時効

〇民法:144~174条、126,186,187,193,724条,724条の2
〇過去問
・管理業務主任者 H14問2、H15問10、H16問4,11、H17問10、H18問3,10,39、H19問5,10,11、H20問10,11、H21問10,11,42、H22問10、H23問2,10,11、H24問3、H25問10,11,39、H26問4,10,11、H27問10、H28問3,10、H29問11
・マンション管理士 H14問11,16,32、H15問30、H17問15、H18問14、H19問17、H21問12,13、H22問7,16、H23問16、H24問13、H27問10、H28問3、H29問12
 
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時効の概要
●時効の発生、種類
 
・”一定の事実状態”が”一定の期間継続”
→当事者の援用
→時効の効果が発生
イ)取得時効→権利を取得
ロ)消滅時効→権利が消滅
 
●時効の効力(144条)
 
・時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
・消滅時効で債権が消滅した場合、時効の起算日にさかのぼって、債務が消滅することになる。時効が完成した時に、債務が消滅するわけではない。
→時効により債務を免れた者は、元本だけではなく、起算日以後の利息等の支払も免れることになる。
取得時効
1)対象となる権利
 
・所有権
・地上権
・地役権(継続的に公使され、かつ、外形上認識できるものに限る)
・不動産賃借権など
 
2)所有権の取得時効(162条)
 
・他人のものを、”所有の意思”をもって、”平穏かつ公然”と、”一定期間占有”することによって成立。
・占有者は、時効完成後に自分のものであると主張する(援用)必要がある。
・時効完成を妨げるには完成前に明け渡し請求などをしなければならない。
 
●”占有”とは
・事実上の支配(物を所持する状態)そのものを指す。
・自分の代わりに他人に占有させても構わない(代理占有)
※他人の家屋を賃貸借契約により賃借人に占有させて、その家屋の所有権を時効で取得するような場合。
 
〇占有の態様等に関する推定(186条)
・占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
・前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
 
※専有部分の時効取得に伴う共用部分の持分の時効取得(区分所有法15条)
・一定期間当該専有部分を占有すれば、時効取得できる。そして、共用部分の共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従うので、その占有者は専有部分の時効取得に伴って共用部分の持分についても時効取得することができる。
 
●”所有の意思”とは
・所有権を取得するための占有は、自分が所有者であり、その物を排他的に支配しようという意思をもって行わなければならない。(自主占有)
※賃借人として行う占有は、所有の意思がない占有(他主占有)なので、所有権を時効で取得することができない。賃借人の相続人は、所有の意思が認められ一定の要件を満たせば所有権を時効で取得することがある(他主占有の自主占有への転換)
 
●時効の取得期間
〇善意かつ無過失:10年
・所有する意思を持って平穏に公然と占有していた場合、自分に所有権があると思いこんでいて(善意)、そう思いこむことに過失がなければ(無過失)。
・占有の”開始”の時に、善意かつ無過失で、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、10年で時効取得することができ、途中で善意無過失でなくなってもよい。
 
〇悪意または有過失:20年
・他人のものと知っていた場合。
 
〇占有の継続
・占有者が任意に占有を中止したり、他人によって占有を奪われたときのように、途中で占有が中断すると、時効は完成しない。
・占有を奪われたときでも、占有者が占有回収の訴えを提起して勝訴すれば、占有は失われなかったものとして取り扱われる。
 
●占有の承継(占有期間の合算)(187条)
・前の占有者から占有を引継いだ者は、自信の選択により、自分の占有のみの主張、又は、占有期間の合算の主張、の両方ができる。
・前の占有者からの合算を主張するときは、その瑕疵(善意無過失、悪意)も承継する。
→前の占有者が善意無過失の場合は、承継した者が悪意でも、合算して10年で時効取得できる。
 
●盗品又は遺失物の回復(193条)
・占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
 
〇返還請求
・占有者が、盗品又は遺失物を、”競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人”から、善意で買い受けたときは、代価の弁償が必要であるが、そのような事情が認められない場合、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を無償で請求することができる。
 
3)所有権以外の財産権の取得時効(163条)
 
・地上権、地役権などの所有権以外の財産権にも162条の所有権と同様に認めている。
〇賃借権の取得時効の例
・Aが、B所有の家屋をCから賃借した場合(他人物の賃貸借)、Aは、賃借の当時、他人物の賃貸借であることを過失なく知らなかった場合、一定期間賃料を支払いつつ占有を継続すると、賃借権を時効で取得できる。
消滅時効
1)対象となる権利
 
・債権
・所有権以外の財産権(地上権、地役権など)
 
2)消滅時効の要件
 
・権利を有する者が、”権利を行使できる時”から”一定期間”行使しないと、その権利は、時効によって消滅する。
 
●消滅時効の起算点(166条)
・消滅時効は、”権利を行使することができる時”から進行する。
 
①確定期限が定められたもの:定められた期限が到来した時
②不確定期限が定められたもの:期限が到来した時(親の死亡など)
③期限の定めのない債務の場合:債権の成立時
※債権者はいつでも請求可→いつでも権利行使が可→債権の成立時から消滅時効進行
 
●消滅時効の期間
 
〇債権
・権利行使可能を知った時から:5年
・権利行使できる時から
 ・原則:10年
 ・人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権:20年
 
〇所有権以外の財産権(地上権・地役権等)
・20年
 
〇確定判決により確定した権利(169条)
・10年
・10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。
・裁判上の和解等の確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
・判決確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
 
〇”無効”の時効
・無効の主張に時効はない。
 
〇不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(724条)
・被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
※人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の場合は、5年間。(724条の2)
・不法行為の時から20年を行使しないとき。
 
〇取消権の期間の制限(126条)
・”取消”権は、追認をすることができる時から5年間、行為の時から20年を経過したときは、時効によって消滅する。
時効の完成猶予と更新
1)時効の完成猶予
 
・裁判上の請求や催告(裁判外の請求)などの一定の事由が生じた場合に、一定の期間が経過するまでの間は時効が完成しないこと。
 
〇裁判上の請求、支払督促、裁判上の和解、民事調停、破産手続参加
イ)その事由が終了するまでの間、時効は完成しない。
ロ)確定判決などによって権利が確定することなくその事由が終了した場合(訴えの棄却・取下げなど)
→その終了の時から6ヶ月を経過するまでの間、時効は完成しない。
 
〇強制執行、担保権の実行、民事執行法による競売など
イ)その事由が終了するまでの間、時効は完成しない。
ロ)申立ての取下げ、法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合
→その終了の時から6ヶ月を経過するまでの間、時効は完成しない。
 
〇仮差押え、仮処分
・その事由が終了した時から6ヶ月を経過するまでの間、時効は完成しない。
 
〇催告(裁判外の請求、内容証明郵便による催促など)
・その時から6ヶ月を経過するまでの間、時効は完成しない。
・裁判上の請求とは異なり、6ヶ月間時効の完成を猶予させる効力しかない。
・6ヶ月の期間中に再度催告をしても、完成猶予期間は延長しない。
・時効完成直前で裁判上の請求などの手続きをとる時間的余裕のない場合に、そのための時間を稼ぐといった目的で使われることもある。  6ヵ月以内に裁判上の請求をすれば、”催告”のときに、時効が更新される。”訴えの提起の時”に時効が更新されるわけではない。
 
〇権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたとき
次のいずれか早いまでの間、時効は完成しない。
イ)その合意があった時から1年を経過した時
ロ)その合意において当事者が協議を行う期間(1年未満)を定めたときは、その期間を経した時
ハ)当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6ヶ月を経過したとき
 
〇相続財産に関する時効の完成猶予(160条)
・相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6ヶ月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
 
〇天災等による時効の完成猶予(161条)
・時効完成の直前に、天災その他避けることのできない事変のため、裁判上の請求等の手続きを行うことができないときは、その障害が消滅した時から3ヵ月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
 
2)時効の更新
 
・時効が新たにその進行を始めることを、時効の更新という。
 
●時効の完成猶予があったとき
〇裁判上の請求、裁判上の和解など
・確定判決・和解成立などによって権利が確定した時から、新たに時効が進行を始める。
 
〇強制執行、担保権の実行など
・その手続きが終了したときから、新たに時効が進行を始める。
※取消によって時効完成の猶予が終了した場合は、時効は更新されない。
 
●権利の承認があったとき
・権利が承認されたその時から、新たに時効が進行を始める。
・債務があることを認めたことであるから、”利息だけ支払っておく”、”一部だけ弁済する”、”支払を猶予してくれ”等の行為は承認とみなされ、時効は更新される。
・被保佐人・被補助人は保護者の同意なしに承認可能(判例)。
・未成年者や成年被後見人は、単独で承認不可。
・債務者自身が承認すれば、その効力を物上保証人が否定することはできない。
時効の完成
・時効成立の要件を満たしても、当事者の意思表示がなければならない。
→当事者の時効の援用が必要。援用すれば時効の効果が発生する。
 
1)時効の援用
 
●時効の援用権者
・時効の援用をできるのは、時効によって直接に利益を受ける者、及びその承継人。
〇保証人、連帯保証人
・主たる債務が時効消滅したときは、保証人も援用できる。
〇物上保証人、抵当不動産の第三取得者
・被担保債務が時効消滅したとき、担保不動産の所有者は、担保の消滅を主張できる。
 
2)時効の利益の放棄
 
●時効の利益の放棄
・時効利益を受ける当事者が、時効完成を知った後、時効の利益を放棄すること。
・時効完成前に、あらかじめ時効利益を放棄することはできない。
・お金を貸す段階で、事前に時効の利益を放棄させてしまうというようなことを防止するため。
・区分所有者全員が管理費等の滞納が発生したとしても時効を援用しない旨の合意をしていたとしても、改めて時効を援用することができる。
 
●援用権の喪失
・時効の利益を放棄するという明確な意思表示が無い場合でも、時効の援用をすることができなくなることをいう。
・時効完成後において、その事実を承認した場合放棄とみなされ、もはや時効を援用することができない。(時効の利益の喪失)
例)時効完成後に、債務者が、時効の完成を知らずに弁済をしたような場合。
※時効完成後の承認は、債務者が時効完成を知っていたかどうかを問わず、時効の援用権を失うものとされる(判例)。
 
3)時効完成の効果
 
・時効完成した場合、時効の効力は、その起算日にさかのぼる
〇取得時効
・占有の開始時から所有者であった、と扱う
・時効による権利取得は、”原始取得”といい、土地の所有者が抵当権を設定していても、取得時効が完成すると、抵当権の制限を伴わない完全な所有権を取得できることになる。
〇消滅時効
・起算日に権利は消滅した、と扱う
・元本債権が消滅した場合、利息も発生していないことになる。

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