長期修繕の修繕項目・周期・方法:建具・金物等

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住戸玄関ドア等
(1)長期修繕計画作成ガイドラインの記載例
 
●修繕項目
・住戸玄関ドア、共用部分ドア、自動ドア
 
●修繕周期
〇点検・調整:12~15年
・点検、補修
〇取替:34~38年
・建具取替、スチール枠被せ
 
(2)改修工事の概要
 
サッシ・ドア改修工事の概要 参照
 
(3)玄関ドアの段階的修繕の事例
 
1)1回目の大規模修繕時(12年ごろ)
 
●経年劣化の状況
・汚れ付着
・鉄部発錆
●修繕
・不具合の点検・調整
・気密ゴム、扉クリーニング
・丁番、取っ手等が部材により緑青が出たり、傷等で著しく美観を損ねた場合は、部品交換が必要な場合もある。
 
2)2回目の大規模修繕時(24年ごろ)
 
●経年劣化の状況
・ドアチェック・気密ゴムなど付属金物が損耗。
・枠・扉のアンカーに発錆
・玄関扉鉄製三方枠の下端が錆びやすく、腐食が進行すると鉄部に穴があく。
●修繕
・上記①の項目に加え、気密ゴム、ドアクローザー、丁番、ドアスコープ、郵便受け箱セットなどの更新。
・全数脱着・付属金物取外し・水磨き塗装
・枠の下端の腐食部は電動工具で削除し、新たに金属を溶接補修する。
・付属金物が在庫切れの場合は修復不能。
 
3)3回目の大規模修繕時(36年ごろ)
 
●経年劣化の状況
・既存鋼製建具性能の異常低下
・下枠の腐食、変形
・躯体アンカー金物の腐食
●修繕
・玄関扉の更新。カバー工法、持ち出し工法、引き抜き工法。
窓サッシ等
(1)長期修繕計画作成ガイドラインの記載例
 
●修繕項目
・窓サッシ、面格子、網戸、シャッター
 
●修繕周期
〇点検・調整:12~15年
・点検、補修
〇取替:34~38年
・建具(掃出しアルミサッシ、面格子)取替、アルミ枠被せ
 
(2)改修工事の概要
 
サッシ・ドア改修工事の概要 参照
 
(3)アルミサッシの段階的修繕の事例
 
1)1回目の大規模修繕時(12年ごろ)
 
●経年劣化の状況
・汚れ付着
・部分的点蝕
・戸車など建物金具が部分的に損耗
●修繕
・アルミの表面を清掃して埃・塵などの付着物を除去し、コーティングして点蝕を防止する。
・全てのサッシを点検・調整し、バルコニー側の大型掃き出しサッシの戸車は更新する。
 
2)2回目の大規模修繕時(24年ごろ)
 
●経年劣化の状況
・戸車、ビード、気密ゴムなど付属金物が損耗。
・アルミ押出型材の点蝕進行
●修繕
・障子を外して框をばらし、枠・框を清掃して埃・塵などの付着物を除去し、コーティングして点蝕を防止する。
・戸車、ビード、クレセント、ストッパー、気密ゴム等の建具金物を新品に更新する。
・付属金物の在庫切れの場合は修復不能。
 
3)3回目の大規模修繕時(36年ごろ)
 
●経年劣化の状況
・既存サッシ性能の異常低下
・レール下枠の腐食、変形
・躯体アンカー金物の腐食
●修繕
・サッシの更新。カバー工法、持ち出し工法、引き抜き工法、躯体ハツリ工法。
手すり等
(1)長期修繕計画作成ガイドラインの記載例
 
●修繕項目
・開放廊下・階段、バルコニーの手すり、防風スクリーン
 
●修繕周期
〇取替:34~38年
・防風スクリーンの取替
 
(2)改修工事の概要
 
●手すりの劣化
・雨掛かりの場所にある鋼材は錆びやすく、パイプの内部も結露によって錆が進み、修繕しないと錆で部材が破断してしまう場合もある。
 
●手すりの修繕
〇手摺すりの欠損の場合
・支柱・桟等で腐食・欠損している部分は全てカットしてから、既存材料と同種の材料を用いて溶接して修復。
・小さな欠損の場合は、鉄用パテを埋めて整形補修する。この場合、錆止めと塗装をして仕上げる。
 
●バルコニー手すり支柱内部の水溜まり
〇原因
イ)鋼製の場合は錆穴等から、アルミ製の場合はジョイント部(部材接合部)、端部、ビス穴等から支柱内部に浸入した雨水が、手すり内部から躯体に回り、支柱根元の内部で鋼材を腐食・膨張させる。
ロ)支柱内部に発生した結露水が上記と同様に躯体に回り、鋼材を腐食・膨張させる。
 
〇修繕
・支柱の下部に穴をあけ、支柱内を乾燥させて穴の下までエポキシ樹脂等を充てんする。
 
●鋼製手すりの取替
・スチール製の手すりについては、防錆性・耐久性の向上を目的として、アルミ製又はステンレス製のものに取替える。
屋外鉄骨階段
(1)長期修繕計画作成ガイドラインの記載例
 
●修繕項目
・屋外鉄骨階段
 
●修繕周期
〇補修:12~15年
・点検、補修
〇取替:34~38年
・アルミ製トップレール取替
 
(2)補修工事の概要
 
●ケレンによる塗装塗替え
・塗装塗替えの際のケレンは、大規模修繕時に旧塗膜及び錆を除去(鉄肌を表し、活膜は残す)する。
 
●踏板の腐食劣化による穴あきの補修
・踊り場の縞鋼板の凹部には、雨水がたまりやすく、発錆を早めることにもなるため、軟化材を使用したケレンにより錆を計画的かつ十分に除去し、腐食劣化して穴の開いた踏板は鉄板を溶接して穴をふさぐ。
・腐食の著しい踏板(段板)や踊場の縞鋼板は取替える。
 
(3)改良工事の概要
 
1)縞鋼板製の踏板の腐食劣化対策と防水・排水対策
 
●腐食劣化対策
・踊り場や踏板部分に縞鋼板(チェッカープレート)が使用されている屋外鉄骨階段では、腐食劣化対策と防水・排水対策を適切に行う必要がある。
・鉄板床面は重防食圧膜塗装や、ウレタン樹脂防水材でコーティング(塗膜防水)する。
 
●踏板部分の防水対策
・階段の縞鋼板の踏板にポリマーセメントモルタル詰めを行い、その上に防滑性の塩化ビニールシートやウレタン樹脂防水材でコーティング(塗膜防水)することが考えられる。
・上記により、防錆処理の周期を延伸させることや歩行時の減音効果を期待することができる。
・仕上げ材にゴムシート等を用いて耐久性やクッション性を高めることも考えられる。
 
2)歩行時の消音対策、安全性の確保
 
・歩行時の音が問題となる場合、階段床部分に消音シート(消音用強化特殊ゴム)を張る。
・踏板部分の防水対策に併せて、歩行の安全性を確保するために、ステンレス製等のノンスリップを取り付ける。
 
3)雨水・排水の処理
 
・床面に厚塗り防錆塗装、塗膜防水をする場合や消音シートを張る場合は、鉄骨階段の段板の片側に排水溝を設けて樋を通すなど、雨水・排水処理を適切に行う。
 
4)避難階段の保全・補強
 
・中高層マンションでは、外気に面する屋外鉄骨階段が避難上有効であるとして積極的に用いられており、災害時の主な避難経路となる。
・建物や開放廊下の外側に突き出して設置されている鉄骨階段では、大きな地震時に、建物本体との接合部分のアンカーが振り切られて外れてしまい、鉄骨階段全体が倒壊した事例がある。
・以下の点に配慮し、鉄骨階段と建物本体との接合部分の補強をしておく必要がある。
イ)屋外階段は建物本体と緊結し、地震時に一体に揺れるような取合いをする。
ロ)屋外階段と建物本体とのアンカー接合部分は、余裕をもった設計とし工事精度を高める。
ハ)階段室内部は避難を第一とし、落下の危険性のある仕上げは避ける。
 
5)鉄骨階段の取替え
 
・劣化損傷が著しく進行したものについては、階段全体の取替え(全面撤去及び新設)を行う。
〇階段の鋼材
・溶融亜鉛メッキ処理
・コルテン鋼(プレパレン処理)
〇階段床、踊り場部分
・軽量で耐久性・耐火性・耐塩製・美装製等に優れたGRC(ガラス繊維補強コンクリート)を使用することが考えられる。
 
※溶融亜鉛めっき
・溶融亜鉛めっきは、電気めっきと比べて亜鉛の付着量が多い。
・溶融した亜鉛と鉄が反応して硬い合金層ができ、傷等から守ってくれる。
金物類(集合郵便受等)
(1)長期修繕計画作成ガイドラインの記載例
 
1)集合郵便受等
 
●修繕項目
・集合郵便受等、掲示板、宅配ロッカー等
 
●修繕周期
〇取替:24~28年
・ステンレス製集合郵便受取替
 
2)屋上フェンス等
 
●修繕周期
〇取替:34~38年
 
3)その他の金物類
 
●修繕項目
・笠木、架台、マンホール蓋、階段ノンスリップ、避難ハッチ、タラップ、排水金物、室名札、立て樋・支持金物、隔て板、物干金物、スリーブキャップ等
 
●修繕周期
〇取替:24~28年
・竪樋、ステンレス製避難ハッチ、隔て板、ポーチ門扉取替
 
(2)補修・取替工事の概要
 
●取替工事
・金物類は通常、塗装されているが、塗装によるメンテナンスにも限界があり、一定の時期に取替えが必要となる。
・対象部位・部品について、長年の使用により損耗・破損するものを計画的に取替える。
・一斉に取替える場合と劣化部を順次取替える場合とがあるが、外壁工事等と同時期に行うことが一般的。
 
●金物の接続部の補修
・金物がコンクリート又はモルタル仕上げに接する劣化部の補修も同時に行う。
・以下の手順で行う。
 劣化した金物付け根部の詰めモルタル等のハツリ・除去
→錆粉等の清掃
→コンクリートの被り厚さ不足部の金物撤去
→防錆・防食
→埋戻し・復元処理
→シーリング充填
 
(3)改良工事の概要
 
〇合成樹脂製のスリーブ・換気口キャップ等
・防食性・耐久性のあるステンレス製に取替。
・風除けの深いタイプにより強風時の雨水の浸入を防ぐことや、防音タイプにより騒音を防ぐことにも配慮する。
 
〇雨水竪樋の支持金物
・金属製から耐久性に優れたステンレス製に取替。
 
〇階段ノンスリップ
・スチール製からステンレス製に取替。
 
〇共用廊下床の鉄製のエキスパンションジョイント
・アルミ合金製等のものに付け替え。
 
〇スチール製の点検・避難ハッチ
・ステンレス製のものに取替。
 鉄製の躯体埋込枠を残して被せ工法で更新。
・避難ハッチを取替える際には、はしごの揺れや回転を防止する構造になっているものや半固定式のものなど、降りやすく安全なタイプのものに取替える。
 
〇スチール製の集合郵便受け
・全戸鍵付きアルミ・ステンレス製の大型タイプのものに交換し、エントランスホールの美装性や防犯性を高める。
 
〇台所換気扇の排気口
・ステンレス製フードを取り付けることにより、外壁の汚れを防止し、美装性を高める。
 
〇ボルト・ナット
・金物類はボルト・ナットで取付けられているものが多いため、スチール製の場合は全てステンレス製に取替。
金物類(メーターボックス扉等)
(1)長期修繕計画作成ガイドラインの記載例
 
●修繕項目
・メーターボックスの扉、パイプスペースの扉等
 
●修繕周期
〇取替:34~38年
・スチール製扉取替
 
(2)取替・改良工事
 
・パイプスペース扉、メーターボックス扉等はスチール製のものが多く、通常鉄部塗装によりメンテナンスされているが、枠周りや丁番等の付属金物類の傷みが先に来るので、ステンレス製のものに取替える。
・扉本体を取替える時にも耐久性に優れたステンレス製のものに取替える。
・パイプスペース扉が小さいと、配管の修理や取り替え時に囲いの壁まで壊さなければならない。
→壁ごと外せるパイプスペース扉が普及しており、こうしたものに取替えることが考えられる。
・パイプスペース内部の給排水管やガス管、電気幹線、テレビ共聴設備の同軸ケーブルなどを取替える際にパイプスペース扉も取替えることが望まれる。

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