被災区分所有法

〇被災区分所有法(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法):69~70条
〇過去問
・管理業務主任者 
・マンション管理士 H13問13、H17問20、H23問10、H26問11、H29問11、H30問11
 
 
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被災区分所有法の概要
(1)被災区分所有法の制定前
 
・建物が全壊した場合
→区分所有関係も消滅、区分所有法の適用ができない。
→民法の規定を適用
→民法では、マンションを再建築するためには全員の同意が必要となってしまう。
 
1)建物全部滅失の場合
 
①区分所有建物の再建
・区分所有建物が消失
→区分所有権が非成立、区分所有者も非存在、管理組合も非存在。
→元区分所有者が共有する敷地のみが残っている状態
→区分所有法62条の建替え決議をすることもできない。
→民法の適用
→区分所有建物を再建する場合、区分所有者全員の同意が必要
→被災マンション法で、敷地共有者(元区分所有者)の議決権の4/5の賛成で再建を認めた。
 
②敷地の売却
・民法251条では、共有物の売却は、共有者全員の同意が必要。
→被災マンション法で、敷地共有者(元区分所有者)の議決権の4/5の賛成で敷地の売却を可能にした。
 
2)建物の一部滅失の場合
 
①復旧、建替え
・区分所有建物存在→管理組合も存続
→区分所有法61条の復旧の規定や、62条の建替え決議を行うこともできる。
 
②建物の取壊し
・建物の取壊しは、共有物の変更行為なので、全員の合意が必要だった。
→被災マンション法では、建物の一部滅失の場合でも、全員ではなく、多数決で取壊し・敷地の売却をできるようにした。
・被災マンション法では、”建物の一部滅失の場合、③建物及びその敷地の売却、④建物取り壊し及びその敷地の売却、⑤建物の取壊し”というのも、4/5の多数決で行うことができるようにした。
 
(2)被災区分所有法の位置づけ
 
・H7年1月17日の阪神・淡路大震災をきっかけとして制定
 
〇建物の損傷:区分所有法を適用
 
〇建物の一部滅失(小規模)
・復旧:区分所有法(1/2決議)
・建替え:区分所有法(4/5決議)
 
〇建物の一部滅失(大規模)
・復旧:区分所有法を適用(3/4決議)
・建替え:区分所有法を適用(4/5決議)
・建物敷地売却:被災区分所有法を適用(4/5決議)
・建物取壊し敷地売却:被災区分所有法適用(4/5決議)
・取壊し決議:被災区分所有法を適用(4/5決議)
 
〇建物の全部滅失
・再建決議:被災区分所有法を適用(4/5決議)
・敷地売却決議:被災区分所有法を適用(4/5決議)
 
※民法の規定
・民法による全員同意(251条)
全部滅失の場合
1)敷地共有者等集会(2条、3条)
 
〇開催の要件
・大規模な火災、震災その他の災害で”政令で定めるもの”により全部滅失した場合。
 
〇開催できる期間
・政令の施行の日から3年以内。
 
〇管理者、規約
・その権利を有する者(以下”敷地共有者等”)は、集会を開き、管理者を置くことができる。
・敷地共有者等集会は、あくまで再建決議や敷地売却決議をするまでの暫定的なものなので、規約を定めることはできない。
→区分所有法の規約に関する部分は準用されない。
 
○注意点
・ほぼ区分所有法の規定が準用されるが、名称が異なるものがある
 ・建替え→再建
 ・区分所有者→敷地共有者等(区分所有建物が消滅→区分所有者は消滅)
 ・区分所有者および議決権→議決権(専有部分がない→敷地共有持分の価格の割合)
 
●召集
〇招集者
・集会は、管理者が招集する。
・管理者がないときは、議決権の1/5以上を有する敷地共有者等は、集会を招集することができる。
 
○召集の通知
・集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して、各敷地共有者等に発しなければならない。
 
〇招集の通知先
イ)敷地共有者等が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したとき
・その場所に通知すれば足りる。
ロ)敷地共有者等の所在を知ることができないとき
・滅失した区分所有建物に係る建物の”敷地”内の見やすい場所に掲示してすることができる。
 
2)再建決議(4条)
 
○普通決議
・議長の選出や議事録の保管者を定める決議等は、通常の過半数で決する。
 
○再建決議
・敷地共有者等の議決権の4/5以上の多数。(”所有者数の4/5以上”は不要。)
 
○再建決議のための集会の開催手続き
・集会の招集通知は2月前までに行い、説明会も必要。
・議案の要領のほか、”再建を必要とする理由”をも通知しなければならない。
 
○再建決議で決める事項
・新たに建築する建物(”再建建物”)の設計の概要
・再建建物の建築に要する費用の概算額
・前号に規定する費用の分担に関する事項
・再建建物の区分所有権の帰属に関する事項
 
○区分所有権等の売渡し請求等(区分所有法63条の準用)
①集会を招集した者は、遅滞なく、再建決議に賛成しなかつた敷地共有者等に対し、再建決議の内容により再建に参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。
②催告を受けた敷地共有者等は、催告を受けた日から2月以内に回答しなければならない。
③参加者等は催告期間の満了の日から2月以内に、再建に参加しない旨を回答した敷地共有者等に対し、敷地共有持分等を時価で売り渡すべきことを請求することができる。
 
〇マンション建替え法の適用
・売渡請求権等、決議以降の手続きも区分所有法に準じる。なお、再建を決定した場合においても、マンション建替え法の適用はないことに注意が必要。
 
3)敷地売却決議等(5条)
 
・共有地を売却するのは、本来共有者全員の同意が必要だが、敷地共有者等の議決権の4/5以上の多数で行えるようにしたもの。
 
〇敷地売却決議の招集手続
・区分所有法の建替え決議・建替えに関する合意の規定が準用。
・議案の要領のほか、”売却を必要とする理由”をも通知しなければならない。
 
〇決議で定める事項
①売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
②売却による代金の見込額
 
〇集会
・再建決議と同様。
 
〇敷地共有持分等の売渡し請求
・区分所有法63条及び64条の一定の読み替えの上で準用。
 
〇マンション建替え法の適用
・決議後の手続きについて、マンション建替え法による手続は利用することができない。
 
4)敷地共有持分等に係る土地等の分割請求に関する特例(6条)
 
・建物が全部滅失した場合、区分所有者も管理組合も存在しえなくなり、元区分所有者の共有敷地のみ残り、区分所有法の適用の対象外となり、民法が適用されることになる。
→民法の規定では、共有者はいつでも共有物の分割請求をすることができることになるが(民法256条)、それでは再建決議や敷地売却決議が事実上不可能になってしまう。
 ↓
・”政令の施行の日”から起算して1月を経過する日の翌日以後当該”施行の日”から起算して3年を経過する日までの間の分割請求を禁止した。
 
○分割請求が認められる例外
①1/5を超える議決権を有する敷地共有者等が分割の請求をする場合
※この場合は、敷地共有者等の議決権の4/5以上の多数で再建決議をすることができないことが明らかなため。
②その他再建決議、敷地売却決議又は第18条第1項の決議(団地内の建物が滅失した場合における一括建替え等決議)をすることができないと認められる顕著な事由がある場合
例)土地区画整理事業や市街地再開発事業等の都市計画が決定されて、その敷地に再建できないことが確定しているような場合
一部滅失の場合
1)区分所有者集会(7条)
 
〇開催できる期間
・”政令の施行の日から起算して1年を経過する日までの間。
・この期間の間は、区分所有法の規定に加え、被災区分所有法の規定によって集会を開催することができる。
 
〇被災区分所有法の規定で加えられた決議事項
・建物取壊し決議
・建物取壊し・敷地売却決議
・建物・敷地売却決議の決議
 
〇招集の通知(8条)
・全部滅失の場合と同様。
 
2)建物敷地売却決議等(9条)
 
・一部滅失した区分所有建物を取り壊すことなく、当該建物を現状有姿のまま、その敷地とともに売却する。
 
〇議決要件
・区分所有者、議決権(専有部の床面積割合又は別段の規約の定め)、敷地利用権の持分の価格のそれぞれについて4/5以上の多数が必要。
※通常の建替え決議の場合と異なり、”敷地利用権の持分の価格”も考慮するのは、敷地の売却を伴うため。
 
〇手続き
・おおむね建替え決議の場合と類似の規定。
 
〇招集通知
・議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
①売却を必要とする理由
②復旧又は建替えをしない理由
③復旧に要する費用の概算額
※”売却を必要とする理由”の例 ・容積率の関係で既存不適格となっており、建替えにより同一の規模の建物を建築することが困難。
 
〇決議で定める事項
①売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
②売却による代金の見込額
③売却によって各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項
 
3)建物取壊し敷地売却決議等(10条)
 
・当該区分所有建物を取り壊し、更地となった敷地を売却する旨の決議で、この決議では、取壊しと敷地の売却を同一の決議で行う必要がある。
・区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各4/5以上の多数で議決。
 
〇手続き
・おおむね建物敷地売却決議や取壊し決議の場合と類似の規定。
 
〇招集通知
・議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
①区分所有建物の取壊し及びこれに係る建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却を必要とする理由
②復旧又は建替えをしない理由
③復旧に要する費用の概算額
 
〇決議で定める事項
①区分所有建物の取壊しに要する費用の概算額
②前号に規定する費用の分担に関する事項
③建物の敷地の売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
④建物の敷地の売却による代金の見込額
 
4)取壊し決議等(11条)
 
・区分所有建物を取り壊す旨の決議。
・敷地の売却は決議事項とはならないので、建物敷地売却決議(第9条)及び建物取壊し敷地売却決議(第10条)と異なり、4/5の議決要件には、”敷地利用権の持分の価格”は含まれない。
・本条の決議により建物を取り壊した場合は、第2条の建物の全部滅失に該当し、再建決議(第4条)又は敷地売却決議(第5条)をすることができる。
 
〇手続き
・おおむね建物敷地売却決議や建物取壊し敷地売却決議の場合とと類似の規定。
 
〇招集通知
・議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
①取壊しを必要とする理由
②復旧又は建替えをしない理由
③復旧に要する費用の概算額
※”取壊しを必要とする理由”の例
・取壊し後に再建を計画しているものの決議の時点においては再建計画の策定や資金調達が間に合わない。
・将来的には売却を予定しているものの決議の時点においては買主が見つかっていない。
 
〇決議で定める事項
①区分所有建物の取壊しに要する費用の概算額
②前号に規定する費用の分担に関する事項
 
5)建物の一部が滅失した場合の復旧等に関する特例(12条)
 
〇区分所有法の一部滅失時の規定
・区分所有法61条12項では、大規模滅失の場合、建物の一部が滅失した日から”6月”以内に復旧決議、建替え決議、団地内の建物の一括建替え決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる旨を規定している。
 
〇被災区分所有法
・大規模な災害で区分所有建物が一部滅失した場合には、6月という短期間で復旧決議、建替え決議、団地内の建物の一括建替え決議を行うことは困難。
→”6ヵ月”から”1年”、と期間を延長するとともに、区分所有法に規定されている建替え決議等に加え、被災マンション法で認められている建物敷地売却決議、建物取壊し敷地売却決議、取壊し決議又は団地内の建物の一括建替え等決議も加えている。
団地の場合
1)団地建物所有者等集会(13条)
 
・団地内の建物が一つが全部滅失すれば、滅失した建物の所有者は団地”建物”所有者でなくなり、土地の共有者等ではあるが、団地管理組合の構成員から外れてしまう。
→存続している建物間では依然として団地関係にあるが、その存続している建物所有者の団地管理組合の集会の決議は、滅失した建物の敷地共有者等には効力が及ばない。
  ↓
そこで滅失した建物の所有者も含めて団地建物所有者等集会の構成員として、政令の施行の日から起算して3年を経過する日までの間は、集会を開き、及び管理者を置くことができるようにした。
 
〇要件
①団地内建物の全部又は一部が区分所有建物であることが必要。
※区分所有法ではすべて一戸建ての場合でもOKだった。すべて一戸建ての場合には、関係者の人数も少ないので、災害時における特則を設ける必要性や合理性は少ないため
②当該団地が”土地”を共有している。
※区分所有法の団地の規定では、附属施設を共有する場合でも団地管理組合が成立する。
→土地が共有となっていない場合は、他の建物所有者の承認を得ることなく、建物の再建や建替えを行うことができ、承認決議が必要となる場合は存在しないため。
 
2)再建承認決議(15条)
 
・政令で定める災害によって団地内建物が滅失
・全部滅失した棟で再建決議(4条)
→団地建物所有者等集会:3/4以上で再建承認決議。
 
3)建替え承認決議(16条)
 
・政令で定める災害によって団地内建物が滅失
・一部滅失した棟で”区分所有法による”建替え決議
→団地建物所有者等集会:3/4以上で建替え承認決議。
 
4)建替え再建承認決議(17条)
 
・政令で定める災害によって団地内建物が滅失
・全部滅失した棟で再建決議、一部滅失した棟で区分所有法による建替え決議
→団地建物所有者等集会:3/4以上で複数の棟を一括して、建替え再建承認決議。
 
5)一括建替え等決議(18条)
 
・政令で定める災害によりその団地内の全部又は一部の建物が滅失したときに、区分所有建物を一括して建て替える制度。
・区分所有法第70条の一括建替え決議と同様の状態が必要。

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