開発行為の許可

〇都市計画法:29~51条
〇過去問
・管理業務主任者 
・マンション管理士 
 
 
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開発行為とは?
●開発行為とは?(4条)
 
・”主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更”をいう。
 
〇”土地の区画形質の変更”とは
・土地の区割り、切土・盛土、田から宅地へなど地目の変更等を指し、土地の造成工事を意味する。
・一般的に、宅地造成行為は、土地の区画形質の変更にあたる。
・土地の造成(土地の区画形質の変更)だけでは開発行為に該当せず、あくまで”建築物の建築又は特定工作物の建設”の目的で行う造成工事だけが開発行為に該当。
 
●特定工作物
・都市計画法上の開発許可が必要となる一定の工作物のことを指し、以下の2つに分類される。
〇第一種特定工作物
・”周辺の地域の環境の悪化をもたらすおそれがある工作物”。
・コンクリートプラント、アスファルトプラント、クラッシャープラント、危険物の貯蔵又は処理に供する工作物など。
 
〇第二種特定工作物
①ゴルフコース(面積問わず)
②1ha以上の野球場、陸上競技場、遊園地、動物園、墓園等のこと。
開発行為の許可、許可不要なもの
●原則(29条)
 
・開発行為をしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事(指定都市にあっては、その市長)の許可を受けなければならない。
 
〇開発許可が不要な場合
 
・開発許可は、公共施設の整った良好な市街地を整備する等の理由があるため、以下の場合は開発許可が不要となる。
 ・他の法律で規制されている場合
 ・市街化の誘因にならない場合
 ・現状維持的なもの
 
1)小規模開発
 
・開発行為に該当しても、以下の規模未満の場合は、知事の許可は不要。
〇市街化区域:1,000m2未満
・都(特別区)の区域は500m2未満。
・規則で300m2まで引き下げ可
〇市街化調整区域:小規模でも不要とならない。
〇非線引区域、準都市計画区域:3,000m2未満
・規則で300m2まで引き下げ可
〇都市計画・準都市計画区域以外:10,000m2未満
 
〇開発区域が2つ以上の区域にわたる場合
・それぞれの区域にかかる部分は許可不要となる場合でも、その合計面積が、最も広いものに関する面積以上である場合、許可が必要となる。
 
2)農林漁業用建築物・農林漁業者の住宅(市街化区域以外)
 
・農林漁業用建築物又はこれらの業務者の居住用建築物の建築目的の開発行為には、都道府県知事の許可が不要。
→市街化区域内では農林漁業用建築物でも、一般の建築物と同様、開発許可が必要になる(ただし、1,000㎡未満なら小規模開発ということで開発許可は不要。)
 
〇農林漁業用建築物
・畜舎、サイロ、蚕室、温室など農産物、水産物等の生産・出荷に直接用いる建築物のこと。
 
3)公益上必要な建築物
 
・公益上必要な建築物の建築目的の開発行為は、市街化の誘因にならないということで、開発許可は不要。
・駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所など
※保育所などの”社会福祉施設”、幼稚園、小・中学校、高校、大学などの”学校”、病院などの”医療施設”、は許可必要。
 
4)”~事業の施行”として行う開発行為、他の法律で規制されている開発行為
 
以下の事業は、あらかじめ都道府県知事の認可・許可などを受けているため、都市計画法上の許可は不要。
・都市計画事業の施行として行う開発行為
・土地区画整理事業の施行として行う開発行為
・市街地再開発事業の施行として行う開発行為
・住宅街区整備事業の施行として行う開発行為
・防災街区整備事業の施行として行う開発行為
・公有水面埋立法の免許を受けた埋立地で、まだ竣工認可の告示がないものにおいて行う開発行為
 
5)現状維持的な行為
 
・非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為
・通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
・現状維持的な行為として開発許可が不要。
・仮設建築物の建築、車庫・物置その他これらに類する附属建築物(車庫、物置、10m2以内の増改築など)の建築の用に供する目的で行う開発行為。
 
6)国等の特例(34条の2)
 
・国または都道府県が行う開発行為については、その国の機関または都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって、開発許可があったとみなされる。
開発許可の手続き
1)許可の申請
 
●許可申請書の作成(30条)
・開発許可の申請は、申請書に以下の事項を記載して、書面で行う。
〇申請書の記載事項
・開発区域の位置、区域、規模
・予定建築物等の用途(規模・構造・設備等は不要)
・工事施行者等
※1ha以上の開発行為の設計図書は、一定の有資格者により作成したものでなければならない。
 
●申請書の添付書類等(30条2項)
〇公共施設の管理者との協議書、同意書
・現在すでに設置済みの公共施設の管理者:協議し、同意を得る。→同意書
・これから開発行為により設置される公共施設の管理者:協議する。→協議書
 
〇区域内の土地所有者等の同意書
・開発許可に係る区域内の土地所有者等の相当数の同意を得なければならない。→同意書
 
2)審査
 
・開発許可の申請があった場合、都道府県の知事はその申請内容を一定の許可基準で審査する。
・許可基準には、技術基準(33条)と市街化調整区域の開発行為のみに適用される立地基準(34条)がある。
 
〇市街化調整区域以外の場合
・技術基準のすべての基準に適合
→知事は、開発許可をしなければならない(必要的)。
 
〇市街化調整区域の場合
・技術基準のすべての基準に適合
 ↓かつ
・立地基準の基準の1つに該当
→知事は、開発許可をすることができる(裁量的)。
 
●技術基準(33条)
〇自己居住用問わず共通の項目
・用途地域適合
・排水施設
・開発行為施行の妨げとなる権利を有する者の相当数の同意
・地区計画等
・公共的施設
・防災措置
・環境保全
〇業務用の開発行為(自己居住用建築物等以外)
・道路・公園等
・給水施設
・災害危険区域等
・申請者の資力・信用
・工事施行者の能力
 
※建築物の敷地面積の最低限度に関する制限
・地方公共団体は、良好な住居等の環境の形成又は保持のため必要と認める場合においては、政令で定める基準に従い、条例で、区域、目的又は予定される建築物の用途を限り、開発区域内において予定される建築物の敷地面積の最低限度(200m2未満で)に関する制限を定めることができる。
 
●立地基準(34条)
①周辺住民の利用する公益上必要な建築物、日常生活に必要な店舗等
②鉱物、観光資源の利用のためのもの
③温度、湿度、空気等について特別な条件を必要とするもの。
④農林水産物の処理・貯蔵・加工のためのもの
⑤所有権移転等促進計画の利用目的に沿って行うもの
⑥中小企業団地等
⑦既存工場の関連工場
⑧危険物の貯蔵処理のためのもの
⑨市街化区域で建築困難なもの等
⑩地区計画等に適合して行われるもの
⑪条例で定める市街化区域に近隣接する区域で行われるもの
⑫⑭のうち条例で定められたもの
⑬既存権利の5年以内の行使。
⑭市街化を促進するおそれがなく、市街化区域内で行うことが困難・不適当なもの(開発審査会の議を経る)
 
3)非用途地域の開発許可、建ぺい率等の制限(41条)
 
・都道府県知事は、用途地域の定められていない土地の区域における開発行為について開発許可をする場合において必要があると認めるときは、当該開発区域内の土地について、建築物の建蔽率等の制限を定めることができる。
→非用途地域では、建築制限が比較的緩やかであるため。
 
〇制限できる内容
・建築物の建蔽率
・建築物の高さ
・壁面の位置
・その他建築物の敷地、構造及び設備に関する制限
 
4)開発許可、変更の許可、地位の承継、廃止
 
●許可又は不許可の通知(35条)
・都道府県知事は、開発許可の申請があつたときは、遅滞なく、許可又は不許可の処分をしなければならない。
・上記処分をするには、文書をもつて当該申請者に通知しなければならない。
 
●開発許可内容の変更(35条の2)
〇原則:知事の許可が必要。
〇軽微変更の場合:知事に事後届出
以下のような軽微変更の場合は、事後届出でよい。
・予定建築物等の敷地の形状の小規模な変更
・工事着手予定日・完了予定日の変更
・開発許可が不要な行為への変更
 
●開発許可に基づく地位の承継(44、45条)
〇相続人その他の一般承継人
・当然に承継する。手続き不要。
〇特定継承(土地等の譲渡など)
・知事の承認が必要。
 
●開発行為の廃止(38条)
・開発許可を受けた者は、開発行為に関する工事を廃止したときは、遅滞なく、知事に届け出なければならない。(事後届出)
 
●不服申立て(50条)
・不許可などの場合、申請者は、開発審査会に対して審査請求をすることができる。
・不作為についての審査請求は、開発審査会に代えて、知事に対してすることもできる。
 
5)工事完了、検査、工事完了の公告(36条)
 
①工事完了の届出
・開発許可を受けた者は、当該開発区域の全部について開発行為に関する工事を完了したときは、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
 
②検査、検査済証の交付
・知事は、工事完了の届出があつたときは、遅滞なく、当該工事が開発許可の内容に適合しているかどうかについて検査し、適合していると認めたときは、検査済証を交付しなければならない。
 
③工事完了の公告
・知事は、検査済証を交付したときは、遅滞なく、当該工事が完了した旨を公告しなければならない。
 
※開発区域を工区に分けたときは、その工区ごとに行われる。
 
6)開発行為等により設置された公共施設の管理、帰属
 
●開発行為等により設置された公共施設の管理(39条)
・工事完了の公告の翌日以降、以下のように管理する。
〇原則:その公共施設の存する市町村が管理する。
〇例外:他の法律に基づく管理者が別にあるとき、又は事前の協議により管理者について別段の定めをしたときは、それらの者が管理する。
 
●公共施設の用に供する土地の帰属(40条)
・工事完了の公告の翌日以降、以下のように管理する。
①原則
・その公共施設の管理者(原則は市町村)に帰属する。
②従前の公共施設に代えて新たな公共施設が設置される場合
例)開発行為に伴って道路の付け替えがあったような場合
イ)従前の公共施設の敷地で国又は地方公共団体が所有するもの
・開発許可を受けた者に帰属
ロ)新たに設置された公共施設の敷地
・国・地方公共団体に帰属
 
7)開発登録簿の公開(46、47条)
 
・知事は、開発許可をしたときは、当該許可に係る土地について、次に掲げる事項を登録簿に登録・保管し、公開しなければならない。
・知事は、請求があつたときは、その写しを交付しなければならない。
 
〇登録事項
・開発許可の年月日
・予定建築物等の用途
・公共施設の種類、位置及び区域
・開発許可の内容
・非用途地域に制限に制限を定めた場合はその内容。
建築の制限
1)開発区域内の建築制限
 
●工事完了公告前(37条)
〇原則
・建築物等の建築は禁止
→開発区域内における建築行為は、開発行為(土地の区画形質の変更=宅地造成)の工事が完了した後に行われるべき。
〇例外
・開発行為に関する工事用の仮設建築物の建設等
・知事が認めたとき
・開発行為に不同意の者が、その権利の行使として行う建築行為。
 
●工事完了公告後(42条)
〇原則
・予定建築物等(許可申請書に記載された建築予定のもの)以外の新築禁止。
・予定建築物等以外への用途変更は禁止。
〇例外
・用途地域等が定められているとき(市街化区域等)
・非用途地域の場合は、知事が許可したとき
→市街化区域は用途地域が定められているので許可不要。市街化区域以外は許可が必要。
 
2)開発区域以外の区域における建築制限
 
●市街化区域
・用途地域の指定に基づいて、建築基準法により、各種の規制が講じられる。
 
●市街化調整区域(43条)
 
〇原則(知事の許可が必要)
・建築物等の新築・用途変更等は禁止。
→市街化調整区域は、市街化を抑制すべきなので、開発行為を伴わない場合でも、建築行為は原則として禁止すべき。
 
〇例外(知事の許可不要)
・農林漁業用建築物等
・公益的建築物
・都市計画事業
・非常災害応急措置
・通常の管理行為、軽易な行為
・仮設建築物
・都市計画事業が施行された土地の区域内で行われるもの

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