電気工作物、マンションへの電力供給、避雷設備

〇建築基準法:33条
〇建築基準法施行令:129条の14、129条の15
〇過去問
・管理業務主任者 2001問23、2002問23、2004問25
・マンション管理士 2002問20、2006問21、2010問20、2012問45、2015問20
 
 
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マンションの電力供給の概要
1)小規模マンション(契約電力50kW未満)
 
①電力会社の送電線(高圧電力)
②電柱の柱上変圧器で低圧に変圧
・2系統の引込線に分岐。電灯用(照明やコンセントなど)、動力用(エレベータなど)
③引込開閉器盤
④マンション内に電力を配電
→動力幹線→動力制御盤→動力設備(エレベーター、給排水ポンプなど)
→電灯幹線→共用部分電盤→共用部の照明、共用部のコンセントなど
→電灯幹線→専有部住宅用分電盤→専有部に電力供給
 
2)中規模程度以上のマンション(契約電力50kW以上)
 
①電力会社の送電線(高圧電力)
②敷地内の受変電設備に引込み、低圧に変圧
〇借室電気室
〇集合住宅用変圧器
・屋外に設置。パットマウントより大きい
〇パットマウント(地上用変圧器)
・屋外に設置。道路の脇のスペースが小さくても設置できる。
〇借柱方式
③引込開閉器盤、低圧配電盤
④マンション内に電力を配電
→動力幹線→動力制御盤→動力設備(エレベーター、給排水ポンプなど)
→電灯幹線→共用部分電盤→共用部の照明、共用部のコンセントなど
→電灯幹線→専有部住宅用分電盤→専有部に電力供給
 
3)大規模マンション(共用部だけで50kW以上)
 
・借室電気室に加え、自家用受変電設備を設置する必要がある。
・借室電気室は専有部用、自家用受変電設備は共用部用の電力を供給する。
 
①電力会社の送電線(高圧電力)
②敷地内の受変電設備に引込み、低圧に変圧
〇専有部用電力
・借室電気室
〇共用部用電力
・自家用受変電設備:自家用電気室、屋外キュービクル
③引込開閉器盤、低圧配電盤
④マンション内に電力を配電
〇専有部用電力
・借室
→電灯幹線→専有部住宅用分電盤→専有部に電力供給
〇共用部電力
・自家用受変電設備
→動力幹線→動力制御盤→動力設備(エレベーター、給排水ポンプなど)
→電灯幹線→共用部分電盤→共用部の照明、共用部のコンセントなど
引込み、受変電設備
1)受変電設備とは
 
・受電設備と変電設備を合わせて受変電設備という。
 
●受電設備
・電力会社から引込んだ電力を受けるための設備。
 
●変電設備
・受電した高圧の電力を低圧に変換する変圧器、変圧器を保護するためのヒューズや開閉器、遮断器、低圧に変換された電力を送り出す配電盤などで構成される。
・低圧引込の場合は、引き込まれた低圧電気をそのまま建物構内で使えるので、変電設備は不要。
 
●変圧器(トランス)
〇単相トランス、電灯トランス
・照明やコンセントに使う単相100Vが必要な場合。
・単相200Vと単相100Vを同時に取り出すことができる。
 
〇三相200Vトランス、動力トランス
・空調設備や給排水ポンプに使う三相200Vが必要な場合。
 
〇動灯トランス
・1つのトランスで電灯トランスと動力トランスを兼ねたもので、単相三線210/105Vの出力端子と三相三線210Vの出力端子をもっている。
 
●低圧配電盤
・変圧器で変圧された低圧電気を用途別、使用場所別に幹線回路を分けるための開閉器、配線用遮断器を取り付けたもの。
・変圧器二次側の電圧と電流を計測する低圧電圧計、電流計や電力計などが取り付けられている。
・基本的には、1台の変圧器に1面の配電盤が対応する。
 電灯用変圧器の二次側→電灯配電盤→電灯の低圧幹線
 動力用変圧器の二次側→動力配電盤→動力の低圧幹線
 
2)引込み方式、電源供給の区別
 
・供給電圧によって”低圧引き込み”、”高圧引き込み”、”特別高圧引き込み”の3種類に区別される。
・マンションにおいては、低圧引込と高圧引込がほとんど。
・区別の方法は、建物の使用電力により決定する。
 
引込方式   受電電圧(V) 契約電力(kW)   借室設置
低圧引込   100V、200V  50kW未満   不要
高圧引込   6,000V   50~2000kW未満 電力会社の借室が必要
特別高圧引込 20kV以上   2000kW以上   借室と特別高圧用変電室が必要
 
3)マンションの引込方式、受変電設備
 
①マンションの電力総量50kW未満
・低圧引込(受電電圧は100V、200V)
●引込方式
・架空引込み
・地中引込み
 
②マンションの電力総量50kW以上
・高圧引込(受電電圧は6,000V)
●引込方式
〇借室方式
・建物内の一室を受変電設備用として電力会社へ提供。
・変圧器容量に制限はない。
・借室内部空間と受変電設備等は、電力会社の管理対象物。
・維持管理は電力会社が全て実施する。
〇集合住宅用変圧器、パットマウント(地上用変圧器)方式
・借室方式の採用が難しい場合に、敷地内の屋外に電力会社が変圧器を設置して供給する方式。
・トランス容量に制限がある。
〇借柱方式
・敷地内の電柱柱に電力会社が変圧器を設置して供給する方式。
・トランス容量に制限がある。
 
③マンション共用部だけで契約電力が50kW以上
・高圧引込(受電電圧は6,000V)+自家用受変電設備
●引込方式
〇借室電気室:専有部用電力
・電気事業法において、一般用電気工作物として扱われる。
〇共用部用電力:自家用受変電設備
・自家用電気設備への高圧電力は、借室電気室内に電力会社が設備する高圧遮断器から分岐して供給する。
・電気事業法において、自家用電気工作物として扱われる。
 
4)受変電設備の形態、キュービクル、パットマウント
 
●開放型の受変電設備
・電気室内や屋外に立てたパイプフレームに受変電設備機器を取付け、電線を接続して組み立てられる。
・機器や充電部がむき出しの状態で、人が触れると感電して危険のため、機器や充電部のネットフェンスで囲う必要がある。
 
●閉鎖型、キュービクル式高圧受変電設備
・受変電設備を簡略化し、鋼板製の箱の中に納めたもので、単に”キュービクル”(Cubicle)とも呼ばれる。
・建物内に変電室のためのスペースがない場合等に置かれるもので、増設移設が自由にでき、経済的。
・あらかじめ配電盤メーカーの工場で組み立てられたものを建物内に運び込んで受変電設備とする。
・機器や充電部が鋼板で覆われているので、感電する心配がなく安全性が高い。
・屋内型は地下室、階段室、屋上塔屋等に設置でき、屋外型は建物外の地上に据え付けられる。
 
●パットマウント、集合住宅用変圧器
・屋外に設置される小型の変電設備。
・pad(道路:英俗語)に据え付けられた(moun-ed)という意味からきている。
→道路の隅に据え付けられた変圧器という意味。
・主に小規模なマンション等で用いられている。
・マンションで必要とされる借室変電設備に変る設備として期待されるが、大規模マンション(住戸数が100戸超)では採用が困難。
・共同住宅では、電灯負荷と動力負荷のいずれかが50KVAを超える場合には借室変電室が必要であり、それができないときは、屋外型キュービクルを設置していたが、最近は改良型としてパットマウント型が開発され、総戸数70~80戸程度の受変電設備はパットマウントに代わりつつある。
・電力会社の所有物であり、その管理は電力会社自身が行う。
 
●柱上変圧器
・電柱上部に施設され、高圧配電線で送られてきた三相6,000Vの電気を家庭などで使用する単相100V/200V、三相200Vに降圧する機器。
電気工作物の種類
1)電気工作物の概要、必要な資格
 
●電気工作物とは
・電気を供給するための発電所、変電所、送配電線をはじめ工場、ビル、住宅等の受電設備、屋内配線、電気使用設備などの総称。
 
●必要な資格
・電気工作物の種類によってその電気工作物の保安の監督又は電気工事を行う人に必要な資格が、法律(電気事業法及び電気工事士法)で定められている。
 
①第1種電気工事士
・自家用電気工作物(500kW未満、ネオン管、自家発電設備を除く)および一般用電気工作物
②第2種電気工事士
・一般用電気工作物
 
※電気主任技術者
・事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する専門的な知識を有するものに与えられる資格。
・事業用電気工作物(自家用電気工作物を含む)の設置者(所有者)は、電気事業法の定めにより電気主任技術者等の主任技術者を有資格者の中から選任することが義務付けられている。必置資格。
 
2)電気工作物の種類(電気事業法38条)
 
●一般用電気工作物
・主に一般住宅や小規模な店舗、事業所などのように、電気事業者からから低圧(600V以下)の電圧で受電している1つの構内にある電気工作物。
・太陽電池発電設備であって出力50kW未満のものは、一般用電気工作物となる。
・第1種電気工事士又は第2種電気工事士のみ作業可能。
 
※小出力発電設備
・発電設備のうち、出力が小さく安全性が高い発電設備のこと。
・太陽光発電設備は出力が50kW未満のもの、燃料電池発電設備は出力10kW未満のもの。
 
〇住宅用分電盤の設置工事、安全ブレーカーの増設や変更
・一般用電気工作物に該当し、第1種電気工事士又は第2種電気工事士でなければできない。
 
●電気事業用電気工作物
・電気事業者の発電所、変電所、送配電線などの電気工作物。
 
●自家用電気工作物
・工場やビルなどのように電気事業者から高圧以上の電圧で受電している事業場等の電気工作物。
・次に掲げる事業の用に供する電気工作物及び一般用電気工作物以外の電気工作物をいう。
①一般送配電事業
②送電事業
③特定送配電事業
④発電事業であつて、その事業の用に供する発電用の電気工作物が主務省令で定める要件に該当するもの
・マンション等がこれに該当する。
・”自家用電気工作物”の所有者は、電気事業法によって、経済産業資源エネルギー部施設課に対して、電気主任技術者の選任及び保安規定を工事着工前に届出し、建物完成後は保安規定に則った維持・運営を行わなければならない。
・なお、電気主任技術者の選任については、契約電力が一定容量までの自家用電気工作物は、電気保安協会等に委託する方法により電気主任者の不選任申請が可能。
 
●事業用電気工作物
・一般用電気工作物以外の電気工作物。電気事業用及び自家用電気工作物の総称
 
※マンションの場合
・電気需要者の電気工作物は、一般電気工作物と自家用電気工作物に区別され、おおよそ住戸及び一般的なマンションの共用部は、一般電気工作物になる。
・大規模マンションの共用部契約電力が50kW以上の施設は、高圧引き込みとなり、”自家用電気工作物”に該当する。
高圧一括受電
●高圧一括受電
 
・電力会社と高圧電力の需給契約を締結することで、低圧電力より安価な高圧電力をマンション全体で一括受電する方式。
・高圧電力から家庭で使用する低圧電力へ変圧するための受変電設備、各住戸の電力量メーターの設置、維持管理等は、電力会社ではなくマンションサイドで行う必要がある。
・電力会社と入居者毎の”個別契約”であれば、電力会社が各戸の電力量計の保安の責任を負うが、管理組合と電力会社が一括して高圧電力の需給契約を締結すれば、電力会社は各戸の電力量計の保安の責任を負わない。
 
〇電力の小売全面自由化における注意点
・マンション全体で一括受電している場合には、その契約内容や管理規約などにより、電力会社への切替えが制限される可能性があるので注意が必要。
 
●一般住宅との相違
・住宅用分電盤内のサービスブレーカー(アンペアブレーカー)は、電力会社の所有物であるが、漏電遮断器、安全ブレーカーは利用者の所有物。
単相・三相、2線・3線
1)単相交流、三相交流
 
〇単相交流
・発生する起電力が一定変化し、1つの波形を形成するもの。
・電灯、冷蔵庫、扇風機といった家庭電化製品などに使われる。
〇三相交流
・3つの単相交流1/3周期ずつずらして組合わせて電流を送る送電方法。
・三相交流は送電や配電に適した電流。
・中・大型の電動機などに使われる。
・一般的な家庭の電気は家のすぐ近くまで三相交流で送られ、電柱のトランスで単相交流に変換される。
 
2)交流による送電方式
 
・電源側(高圧側)の巻き線と負荷側の巻き線で、電圧が変えられる。
・巻き線の2次側の結線方式により、単相交流を2本1組のケーブルで供給する単相2線式と、単相3線式、三相3線式、三相4線式等がある。
 
〇単相2線式100V
・電灯、コンセント、一般的な家庭用電気機器など100Vのみ使用できる。
〇単相3線式100V/200V
・IH調理器やエアコンなど200Vの電気機器も使用できる。
〇三相3線式200V
・単相200Vと三相200Vを取り出せる。
・工場などの動力の利用に適している。
・ビルの空調機器や給排水ポンプ、エレベーターなど。
 
3)単相3線式
 
・配線は、電圧線が2本と1本の中性線の計3本で構成される。電圧線ともう一本の電圧線を結ぶと200Vの電圧が得られ、電圧線と中性線を結ぶと100Vの電圧が得られる。
 
〇200Vの電気器具を使用
・単相3線式で200Vの電気器具を使用する場合においては、3本の電気配線のうち1本の電圧線と、もう1本の電圧線を利用する。中性線と他の電圧線を利用すれば、100ボルトの電気器具しか利用できない。
 
4)漏電遮断器、中性線欠相保護機能
 
・電気を単相3線式で家庭内で使用するには、分電盤や漏電遮断器も単相3線式にする。
・単相3線式では、100Vの負荷が2本の電圧線に均等にかかっていないと、中性線が断線(欠相)して、100Vで使用している電気機器に200Vの電圧がかかってその機器が燃え出したという事故が相次ぎ、”中性線欠相保護機能付”の漏電遮断器が開発された。
・単相3線式で引込んでいる住戸においては、200Vの電気器具を利用する際には、2本の電圧線を利用し、中性線は利用しないので、漏電遮断器は中性線欠相保護機能付のものとするのが望ましい。
・単相3線式の場合には、中性極の断線や接続不良(欠相)が発生すると、AC100Vの回路の機器に異常電圧が加わり、電圧耐量の小さい機器では絶縁劣化や焼損事故に至る場合があるため、中性線欠相保護機能付きにすべきとされている。
幹線設備
●幹線とは
・受変電設備で必要な電圧にした電力を各使用エリアの分電盤に送る配線を幹線という。
・引込開閉器盤や低圧配電盤から分電盤までの配線。
 
●分岐幹線
・必要なエリアごとに単独で専用の幹線を施設することは非効率。
→エリアで必要とする電力を集合させて、そのエリアごとに枝分かれさせる配線を、その幹線の分岐幹線という。
 
●幹線の配線方式
〇垂直方式
・各住戸のシャフトに幹線を敷設し各住戸に分岐。
〇水平方式
・メインのシャフトで幹線を集中して敷設し、各階平面で各住戸に分岐。
〇放射状方式
避雷設備
1)設置対象の建築物
 
●避雷設備(法33条)
・高さ20mをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。
 
〇注意
・一般的に建築物の高さは、階段室等が当該建築物の建築面積の1/8以内の場合においては、階段室等を高さに算入しないが、避雷設備については、この規定の適用が除外されており、階段室を含めて高さが20mを超える建築物には、原則として避雷設備を設けなければならない。
 
2)構造等
 
・避雷設備は、一般的に、突針等の受電部、避雷導線、接地極等からなる。
 
●設置(令129条の14)
・法33条の規定による避雷設備は、建築物の高さ20mをこえる部分を雷撃から保護するように設けなければならない。
 
●構造(令129条の15)
・前条の避雷設備の構造は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
一)雷撃によつて生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法(平成12年建設省告示1425号)を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
二)避雷設備の雨水等により腐食のおそれのある部分にあつては、腐食しにくい材料を用いるか、又は有効な腐食防止のための措置を講じたものであること。
 
●平成12年建設省告示1425号”雷撃によって生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができる避雷設備の構造方法を定める件”
・雷撃によって生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができる避雷設備の構造方法は、日本工業規格A4201(建築物等の雷保護)-2003に規定する外部雷保護システムに適合する構造とすることとする。
 
3)その他参考情報
 
〇保護レベル
・建物の雷撃に対する保護レベルは、ⅠからⅣに区分されている。
・Ⅰの方が保護レベルが高い。
 
○避雷針の保護角
・一般建築物では60度、危険物を扱う建築物では45度とされていたが、新JIS規格により、避雷針の保護角は高さと保護効率の両方から考慮して規定されることになった。
・建築物が高くなるほど保護角は狭くなり、60m以上の建築物では保護角が設定されない。
・火薬および可燃物性ガス・液体などの危険物を扱う製造所、貯蔵所の保護角は45度以下とされている。
 
〇保守
・雷保護システムの信頼性を保つためには,定期的な検査を行うことが基本的条件。
・不備が確認された場合には,遅滞なく修理を行わなければならない。
・検査の頻度については示されていない。

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