8万円の簡易的な長期修繕計画書の出来栄え

長期修繕計画書の作成は、管理会社との管理委託契約の対象外となっています。国土交通省のガイドラインに準拠した詳細な長期修繕計画書を管理会社に作成してもらうには45万円の費用がかかる、とのことでした。大規模修繕工事を実施したばかりということもあって、約8万で簡易的な長期修繕計画書(資金計画シミュレーション)を管理会社に作ってもらうことにしました。
 
実際に作ってもらうとその出来栄えについていろいろ問題があったので以下に紹介します。
 
 
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国土交通省準拠と簡易版との違い
様式番号国交省準拠版簡易版
費用約45万約8万
現地調査ありなし
第1号建物・設備の概要等類似の記載あり
第2号調査・診断の概要なし
第3-1号設定の考え方同趣旨の記載あり
第3-2号工事項目・修繕周期の設定なし
第4-1号長期修繕計画総括表あり
第4-2号収支計画グラフあり
第4-3号長期修繕計画表(小項目別)なし
第4-4号工事費内訳書なし
第5号修繕積立金の額の設定数パターンの資金計画表
 
●劣化の調査・診断
・長期修繕計画の見直しに当たっては、建物・設備の劣化状況などを把握するために調査・診断を行います。
 
〇長期修繕計画の見直し時の調査・診断
・長期修繕計画の見直しのために単独で行う場合は、著しい劣化がないかぎり目視調査など簡易なものにとどまります。
 
〇計画修繕工事の実施のために行う調査・診断
・劣化状況によっては、目視調査にとどまらず、適宜、非破壊試験、破壊試験と詳細な調査・診断を行います。
 
●劣化の調査・診断の有無と国交省版・簡易版との相違について
 
①国交省版
〇修繕周期の設定
・建物及び設備の劣化状況に関する調査・診断の結果を踏まえた上で、修繕工事の必要性や実施時期、工事内容等を検討している。
 
〇推定修繕工事費の算定
・修繕等の履歴、現状の調査・診断の結果等を参考として算出している。
 
②簡易版(資金計画シミュレーション)
・マンションの基本概要(敷地面積、建物面積、階数、建物形状等)に係数などを乗じて数値化し、一般的な修繕周期により算出。
・推定修繕工事項目ごとの数値・単価については、建物の構造、規模など一般的な建物の標準モデル(7階建、50戸程度)から一定の数値を割出し、管理会社の管理実績値(過去工事実績等)を考慮し、建物の形状や仕様等による係数で補正し算出。
・建物・設備の現況や修繕の履歴等に関して、調査・診断等を行わずに作成。
過去の修繕実績が反映されていない!
私が経験した事例の場合、現地調査を実施しないという点については事前に説明を受けていましたが、過去の修繕実績は簡単に調べることができるので、その点については反映されていると思っていました。
 
しかし、実際に出来上がったものを見てみると全く反映されておらず、上記に示したように”修繕の履歴の調査”も行わずに作成するのが仕様とのことでした。
 
●過去の実績値との乖離
①大規模修繕工事
・直近の実績値:約1,300万
・簡易長期修繕計画書:約2,500万
②共用部照明LED化工事
・実績値:約50万
・簡易長期修繕計画書:約120万
③増圧給水ポンプ取替
・実績値:約200万
・簡易長期修繕計画書:約300万
④増圧給水ポンプ補修費用・周期
・実績値:約50万、8年周期
・簡易長期修繕計画書:約50万、5年周期
⑤排水ポンプ取替
・実績値:過去20年間で実施記録なし
・簡易長期修繕計画書:約30万、5年周期
管理会社の工事実績で算出?
この記事の事例の管理会社は、工事部門の部署があり、修繕工事や設備取替の元請けも行っています。
 
過去に屋上防水工事や増圧給水ポンプの取替工事に管理会社元請けと理事推薦業者との相見積比較した際には、管理会社の見積が3~4割高いという結果となっていました。
 
この簡易版長期修繕計画書が、管理会社の工事実績値を基に算出している、ということになると長期修繕計画書内の推定修繕工事費が相場より3~4割高くなってしまうのでは?という懸念も生じます。
 
同規模の他マンションでの事例等と比べて高いのでは?思われる項目がいくつかありました。(約30戸のワンルームマンションの事例)
 
・昇降機取替:1,940万
→”制御・部分リニューアル”の相場の目安は400~700万では?
・建具取替(アルミサッシ、玄関ドア):戸あたり70万
・インターホン設備交換:約600万
・自動火災報知設備取替:約375万
理事会での説明はなし
この事例では、簡易版の長期修繕計画書を作成してもらったところ、大幅な資金不足が生じるとのシミュレーション結果となり、修繕積立金を約2.5倍に増額する必要がある、との結果でした。
 
1回目の大規模修繕工事の費用が約1,300万、大規模修繕工事実施直後にも関わらず、修繕積立金残額が約1,500万もあるのに、です。
 
これをそのまま総会に提案するのは困難と思い、各修繕項目の修繕費用や修繕周期の算出根拠について質問しましたが、簡易版は一般的なマンションの事例を基に機械的にシミュレーションしたもの、とのことで個別のマンションに関する質問や理事会での説明は行ってもらえませんでした。
 
約45万に対して約8万と、費用面では格安ですが上記に挙げた問題が生じる場合がありますので注意が必要です。

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