浄化槽

(1)浄化槽の概要
(2)浄化槽に関する法規制
(3)浄化槽の設置の手続き
(4)浄化槽管理者の義務
(5)法定点検
(6)保守点検、清掃
 
〇浄化槽法
〇建築基準法施行令:32,33条
〇過去問
・管理業務主任者 H13問20、H14問28、H21問25、H29問23
・マンション管理士 H14問22
 
 
(1)浄化槽の概要
 
1)浄化槽の仕組み
 
・浄化槽は、トイレや台所などの排水を、微生物の力によりきれいにして、水路等へ放流するための設備。
 
●合併処理浄化槽(嫌気ろ床接触ばっ気方式)の例
①嫌気ろ床槽
・汚水中の浮遊物等を取り除いて貯留し、嫌気性微生物が汚水を浄化する。
②嫌気ろ床槽
③接触ばっ気槽
・好気性微生物が汚水を浄化する。
④沈殿槽
・汚泥を沈殿させる。
⑤消毒槽
・放流する前に消毒する。
⑥放流
・浄化槽からの処理水は原則として、地下浸透とせず、水路、道路側溝等へ放流する。
 
2)合併処理浄化槽と単独処理浄化槽
 
●単独処理浄化槽
・屎尿(便所からの汚水)のみを処理するもの。
・単独処理浄化槽はトイレの排水だけを処理するので、合併処理浄化槽の8倍もの汚れが河川に放流されてしまう。
・現在では単独処理浄化槽を新たに設置することはできない。
※平成13年(2001年)4月1日以降の新設が禁止され、平成18年2月の法律改正時に浄化槽の定義が変更されたことに伴い、構造基準より削除された。浄化槽法上では「浄化槽とみなす」と定義されている。
 
●合併処理浄化槽
・屎尿と併せて雑排水(生活系の汚水)を処理するもので、現行の法律で浄化槽と定められているもの。通常雨水は含まない。
・新たに浄化槽を設置する場合は、この合併浄化槽にしなければならない。
・家庭から出る全ての排水(生活雑排水)を処理するため、川や海などの水質汚染防止に大きな力を発揮する。
 
3)処理方法の種類
 
●生物膜法
・接触材や、ろ材の表面に生物による膜を形成し、その生物膜を利用して浄化を行う。
 
●活性汚泥法
・汚水に空気を入れて、活性汚泥の特性を利用して汚水を浄化する。
 
(2)浄化槽に関する法規制
 
・浄化槽の構造基準、処理性能等は、建築基準法に定められている。
・浄化槽の設置、保守点検、清掃等については、浄化槽法で定められている。
 
1)浄化槽法の目的(法1条)
 
・浄化槽の設置、保守点検、清掃及び製造について規制。
・浄化槽工事業者の登録制度及び浄化槽清掃業の許可制度を整備
・浄化槽設備士及び浄化槽管理士の資格を定める。
・公共用水域等の水質の保全等の観点から浄化槽によるし尿及び雑排水の適正な処理を図り、もつて生活環境の保全及び公衆衛生の向上に寄与することを目的とする。
 
2)水質基準
 
①浄化槽法(法4条1項、規則1条の2)
・放流水に係る水質基準
 BOD:20mg/l以下
 BOD除去率:90%以上
 
②建築基準法(令32条)
・浄化槽の汚物処理性能に関する技術的基準
 BOD除去率:55~85%以上
 放流水のBOD:30~120ml/l以下
※水質汚濁防止法排水基準がより厳しく定められている場合、その基準に適合
※浄化槽法第4条1項の放流基準がより厳しく定められている場合、その基準に適合
 
③水質汚濁防止法(3条1項、3項)の排水基準
→昭和46年総理府令35号”排水基準を定める省令”
・BOD:160mg/L(日間平均 120mg/L)
・COD:160mg/L(日間平均 120mg/L)
・窒素含有量:120mg/L(日間平均 60mg/L)
・燐含有量:16mg/L(日間平均 8mg/L)
 
3)浄化槽の構造基準
 
①屎尿浄化槽の構造方法(建築基準法31条2項)
〇構造方法
→昭和55年建設省告示1292号の第4、第5
〇性能基準
→建築基準法施行令32条
 
②合併処理浄化槽の構造方法(建築基準法施行令35条)
→昭和55年建設省告示1292号の第4、第5以外
〇性能基準
→建築基準法施行令32条
 
4)その他の注意事項
 
〇屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準
・住宅と共同住宅では、異なった算定式が用いられている。
 
〇地下浸透方式を除く合併処理浄化槽の汚物処理性能
・放流水に含まれる大腸菌群数が、1㎝3につき3000個以下。
 
〇漏水検査(建築基準法施行令33条)
・屎尿浄化槽及び合併処理浄化槽は、満水して「24時間」以上漏水しないことを確かめなければならない。
 
(3)浄化槽の設置の手続き
 
●設置等の届出、勧告及び変更命令(法5条)
・浄化槽を設置し、又はその構造若しくは規模の変更をしようとする者は、その旨を都道府県知事及び当該都道府県知事を経由して特定行政庁に届け出なければならない。
 ただし、当該浄化槽に関し、建築基準法6条1項の規定による建築主事の確認を申請すべきとき、又は同法18条2項の規定により建築主事に通知すべきときは、この限りでない。
 
(4)浄化槽管理者の義務
 
1)法定検査(法第7条、11条)
 
・浄化槽が正常に機能しているか総合的に判断するための検査。
・保守点検や清掃の記録、浄化槽の状態、水質を、知事が指定した検査機関が検査する。
〇法定検査の種類
・使用開始後の検査(7条検査)
・定期検査(11条検査)
〇法定検査結果
・法定検査は「適正」、「おおむね適正」、「不適正」の3段階で判定される。
→検査結果が「おおむね適正」及び「不適正」だった場合、都道府県から改善指導文書が届く。
 
2)保守点検、清掃(法10条)
 
①保守点検
・故障や消毒剤の不足により、汚れた水が河川等に放流されるのを防ぐため、定期的な点検・修理や消毒剤の補充を行う作業。
・保守点検の回数は、浄化槽の処理方式、処理対象人員により回数が定められている。
・保守点検終了後に記録票が渡される。3年間の保存義務がある。
 
②清掃
・汚泥がたまりすぎると浄化槽の機能が十分に発揮できなくなるため、定期的に汚泥をくみ取り、槽内を洗浄する作業。
・清掃回数は浄化槽の種類によって異なる。
・清掃終了後に記録票が渡される。3年間の保存義務がある。
 
3)技術管理者の設置
・処理対象人員が501人以上の規模の浄化槽の浄化槽管理者は、当該浄化槽の保守点検及び清掃に関する技術上の業務を担当させるため、環境省令で定める資格を有する技術管理者を置かなければならない。
 
4)保守点検業務の委託
・浄化槽の保守点検を、都道府県の条例で浄化槽の保守点検を業とする者の登録制度が設けられている場合には当該登録を受けた者に、若しくは当該登録制度が設けられていない場合には浄化槽管理士に、又は浄化槽の清掃を浄化槽清掃業者に委託することができる。
 
5)報告書
・浄化槽管理者は、当該浄化槽の使用開始の日から30日以内に、環境省令で定める事項を記載した報告書を都道府県知事に提出しなければならない。
・技術管理者を変更したときは、変更の日から30日以内に、環境省令で定める事項を記載した報告書を都道府県知事に提出しなければならない。
・浄化槽管理者に変更があつたときは、新たに浄化槽管理者になつた者は、変更の日から30日以内に、環境省令で定める事項を記載した報告書を都道府県知事に提出しなければならない。
 
6)廃止の届出(11条の2)
・浄化槽管理者は、当該浄化槽の使用を廃止したときは、環境省令で定めるところにより、その日から30日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
 
(5)法定点検
 
1)使用開始後の検査(7条検査)
 
・新たに設置され、又はその構造若しくは規模の変更をされた浄化槽については、使用開始後「3月を経過した日から5月間内」に、浄化槽管理者は、”都道府県知事が指定する指定検査機関”の行う水質に関する検査を受けなければならない。(規則4条1項)
・指定検査機関は、水質検査を実施したときは、遅滞なく都道府県知事に報告しなければならない。
 
※指定検査機関
・浄化槽の水質検査について、都道府県知事が第57条第1項の規定により指定する者
※浄化槽管理者
・浄化槽の所有者、占有者その他の者で当該浄化槽の管理について権原を有するもの。
 
2)定期検査(11条検査)
 
・浄化槽管理者は、”毎年1回”、指定検査機関の行う水質に関する検査を受けなければならない。これは、浄化槽の保守点検及び清掃をそれぞれの技術上の基準に従って行った場合であっても同様である。
 
3)法定点検についての勧告及び命令等(法7条の2、12条)
 
①指導及び助言
・都道府県知事、必要があると認めるとき
②水質に関する検査を受けるべき旨の勧告
・規定を遵守していないと認める場合において、生活環境の保全及び公衆衛生上必要があると認めるとき
・相当の期限を定めて、同項の水質に関する検査を受けるべき旨の勧告をすることができる。
③措置命令
・前項の規定による勧告を受けた浄化槽管理者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかつたとき
・相当の期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
 
※法定点検の検査項目
→平成19年環境省告示第64号”浄化槽法第7条1項及び11条1項に規定する浄化槽の水質に関する検査の項目、方法その他必要な事項”
 
①外観検査
一)設置状況
二)設備の稼働状況
三)水の流れ方の状況
四)使用の状況
五)悪臭の発生状況
六)消毒の実施状況
七)蚊、はえ等の発生状況
 
②水質検査
一)水素イオン濃度
二)活性汚泥沈殿率
三)溶存酸素量
四)透視度
五)塩化物イオン濃度
六)残留塩素濃度
七)生物化学的酸素要求量
 
③書類検査
・浄化槽管理者が保存している保守点検及び清掃の記録その他参考となる書類について行う。
 
(6)保守点検および清掃(法10条)
 
・浄化槽管理者は、毎年1回(規則6,7条で定められている場合はその回数)、浄化槽の保守点検及び浄化槽の清掃をしなければならない。
・浄化槽管理者は、浄化槽の保守点検を、条例で浄化槽の保守点検を業とする者の登録制度が設けられている場合には当該登録を受けた者に、当該登録制度が設けられていない場合には浄化槽管理士に、又は浄化槽の清掃を浄化槽清掃業者に委託することが「できる」。※必ず浄化槽管理士に委託しなければならないわけではない。
 
●浄化槽の清掃
・全ばっき方式では6月ごとに1回(規則7条)
・その他の浄化槽では1年に1回
 
●浄化槽の保守点検の回数(規則6条)
①分離接触ばつ気方式、嫌気ろ床接触ばつ気方式、脱窒ろ床接触ばつ気方式
・3or4ヵ月の期間に1回以上
②活性汚泥方式
・1週間に1回以上
 
●保守点検又は清掃についての改善命令等(法12条)
①助言、指導又は勧告
・都道府県知事
・生活環境の保全及び公衆衛生上必要があると認めるとき
②改善措置命令、使用停止命令
・都道府県知事
・浄化槽の保守点検の技術上の基準又は浄化槽の清掃の技術上の基準に従つて浄化槽の保守点検又は浄化槽の清掃が行われていないと認めるとき
・必要な改善措置を命じ、又は10日以内の期間を定めて当該浄化槽の使用の停止を命ずることができる。

コメントを残す

Your email address will not be published.

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください