既存住宅状況調査の概要

〇過去問
・管理業務主任者 
・マンション管理士 
 
 
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既存住宅状況調査とは
・改正宅地建物取引業法(平成30年4月施行分)における”建物状況調査(インスペクション)”のことで、国土交通省の告示に定められた調査基準に従って行なう”既存住宅の調査”。
・”既存住宅状況調査技術者”が”既存住宅状況調査方法基準”に従って行う既存住宅状況調査の結果は、既存住宅の取引における重要事項説明の対象となる。(宅建業法35条)
 
●宅建業法における定義
〇建物状況調査(法34条の2第1項4号)
・建物の構造耐力上主要な部分or雨水の浸入を防止する部分として国土交通省令で定めるもの(「建物の構造耐力上主要な部分等」)の状況の調査であつて、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するものをいう。
〇建物の構造耐力上主要な部分等(規則15条の7)
・住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類する)で、当該住宅の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものとする。
 
●住生活基本計画(全国計画)における目標・施策
〇住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築
・建物状況調査(インスペクション)、住宅瑕疵保険等を活用した品質確保
・建物状況調査(インスペクション)の人材育成や非破壊検査活用等による検査の質の確保・向上
既存住宅状況調査の概要
〇調査方法
・原則として非破壊で行なわれる。
・主な調査箇所は”既存住宅の構造耐力上主要な部分等”となっており、各調査部位ごとに”劣化事象”が無いかどうかの調査を行なう。
 
〇調査結果
・調査部位ごとに行った”劣化事象の有無”の調査結果は”建物状況調査の結果の概要”としてまとめられる。
・”不動産の売買契約”に先立って行なわれる”重要事項説明”時の資料として使用される。
 
〇”既存住宅瑕疵保険”との関連
・調査範囲に”劣化事象”が無く、且つ”耐震性を証明する書類”を有するとされた”既存住宅”については”既存住宅状況調査”が”既存住宅瑕疵保険”の調査項目と同等のものとなっていることから”既存住宅瑕疵保険”の引受が可能(保険引受の判断は瑕疵担保責任保険法人による)となる。
既存住宅状況調査方法基準の概要
※平成29年国土交通省告示82号”既存住宅状況調査方法基準”
 
・既存住宅状況調査の適正な実施を図るため、既存住宅状況調査の方法の基準について定めている。
・既存住宅状況調査技術者が行う既存住宅状況調査の結果を活用した既存住宅売買瑕疵保険の加入を可能とするため、既存住宅売買瑕疵保険の現場検査の基準と同等のものとして定めている。
・調査方法基準は、以下のように構成される。
①構造耐力上主要な部分の調査
②雨水の浸入を防止する部分の調査
③耐震性に関する書類の確認
 
●調査方法
・調査者は、”調査の結果の概要”及び”調査の結果の報告書”を作成し、調査の依頼者に交付するとともに調査の結果を依頼者に報告する。
〇調査の対象外
・調査の対象となる部位には、対象住宅に存在しない部位を含まない。
・歩行その他の通常の手段により移動できる位置において、移動が困難な家具等により隠蔽されている部分以外の部分について行い、対象部位について調査することができる部分がない場合には、その部位は調査できないものとして扱う。
 
〇共同住宅等の共用部分の調査
・以下のいずれかとする。
①住戸型調査
・基礎、外壁、屋根(対象住宅が長期修繕計画を有するものである場合を除く)、出入口から対象住戸に至る経路上、対象住戸から確認できる部分
②住棟型調査
・基礎、外壁、屋根及び次に掲げる共同住宅等の区分に応じ、それぞれ次に定める階にある部分
イ)木造の共同住宅等及び木造以外の小規模住宅である共同住宅等
・全ての階
ロ)木造以外の大規模住宅である共同住宅等
・原則として、最下階、最上階並びに最下階から数えて2の階及び最下階から数えて3に7の自然数倍を加えた数の階(最上階を除く)
 
●調査者
・既存住宅状況調査技術者は、一級・二級・木造建築士としてその設計等を行うことができる建築物の範囲に応じて、調査を行う。
・既存住宅状況調査技術者が調査を行う場合は、この基準に則り公正に実施する。
鉄筋コンクリート造等の場合の調査項目
※平成29年国土交通省告示82号”既存住宅状況調査方法基準”
 
1)構造耐力上主要な部分に係る調査(9条)
 
①基礎
・幅0.5㎜以上のひび割れ:計測又は目視
・深さ20mm以上の欠損:計測又は目視
・コンクリートの著しい劣化:打診又は目視
・さび汁を伴うひび割れ又は欠損(白華を含む):目視
・鉄筋の露出:計測又は目視
 
②床
・著しいひび割れ、劣化又は欠損(さび汁、白華又は鉄筋の露出を含む):計測又は目視
・6/1000以上の勾配の傾斜の間を結ぶ:計測
 
③柱及び梁
・著しいひび割れ、劣化又は欠損(さび汁、白華又は鉄筋の露出を含む):計測又は目視
・柱の著しい傾斜:計測又は目視
 
④外壁
イ)コンクリート打放し又は塗装仕上げの場合
・幅0.5㎜以上のひび割れ:計測又は目視
・深さ20mm以上の欠損:計測又は目視
・コンクリートの著しい劣化:打診又は目視
・さび汁を伴うひび割れ又は欠損(白華を含む):目視
・鉄筋の露出:計測又は目視
ロ)タイル仕上げ(湿式工法)の場合
・下地材まで到達するひび割れ、欠損、浮き、はらみ又は剥落:計測又は目視
・複数のタイルにまたがったひび割れ又は欠損:計測又は目視
・仕上材の著しい浮き:打診又は目視
ハ)塗壁仕上げの場合
・下地材まで到達するひび割れ、欠損、浮き、はらみ又は剥落:計測又は目視
・仕上材の著しい浮き:打診又は目視
 
⑤バルコニー及び共用廊下
・支持部材又は床の著しいぐらつき、ひび割れ又は劣化(さび汁、白華又は鉄筋の露出を含む):計測又は目視
 
⑥内壁
・幅0.5㎜以上のひび割れ:計測又は目視
・深さ20mm以上の欠損:計測又は目視
・コンクリートの著しい劣化:打診又は目視
・さび汁を伴うひび割れ又は欠損(白華を含む):目視
・鉄筋の露出:計測又は目視
 
⑦天井
・コンクリートの著しい劣化:目視
・さび汁を伴うひび割れ又は欠損(白華を含む):目視
・鉄筋の露出:目視
 
⑧鉄筋の本数及び間隔(大規模住宅の場合)
・次に掲げる方法により、構造耐力上問題のある不足が認められるかどうかを調査するものとする。ただし、住戸型調査にあっては、調査することを要しない。
一)電磁波レーダ法又は電磁誘導法による調査を行うこと。
二)前項の②から④までの部位について、4条3項2号ロに定める階の各2箇所を調査すること。
三)上記調査の結果と新築時の設計図書等との照合その他の方法により、鉄筋の本数が明らかに少ない状態と認められるかどうかを調査すること。
 
⑨コンクリートの圧縮強度(大規模住宅の場合)
・次に掲げる方法により、構造耐力上問題のある不足が認められるかどうかを調査するものとする。ただし、平成11年5月1日以降に確認済証の交付を受けた対象住宅の住戸型調査にあっては、調査することを要しない。
一)日本工業規格A1155による反発度の測定結果に基づく推定又は日本工業規格A1107による試験を行うこと。
二)住戸型調査にあっては、外壁について、最下階及び最下階から数えて2の階の各1箇所を調査すること。
三)住棟型調査にあっては、上記①④⑥の部位について、4条3項2号ロに定める階のそれぞれ南面及び北面の各1箇所を調査すること。
四)日本工業規格A1107による試験を過去に実施している場合において、調査結果が信頼できるものと認められるときは、その調査結果を活用することができるものとすること。
 
2)雨水の浸入を防止する部分に係る調査
 
①外壁(開口部、笠木、バルコニーその他の部位との取り合い部分を含む)
・シーリング材の破断又は欠損:目視
・建具の周囲の隙間又は建具の著しい開閉不良:目視又は操作
 
②内壁
・雨漏りの跡;目視
 
③天井
・雨漏りの跡;目視
 
④屋根
・著しい防水層のひび割れ、劣化若しくは欠損又は水切り金物等の不具合:目視

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