A社
・防水材料のメーカー:田島より日新工業の方が安い為、日新で提案。
・防水仕様:1層でも可能。
・防水材料の搬入:施工面積が広くて防水材料の数量が多い為、屋上マンホールからの搬入は困難で搬入用の足場仮設設置が必要。
 
②B社
・防水材料のメーカー:田島ではなく日新にすれば値下げ可能。
・防水仕様:既存の状態が良好なので1層を推奨。
・脱気筒:指定仕様では脱気筒を新設となっているが、既存を流用することが可能。
 
③C社、D社
・指定した仕様通りに見積提出。
・変更提案等は特になし。
 
(3)候補業者に推奨仕様をヒアリング
 
アスファルト防水層の層数、搬入方法、防水材料のメーカー、脱気筒の新設・流用の点でいくつかの会社から指摘があったため、改めて候補業者全社に上記項目についての推奨をヒアリングしました。
 
●ヒアリング結果
項目名A社B社C社D社
メーカー日新日新田島田島
層数1層を推奨1層を推奨性能重視なら2層性能重視なら2層
脱気筒流用可能流用可流用可だが膨れの可能性あり流用可
搬入方法足場必要足場不要足場不要足場不要
 
(4)仕様を変更して再見積もり
 
上記のヒアリング結果を基に理事会で検討し、以下の仕様にて再見積もりを依頼しました。
 
・防水材料のメーカー:各施工業者の推奨メーカー
・層数:1層
・脱気筒:既存のものを流用
・防水材料等の搬入方法:各施工業者にて指定
 
●再見積もりの結果
 
・最初の相見積時の最低価格:約1,000万
・仕様見直し後の相見積時の最低価格:約700万
 
(5)相見積依頼時の注意点
 
〇管理会社作成の共通仕様を鵜呑みにしない
・今回は管理会社が作成した共通仕様を理事会でなにも確認・検討せずにそのまま使用。
・管理会社が作成した共通仕様は、管理会社が協力会社に依頼して作成してもらった見積書を基に金額部分を空欄にしただけの場合がある。
・管理会社の工事担当自身が、協力会社に丸投げしていて細かい仕様を理解していない場合がある。
・丸投げされた協力会社は、管理組合側の意向を知らされておらず、管理組合が望む仕様となっていない場合がある。
 
〇防水材料のメーカー
・各施工会社と防水材料メーカーの取引状況によって材料価格が異なる場合があるので、特別な事情がなければ特定のメーカーのみを指定しないようにする。
既存が露出アスファルト防水の場合の工法選択
(1)メーカー資料
 
※工法選択|田島ルーフィング株式会社
 
①下地処理→かぶせ工法
・劣化は進行しているが、下地処理をすることで改修可能。
イ)膨れ少ない           →アスファルト系密着工法
ロ)膨れ多い、吸湿あり、水溜まり多い→アスファルト系絶縁工法
ハ)防水下に断熱材
   断熱材のあばれは少ない    →アスファルト系絶縁工法
   (断熱材の凹凸が顕著     →機械的固定工法)
 
②劣化状況が著しい→かぶせ工法不可
・雨水侵入・漏水が激しいなど状況が悪い。
イ)機械的固定方法:塩ビシート防水機械的工法
ロ)撤去工法:各種防水工法の採用が可能
 
(2)アスファルト防水の上にウレタン防水
 
1)材料の相性が悪いという問題
 
・通常のウレタン防水では直接ウレタン塗膜防水材を塗布することができず、ポリマーセメントモルタルなどによる下地処理(絶縁処理)が必要。
・温度上昇に伴い軟化するアスファルト下地に対し、剛性の強いポリマーセメントモルタルの層間で剥離する事例が見受けられる。
 
2)施工業者へのリアリング事例
 
・材料の相性が悪く、実施していない防水会社が多い。
・過去に実施経験のある施工会社の経験談として、”施工直後は良好だが、数年後に破断したり塗膜の浮きが発生したことがあった”という指摘があった。
 
3)アスファルト防水下地に施工可能な製品情報
 
●アスミック NB
※メーカーのカタログ情報
 
・アスファルト系の下地に接着する”アスミックアンダー”とノンブリードタイプの高伸張形・高強度形ウレタン塗膜防水材”アスミックNB”、高日射反射率で且つ隠蔽性に優れた”コスミック・トップUV”との組合せによって、露出アスファルト防水層下地に完全シームレスなウレタン塗膜防水を形成できる。
・”アスミックアンダー”は弾性を有した性状のため、アスファルトの温度変化による軟化や脆化にも追従する。
ウレタン防水の工法・仕様の注意点
1)密着工法のメッシュ補強
 
●メッシュ補強なしの仕様
・摩耗の可能性が低い箇所、笠木のような非歩行箇所に使用。
 
●メッシュ補強ありの仕様
・メッシュ補強なしに比べて1工程増える。
・厚みが増し、歩行通路床面等に使用される。
 
●メッシュフリー(高性能化でメッシュ補強を不要とした製品)
・高強度・高伸長などの高性能化により、高性能化。今までメッシュ補強をしていた箇所にメッシュ補強した時と同等の品質が保てるようになっている。
・パラペット立上り、笠木、庇、面台、側溝、巾木、基礎、役物などに適用できる。
・作業の効率化(省人化)を実現すべく各メーカーが高性能な材料を開発し、メッシュフリーなしが主流になりつつある。

コメントを残す

Your email address will not be published.

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください