管理費等の滞納回収における注意点(督促費用、住所調査等)

いくつかの管理組合で長期滞納者に対する対応を行った経験がありますが、管理会社毎に支援の仕方、回収に要する費用などで相違がありました。
 
管理会社毎の支援方法の違い、回収費用の例、住所地調査の方法などについてまとめています。
 
 
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長期滞納に対する管理会社毎の対応の違い
いくつかの管理組合で長期滞納に対する対応を行ったことがありますが、管理会社がどのようにサポートしてくれるのかという点では、大きく2パターンがありました。
 
①フロント担当と提携弁護士が個別に対応
②弁護士は最後の手段である程度までは法務部が対応
 
1)ある程度まで法務部が対応してくれる場合
 
●管理会社の法務部が対応する業務範囲
・内容証明郵便の発送
・支払い督促や裁判手続き
・各種差押えの手続き
 
●法務部が対応できない業務
・差押え対象が不明な場合は調査会社を紹介。
・その他手続きが困難な場合は弁護士を紹介。(対象の区分所有者が外国籍のため、裁判手続きができない等)
 
●法務部が対応してくれる場合のメリット
・弁護士への着手金、報酬が発生せず、費用が手数料や実費等のみで低コストで実施できる。
・法務部が対応するので、フロント担当の能力・経験が不足していても一定レベルの対応が可能。
 
2)フロント担当と提携弁護士が個別に対応する場合の問題点
 
・弁護士への着手金や報酬など高額な費用を要する。
・フロント担当を介して弁護士とやり取りすることになる場合が多く、フロント担当の経験・能力によっては情報が理事会に正確に伝わらなかったり、時間を要したりする。
滞納督促・回収費用の例
(1)管理会社Aの事例(個別に弁護士に依頼)
 
1)内容証明郵便の送達
 
・手数料+発送料:約5,000円
 
2)支払督促
 
・手数料:約3万円
・郵券、印紙代:実費負担
 
※支払督促に異議が申し立てられた場合は、3)の通常訴訟の場合と同様。
 
3)通常訴訟
 
・着手金:約15万(請求金額が100万未満の場合は約10万)
・成功報酬:判決又は和解金額の10%(請求金額が100万未満の場合は12~15%)
・日当(1日当たり):東京23区以外の裁判所の場合は約3万(東京23区は不要)
・印紙、郵券、旅費:実費負担
 
4)強制執行
 
・債権・動産執行の場合:約7万
・郵券・印紙代:実費負担
・報酬:実費負担
・予納金:実費負担
・執行立会手数料:相当金額
 
(2)管理会社Bの事例(個別に弁護士に依頼)
 
1)内容証明郵便の送達
 
・組合名義での作成のみ:約1.5万
・弁護士名義での発送まで:約5万
 
2)住所調査
 
・実費:数千円程度
 
3)相続人調査
 
・費用:約5万
・実費:約3万
 
4)交渉または訴訟提起
 
・着手金:請求金額の約8%(最低着手金が約10万)
・報酬:請求金額の約16%
 
5)銀行口座等調査
 
・費用:約5万
・実費:1つにつき約1万
 
6)強制執行(給与差し押さえ、賃料差し押さえ等)
 
・費用:約10万
・実費
 
7)競売申立て
 
・費用:30万~
・実費
※滞納額によるが100万程度
遅延損害金の請求金額が少ない?
●訴訟等の法的手続きでは遅延損害金が少なくなる?
 
管理会社を介して訴訟を提起し、無事に督促費用等、遅延損害金を含めて未収金を回収できたのですが、遅延損害金の額がものすごく小さいことに気づきました。
 
〇費用・遅延損害金の内訳(管理費等:1.5万/滞納期間約30か月)
・遅延損害金289円
・申し立て費用10,625円
・内容証明1220*2→2,440円
・住民票400円
・登記簿謄本600円
 
滞納期間が30か月の場合に遅延損害金の場合、規約で年利14%と定められていたので、以下の計算方法になるのかと思っていました。
 
30ヶ月前滞納分 1.5万×0.14÷12×30=5,250円
29ヶ月前滞納分 1.5万×0.14÷12×29=5,075円
  :
  :
1ヶ月前滞納分  1.5万×0.14÷12×1=175円
合計                81,375円
 
●管理会社の法務部からの回答
・訴状には、訴状到達から遅延損害金が発生する、という記載があり、それに従って請求したため、289円となった。
・規約で「請求できる」とされている時期とは異なるが、法務部で作成する裁判所へ提出する書類については、すべてこの内容で作成している。(裁判所が、この内容を推奨しているため)。
・訴外では、管理規約のルールにのっとって運営して問題無いが、裁判所内では、この計算方法がスタンダードで、支払督促で異議の申し立てがあり、裁判所の立会人が和解案を作成する場合もこの内容を勧められる。
住所地調査の方法、注意点
(1)賃借人、賃貸管理会社に確認する際の注意点
 
・個人情報保護の面から教えてもらえない場合がある。
・住所が判明しないことによる区分所有者の不利益(総会の議案書が届かない、管理費等の増加及び遅延損害金の発生等)を説明すると協力を得やすくなる。
 
(2)住民票(又は除住民票)の写しを取得する
 
1)弁護士等に依頼する場合の注意点
 
・住民票調査のみでは法律に抵触する可能性がある、と依頼を受けてもらえない場合がある。
→内容証明郵便での督促業務も依頼することを前提にセットで依頼することを要望されることがある。
 
2)管理組合の理事長等が取得することもできる
 
・住民基本台帳法12の3第1項により、請求することができる。
 
〇住民基本台帳法12の3第1項(本人等以外の者の申出による住民票の写し等の交付)
市町村長は、・・・住民基本台帳について、次に掲げる者から、住民票の写しで・・・必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該住民票の写し・・・を交付することができる。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者
三 前二号に掲げる者のほか、住民票の記載事項を利用する正当な理由がある者
 
3)住民票(又は除住民票)の写しの請求時の注意点
 
・除住民票の保存期間の5年がすでに過ぎてしまっている場合、交付が受けられない場合がある。
・除住民票を取得する際には、本籍の記載もしてもらい、本籍地を確認する。
→本籍地の自治体に戸籍の附票を請求すると住所の履歴が分かり、現住所が判明する可能性がある。
事例4:2021年、約30戸、コンサルなし

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