外国人労働者増加の推移、現状、予測

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在留資格別在留外国人数(労働者以外も含む)の推移
日本における在留外国人統計(法務省)
 
●在留資格別在留外国人数の推移
             2012年12月 2017年12月 2022年12月 2023年6月
・永住者:         62.5万  74.9万    86.3万  88.0万
・技能実習:        15.1万  27.4万    32.5万  35.8万
・技術・人文知識・国際業務:11.2万  18.9万    31.2万  34.6万
・留学:          18.1万  31.1万    30.1万  30.6万
・定住者:         16.5万  18.0万    20.7万  21.2万
・特定技能:         -     -     13.1万  17.3万
・総数:          225.0万  317.9万   307.5万  322.4万
 
・特定技能、留学生が増える
 留学生40万人計画(2033年目標)
・中長期滞在者が増える
 
●用語の定義
〇永住者(在留期間:無期限)
・法務大臣が永住を認める者
 
〇技能実習
・技能実習法の認定を受けた技能実習計画に基づいて、講習を受け、及び技能等に係る業務に従事する活動。(1号、2号、3号)
・技能実習1号の1年間と技能実習2号の2年間を合わせて、合計3年間、技能実習3号に進んだ場合は技能実習3号の2年間も合わせると合計で5年間、日本に在留することができる。
 
〇技術・人文知識・国際業務
・契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を有する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動。
・外国人材が来日して働くことで、外国人労働者が保有している専門的な知識や技術を日本へ還元することが目的の在留資格。
 
〇留学
・大学等各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動。
 
〇定住者
・法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者。
・「永住者」と違って6カ月・1年・3年・5年などの在留期限があって、期限前に必ず更新手続きをしなければならない。
・該当例としては、第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人等。
 
〇特定技能
・「特定技能1号」は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
・「特定技能2号」は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格。
・特定技能1号の5年間を満了した後は、再度特定技能1号はできないが、特定技能2号になれば、無期限で在留が可能。(ビザの更新許可申請は必要)
外国人労働者数の推移
厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ
 
1)外国人労働者数及び就業者全体に占める割合の推移
 
    外国人労働者数 就業者全体に占める割合
2010年  65.0万     1.0%
2012年  68.2万     1.1%
2014年  78.8万     1.2%
2016年  108.4万     1.7%
2018年  146.0万     2.2%
2020年  172.4万     2.6%
 
2)在留資格別外国人労働者数の推移
 
              2012年  2017年   2022年  2023年
・専門的・技術的分野    12.4万  23.8万   48.0万  59.6万
・特定活動         0.7万   2.6万   7.3万   7.2万
・技能実習         13.4万  25.8万   34.3万  41.3万
・資格外活動(留学生等)  10.8万  29.7万   33.1万  35.3万
・身分に基づく在留資格   30.9万  45.9万   59.5万  61.6万
・総数           68.2万  127.9万  182.2万  204.9万
 
※身分に基づく在留資格
・「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「永住者」「定住者」
・在留中の活動に制限がないため、様々な分野で報酬を受ける活動が可能。
〇定住者
・法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者。
・「永住者」と違って6カ月・1年・3年・5年などの在留期限があって、期限前に必ず更新手続きをしなければならない。
・該当例としては、第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人等。
 
※資格外活動
・留学生のアルバイト等
・本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内(1週28時間以内等)で、相当と認められる場合に報酬を受ける活動が許可。
 
3)産業別外国人労働者数の推移
 
              2012年  2017年   2022年  2023年
・建設業          1.3万   5.5万   11.7万  14.5万
・製造業          26.1万  38.6万   48.5万  55.2万
・情報通信業        2.6万   5.2万   7.6万   8.5万
・卸売業、小売業      7.2万   16.6万   23.8万  26.4万
・宿泊業、飲食サービス業  7.5万   15.8万   20.9万  23.4万
・教育、学習支援業     4.8万   6.5万   7.7万   8.0万
・医療、福祉        0.9万   2.2万   7.4万   9.1万
・他のサービス業      8.5万   19.0万   29.6万  32.1万
・総数           68.2万  127.9万  182.2万  204.9万
 
4)国籍別外国人労働者数の推移
 
        2012年  2017年   2022年  2023年
・中国     29.6万  37.2万   38.6万  39.8万
・フィリピン  7.3万   14.7万  20.6万  22.7万
・ベトナム   2.7万   24.0万  46.2万  51.8万
・ネパール        6.9万   11.8万  14.6万
・ブラジル   10.2万  11.7万   13.5万  13.7万
・総数     68.2万  127.9万  182.2万  204.9万
 
5)各国籍の産業別の外国人労働者数の割合
※厚生労働省「外国人雇用状況」(2020 年 10 月末現在)
 
          ベトナム 中国  フィリピン ブラジル ネパール
建設業       13.0%   3.5%  6.3%    2.9%   0.8%
製造業       36.0%   23.0%  35.6%   42.0%   12.7%
情報通信業     1.1%    8.0%  1.0%    0.6%   0.7%
卸売業、小売業   11.3%   20.5%  9.4%    4.7%   16.6%
宿泊業、飲食サービス  12.0%  14.5%  5.7%    2.4%   29.4%
教育、学習支援業  0.4%   3.9%   1.8%    0.8%   0.5%
医療・福祉     1.7%   2.0%   6.7%    1.4%   0.8%
その他サービス業  14.3%   10.3%  20.6%   35.3%   25.7%
 
〇ベトナム
・「製造業」、「建設業」をはじめとする単純労働への従事割合が非常に高く、「情報通信業」や「教育・学習支援業」の割合が低い。
・「技能実習」及び「資格外活動」の割合が多く、「専門的・技能的分野の在留資格」の割合が少ないことも影響している。
 
〇中国
・「情報通信業」や「卸売業、小売業」の割合が高く、「建設業」の割合が低い。
・「専門的・技能的分野の在留資格」の割合がやや多いことも影響している。
 
〇フィリピン
・「医療、福祉」や「製造業」の割合が高く、「情報通信業」や「宿泊業、飲食サービス業」、「教育・学習支援業」の割合が低い。
・「身分に基づく在留資格」の割合が多く、「専門的・技能的分野の在留資格」や「資格外活動」の割合が少ないことも影響している。
 
〇ブラジル
・「製造業」及び「サービス業(他に分類されないもの)」の割合が高く、その他の産業の割合は低い。
・「身分に基づく在留資格」の割合が圧倒的に多く、その他の在留資格が少ないことも影響している。
 
〇ネパール
・「宿泊業、飲食サービス業」、「サービス業(他に分類されないもの)」の割合が高く、「卸売業、小売産業」を除くその他の産業の割合は低い。
・「資格外活動」の割合が多く、その他の在留資格が少ないことも影響している。
外国人労働者受入の動向、取組の経緯<
(1)外国人労働者の受入れに当たっての課題
 
①来日前
・悪質な送出機関等の仲介
・職業・日本語・日本文化理解教育の不足
・マッチング機会の不足
 
②来日中
・人権・労働問題(過重労働、賃金未払い、旅券や銀行通帳・印鑑の没収、ハラスメント等)
・失踪、言葉の壁や文化の違いに基づくトラブル
 
③帰国後
・日本に対するネガティブ評価
・就業機会不足
 
(2)政府による取組の経緯
 
1)2018年 外国人労働者の受入れ拡大の方針
※「経済財政の基本運営と改革の基本方針」(骨太の方針)
 
〇新たな外国人材の受入れ
・中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化していることから、従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要がある。
 
2)外国人の受入れの環境整備
 
・2018年7月『外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議』を設置
  ↓
〇外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策
・外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等
・円滑なコミュニケーション・情報収集のための支援
・ライフステージ・生活シーンに応じた支援
・非常時における外国人向けのセーフティネット・支援等
・外国人材の円滑かつ適正な受入れ
・共生社会の基盤としての在留管理体制の構築
 
3)新たな在留資格(特定技能)による外国人材の受入れ
 
・深刻な人手不足と認められた14業種において、単純労働を含む業務への外国人の就労が可能となった。
・5年間に最大約34.5万人を特定技能の資格で受け入れる方針を示している。
・特定技能2号は、在留可能期間の上限がなく家族帯同も可能。
技能実習→特定技能→育成就労への流れ
(1)特定技能の概要、技能実習との比較
 
1)特定技能の概要
 
●創設の背景(2019年から実施)
・深刻化する人手不足への対応。
・生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に限り、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れる。
 
●特定産業分野(12分野)
・介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
(介護分野以外は特定技能2号でも受入れ可)
 
2)特定技能1号と2号の比較
 
●特定技能1号
〇在留期間
・1年以下。
・通算5年が上限。
〇技能水準、在留資格取得方法
・試験等で確認
・技能実習ルート、試験ルート
〇日本語能力水準
・生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認
〇家族の帯同
・不可
〇支援義務
・受入れ期間又は登録支援機関による支援の耐用
・一号特定技能外国人支援計画に基づく支援
 
●特定技能2号
〇在留期間
・3年、1年、6月
・在留期間更新の上限はなし。
〇技能水準、在留資格取得方法
・試験等で確認
・試験ルート(原則試験+実務経験)
〇日本語能力水準
・試験等での確認は不要
〇家族の帯同
・要件を満たせば可能(配偶者、子)
〇支援義務
・なし
・一号特定技能外国人支援計画に基づく支援の対象外
 
3)技能実習と特定技能の比較
 
●技能実習(団体監理型)
〇目的
・技能移転を通じた開発途上国への国際協力。
〇活動内容
・技能実習計画に基づいて、講習を受け、及び技能等に係る業務に従事する活動(1号)
・技能実習計画に基づいて技能等を要する業務に従事する活動(2号、3号) (非専門的・技術的分野)
〇在留期間
・技能実習1号:1年以内
・技能実習2号:2年以内
・技能実習3号:2年以内(合計で最長5年)
〇技能水準
・なし
〇入国時の試験
・なし
〇転職
・原則不可
 
●特定技能(1号)
〇目的
・深刻化する人手不足への対応。
〇活動内容
・相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動(専門的・技術的分野)
〇在留期間
・通算5年
〇技能水準
・相当程度の知識又は経験が必要
〇入国時の試験
・技能水準、日本語能力水準を試験等で確認
〇転職
・同一の業務区分内又は試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職可能
 
4)特定技能の義務的10の支援
 
・特定技能外国人の受入れ機関である雇用企業は、以下10項目の実施を義務付けられている。
・義務付けられた支援業務は、支援委託契約を結び、登録支援機関への委託が可能。
 
①事前ガイダンスの提供
・従事する業務内容、日本で可な活動・待遇について、各種生活支援内容について。
 
②出入国する際の送迎
・港または空港と、受入れ企業または住居間の送迎。
・出国の際は保安検査錠前まで同行。
 
③入居立上げ支援サービス
・口座開設、航空券手配・転入等の行政手続き・携帯電話・各種ライフライン開設案内等。
 
④生活オリエンテーション
・入国後に必要な生活情報の提供(少なくとも8時間以上)
・各種機関の利用方法。
 
⑤日本語学習の機会の提供
・日本語教育機関の情報提供・教育教材の提供、利用補助
・日本語講師との学習機会提供
 
⑥相談窓口の開設
・相談または苦情への対応
・生活・健康等あらゆる悩みを対応する、10か国対応のホットライン。
 
⑦日本人との交流促進支援
・孤独感を感じないよう日本企業で働く外国人同士のネットワーキングの場を提供。
 
⑧契約解除時の転職支援
・外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援。
 
⑨定期的な面談・報告
・受入企業及び1号外国人それぞれと定期的(3ヵ月に1回以上)に面談を行い、行政へ報告。
 
⑩外国人コミュニティ支援
・孤独感を感じないよう日本企業で働く外国籍人材同士のネットワーキングの場を提供。
 
(2)技能実習から育成就労への移行
 
1)制度見直しの概要
 
●概要
【外国人技能実習制度】目的:国際貢献
・外国人が最長で5年間働きながら技能を学ぶ
→実際は技能実習生が経済社会の重要な担い手となっていて、実態とかけ離れている
・原則、転職不可
  ↓ 
【育成就労制度】目的:人材確保
・基本的に3年で一定の水準に育成
・別の企業などに移る”転籍”は、1年以上働いた上で、一定の技能と日本語の能力があれば、同じ分野に限り認める。
 
(従来制度)           (見直し後)
特定実習1号(1年)         育成就労(3年)
特定実習2号(2年)          :転籍の制限緩和
 ↓(特定実習3号)(2年)      :
 ↓  ↓ 対象職種分野が不一致    ↓ 対象職種分野が原則一致
特定技能1号            特定技能1号
特定技能2号            特定技能2号
 
●国際的な人材獲得競争の激化
・近隣諸国・地域(台湾、韓国)との競争が激化。
・台湾・韓国が移動先上位に上昇、日本は相対順位が低下傾向。
・低・中熟練外国人労働者の平均月給が最も高いのは、韓国。
・台湾・韓国で、低熟練外国人労働者の受入れを拡大。
 
●懸念点
・地方からより高額賃金の都市部への転出の懸念
 
2)技能実習制度の目的と実態の乖離
 
●技能実習制度
・制度目的:人材育成を通じた技能移転による国際貢献
・実態:経済社会の担い手、国内企業等の貴重な労働力
 
●改善ポイント
・技能実習制度を発展的に解消し、人材確保及び人材育成を目的とする「育成就労制度」を創設。
・特定技能制度については、支援等の在り方の適正化を図った上で存続。
・現行の企業単独型技能実習のうち、上記と目的を異にするものの実施の意義があるものは、別形態で受入れ。
 
3)長期にわたり産業を支える人材の確保が困難
 
●技能実習制度
①対象となる職種・分野の特定技能との不連続
・技能実習2号移行対象職種(全90職種165作業)のうち、29職種・51作業は、対応する特定産業分野なし。
 
②職種が細分化
・技能実習制度の職種が細分化されているため、従事できる業務が限られる。
 
③実習終了後は「帰国」するのが制度上の原則
・制度目的から、修得させた技能を本邦内で役立てる前提とはなっておらず、実習修了後は帰国するのが制度上の原則。
・現に、技能実習生として入国した者のうち、多くは帰国してしまっている。
 
●改善ポイント
①特定技能1号水準の人材を育成するための制度に
・原則3年間の就労を通じ、特定技能1号水準の人材を育成。
・受入れ対象分野は、特定産業分野と原則一致。
・従事できる業務の範囲を特定技能の「業務区分」や関連する業務に拡大(主たる技能を定めて育成・評価) 。
※季節性のある分野において、業務の実情に応じた受入れ形態を認める。
 
②受入れ見込数を適切に設定
・人手不足の状況等を適切に把握し、有識者等からなる会議体の意見を踏まえ、受入れ対象分野、受入れ見込数等を適切に設定。
 
③外国人が地域に根付き、共生できる制度に
・日本語能力の向上方策を講じる。
・地域協議会を組織し、地方公共団体も参画して受入れ環境整備等に取り組むことで、地域への定着を図る。
 
4)外国人にとって魅力を感じにくい制度
 
●技能実習制度
①キャリアパスが不明瞭
・実習終了後は帰国が制度上の原則であるため、特定技能1号への移行等によって長期間にわたって日本で働き、キャリアアップしていくイメージが描きにくい。
・前職要件等、「技能移転」を理由とする要件が支障に。
 
②労働者としての権利保護が不十分
・技能実習生は実習中の立場として、転籍は原則不可。
・「やむを得ない事情」による転籍の範囲も不明瞭。
・転籍が制限されていることが失踪問題の原因となる場合も。
 
③不適正な送出し、受入れ、監理事例の存在
・不適正な受入れ機関や監理団体による人権侵害事案の発生等。
・送出機関による高額な手数料徴収等、送出しの適正に係る問題。
 
④失踪問題、ブローカーの介入の問題
・我が国の国民にとっても不安、改善の必要。
 
●改善ポイント
①キャリアアップの道筋を明確化
・分野や業務の連続性の強化により、特定技能への移行を見据えたキャリアアップの道筋を描くのが容易に。
・前職等に縛られないキャリア形成を可能に。
・業所管省庁によるキャリア形成プランの策定。
 
②労働者としての権利性の向上
・「やむを得ない事情がある場合」の転籍の範囲を拡大・明確化するとともに、手続を柔軟化。
・3年間一つの受入れ機関での就労が効果的であり望ましいものの、以下を要件に、同一業務区分内での本人意向による転籍を認める。
 ・同一機関での就労が1~2年(分野ごとに設定)を超えている
 ※人材育成の観点から1年とすることを目指しつつも、1年を超える場合、1年経過後は、昇給その他待遇の向上等を図る仕組みを検討する。
 ・技能検定試験基礎級等及び一定水準以上の日本語能力に係る試験への合格
 ・転籍先が、適切と認められる一定の要件を満たす。
 
③関係機関の要件等を適正化
・受入れ機関や監理団体(監理支援機関)の要件を適正化し、適切な受入れ・育成を実現。 ・原則として二国間取決め(MOC)作成国からのみ受入れを行い、悪質な送出機関を排除。送出手数料の透明化等により負担を軽減。
・外国人技能実習機構を「外国人育成就労機構」に改組、特定技能外国人への相談援助業務も行わせ、支援・保護機能等を強化。
 
④ブローカー対策を適切に
・転籍仲介状況の把握や、不法就労助長罪の法定刑の引上げによりブローカーを排除。
・当分の間、民間職業紹介事業者の関与は認めない。
 
⑤受入れ機関における人材流出等への懸念にも配慮
・転籍の際、転籍前の受入れ機関が負担した初期費用等について、正当な補填がなされるようにする。
・分野別協議会による過度の引き抜き防止のための取組を促進
外国人労働者受入れの将来的課題
2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた取り組み調査・研究報告書 – JICA緒方研究所
 
(1)国の取組の背景・経緯
 
●出入国政策(外国人の出入国に関する政策)
・専門職や熟練労働に就く外国人は積極的に受入れるが、非熟練労働に就く外国人は、日系人など一定の身分や地位を有する者として在留を認める場合を除き、受け入れないというスタンスが長く続いた。
 
●社会統合政策(入国した外国人の社会への定着に関する政策)
・長い間個別の課題に関する対策はあっても、社会統合という観点に立った政策は存在せず、いったん入国した外国人の社会統合にかかわる問題は、地方自治体の福祉政策に依存するというのが実態であった。
 
(2)日本の移民統合スコア
 
1)移民統合政策指数(Migrant Integration Policy Index: MIPEX)の概要
 
・8つの政策分野(労働市場、家族呼寄せ、教育、政治参加、永住、国籍取得、反差別、保健)について、各々の指標について制度上移民と自国民との待遇が平等であるかどうかを評価。
 
・MIPEXは、欧州においては、政策立案者、NPO、リサーチャー等の間では移民統合のための共通のガイドラインとして位置づけられており、各国の統合政策の比較だけではなく、自国民との不平等な扱いを改善するための基準としても使用されている。
 
・MIPEX2020によれば、総合的な評価では、スウェーデンが1位(86点)となり、フィンランドが2位(85点)、ポルトガルが3位(81点)となっている。カナダ4位(80点)、ニュージーランド5位(77点)、アメリカ6位(73点)となっている。アジアでは、韓国が20位(56点)で最も高く、日本は全体のなかで中の少し下位に位置し35位(47点)である。
 
2)評価方法
 
・具体的な評価方法は、各国の移民統合政策を対象に、8つの政策分野(労働市場、家族呼び寄せ、教育、保健、政治参加、永住、国籍取得、反差別)について、167の政策指標を設け、数値化している。
・数値化の作業は、各国の移民政策研究者が協力して行っている。
・各国の移民政策研究者は167の政策指標に即した質問項目に、移民の待遇に関する自国民と比較した平等性の度合いに応じて3択で回答し、100点、50点、0点を付ける。最も高い100点は最も高いスタンダードで平等な待遇を実現していることを意味する。
 
3)日本の評価
 
●全体スコア
・日本の全体スコアは 47点であり、対象国全体の平均50より少し下位に位置しているが、MIPEX によればこれは日本政府が、自国が移民国であることを公に認めないことに起因していると指摘されている。
・MIPEX2020では日本における移民の社会統合へのアプローチは「統合なき移民受入れ」と分類されている。
・日本はこのカテゴリーの他の国と比較すればかなり高い位置づけであるが、日本の政策はいまだに新たに受け入れた外国人に対して基本的な権利や自国民と平等な機会を拒否していると指摘されている。
 
●各分野の具体的な評価
〇労働市場:59点-不完全であるが比較的有利(Halfway favourable)
・日本の政策は永住者を市民と平等に扱い、派遣労働者が基本的な単純労働に従事することを可能にするが包括的な統合戦略を持つ国と比較すると、正規労働者への支援が十分ではない。
 
〇家族呼寄せ:62点-少し有利(Slightly favourable)
・多くの外国人は親しい家族の呼寄せを申請する資格があるが、これらの家族は、自律的な居住許可を受ける権利を含め、十分な権利を有していない。
 
〇教育:33点-少し不利(Slightly unfavourable)
・外国人の生徒が少ない他の国と同様に、教師、生徒、親は、カリキュラムと実際の教育を通じて、彼らのニーズに合致した異文化教育にかかるサービスが十分受けられていない。
 
〇保健:65点-少し有利(Slightly favourable)
・日本の医療制度は、合法的な移民や亡命希望者を対象として必要な情報と支援を提供するため、平均的な MIPEX 国よりも有利である。
 
〇政治参加;30点-少し不利(Slightly unfavourable)
・伝統的な移民国及び新規移民国(例えば韓国)双方の統合戦略の一部となっている政治参加政策は、日本ではやや弱いままである。
・日本では外国人は参政権がなく、一部の自治体で定住外国人に住民投票権が認められているだけである。
 
〇永住:63点-少し有利(Slightly favourable)
・伝統的な移住国やヨーロッパ諸国におけるほとんどの新規移民者は、日本よりも短い期間で永住権を取得することができる。
・日本の新参者の永住権取得への道は長く(10年)、主に経済的要件を満たす必要がある。
・日本の永住者は、いくつかの重要な分野において、比較的安全な地位と平等な権利を享受している。
 
〇国籍:47点-不完全であるが比較的有利(Halfway favourable)
・外国人は平均的なMIPEX国と同様の帰化要件を必要とされているが、日本は帰化した成人とその子どもの市民権のために二重国籍取得に向けた国際的な改革の流れに対していまだに積極的ではない。
 
〇反差別:16点-不利(unfavourable)
・日本においては行政の取組の根拠法令としての差別禁止法が制定されていない。
 
●指摘事項
・外国人は日本において長期間滞在することができるが、日本の政策は彼らに対して平等な機会(例えば保健・教育分野)を保証し、差別から保護するという点においてはまだ不十分であるとして、3 つの次元(基本的権利、平等な機会、安定した未来)にさらに社会的な投資を行うとともに特に移民が自国民と同様な権利を保証されるようにする必要があると指摘している。
 
・一方で、日本における外国人居住者は、家族の呼寄せ、永住、及び保健サービスに関して比較的アクセスが良好であることも指摘されている。
 
・しかしながら、日本における外国人とその子どもたちは依然として教育、政治参加、反差別に大きな障害を抱えているとされている。
 移民の子どもたちは、移民の生徒数が少ない他の国の状況と同様に、日本の教育システムでほとんどターゲットを絞った支援を受けておらず、依然として差別禁止法や関連機関を持たない MIPEX 国の一つである。
 
・日本は、他の「統合のない移民」国とともに、反差別政策の下位3カ国に位置づけられている。
 
・日本のアプローチは、同じように規模が小さく、新しい移民人口を持つ所得が低い中央ヨーロッパ諸国をわずかに上回っているが、韓国(総合56点)を含む他の先進諸国より下位に位置づけられている。  隣国の韓国と比較すると、日本の外国人は労働市場、教育、政治参加における統合政策のスコアが低い。
 
(3)国の施策の将来的課題
 
1)基本的人権・社会参画
 
①反差別意識醸成・人権教育
・反差別法等の法整備がなされておらず、社会全体における人権意識が必ずしも高いとはいえない状況。
・学校教育の中でも外国人との共生に対する理解を深め偏見・差別の低減を目指した人権教育も十分推進されていない。
 
②ビジネスと人権
・欧米諸国に比べてビジネスと人権に関する意識啓発は未だ十分醸成されていないのが実態。
・技能実習制度については従来から低賃金や劣悪な実習環境等の問題が指摘されており、適正化に向けた取組が進められてきたが、依然として労働関係法違反の不正行為事案があることから制度の更なる適正化に向けた取組の強化が必要。
 
2)就労支援
 
①長期定住者の雇用の安定のための環境整備
・日系ブラジル人等が多い「身分に基づく在留資格」では、原則として従事できる業種や在留期間の制限がなく、職業選択の上では自由度は高い。
 一方で、派遣・請負事業所等の間接的な雇用形態で就労している外国人労働者が多く、リーマンショックや新型コロナ感染拡大などの不況時には、真っ先に雇用が切られるなど、不安定な雇用状況にある。
 よって、かかる長期定住者の雇用を安定化させるためのスキルアップ等の環境を整備することは就労支援において重要な課題。
 
②留学生の就労支援
・日本で就職を希望する留学生の多くは就職できない実態がある。
・大学・ハローワーク・企業間の連携強化を含めて、幅広い対策を講ずることが必要であり、国としては留学生の就労を促進する環境整備を行う必要がある。
 
③ハローワークの支援体制強化
・ハローワークにおける相談対応の多言語化を図り、彼らのスキルやバックグラウンドに応じたきめ細かな相談体制を整備する必要がある。
 
3)生活支援
 
①無償での日本語教育及び生活オリエンテーションプログラム
・社会統合政策が充実した諸外国の例を見ると、語学学習は受入れ国の文化・社会習慣等のオリエンテーションとともに3 ~ 6カ月の期間をかけて無償で提供されている。
・かかる取組を行うにあたっては、外国人の来日間もない時期において、日本語のレベルを評価し、レベルに応じた学習ができ、終了後は一定のレベルに達するようなプログラムを構築する必要がある。
 
②ライフステージに応じた支援環境の整備
・現状においても国は主に定住・永住外国人やその家族を対象に「乳幼児期」「学齢期」「青壮年期」「老齢期」等のライフステージごとに一定の支援を行っているが、今後長期滞在者が増えていけば更なる取組が必要になってくる。
・特に、妊娠・出産・子育て・就学・進学・就職等のライフステージにおける節目での支援が重要になる。
・高齢期に入る外国人が増加する中でかかる外国人に焦点を当てた取組がほとんど見られない状況である。
・国としてもライフステージに応じた支援に必要な実態やニーズ把握を行い、適切な環境を整備する必要がある。
2040年労働需給予測
(1)2040年 労働需給シミュレーション(リクルートワークス研究所)
 
未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる|Works Report|リクルートワークス研究所
 
●シミュレーションモデルの概要
・日本社会における労働の需要と供給が今後2040年に向かってどのように向かっていくのかシミュレーションモデルの構築を試みたもの。
・このシナリオは”ほとんど経済成長しない日本”を前提としている。
→経済成長する場合にはより多くの労働需要が生じる。
 
●全体の需給推移
         2022年  2030年  2040年
・労働の供給量  6,587万 6,337万  5,767万
・供給不足     0   -342万  -1,100万
 
〇労働需要
・今後もほぼ横ばいで推移。
・人口が減少しても労働需要が減少しない背景には、2040年までの日本社会においては高齢人口が減少しないことがある(高齢人口のピークは2042年と推定されている)。
・高齢人口は、医療・福祉業や物流業、小売業など人手を介する生活維持サービスへの依存度が高く、こうした業種に従事する職種を中心に労働の消費量は今後も増加する可能性が高い。
 
(2)2040年 労働市場ギャップ推計、来日外国人労働者数の推計(JICA)
 
2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた取り組み調査・研究報告書 – JICA緒方研究所
 
詳細は以下を参照。
7.(参考)労働市場ギャップ推計
 
1)前提条件等
 
●目標GDPの設定
      年平均成長率  2015年のGDP 2040年のGDP
中位ケース  1.24%      517兆円  704兆円
 
●資本ストックの推計
・企業が自動化等への設備投資を促進した場合の資本ストックの将来値を設定。
・イノベーション等を反映して推計。
・労働供給量と「代替」「補完」関係にある。
 
〇資本ストックのベースラインの推計
・1995~2015年までのこれまでの資本ストックのトレンド(対前年増加率約5%増)が、2040年まで継続すると想定。
 
〇自動化進展シナリオ
・これまでのトレンドを参考に中位ケースを設定し、中位ケースの増加率(2015年→2040年)の±10% pt. で高位、低位ケースを設定。
・中位ケースでは、将来の資本ストックを、2001年のITバブル崩壊後からリーマンショック前の2007年までの間で最も資本ストックが増加した期間のトレンド(2004~2007年:年平均約1.0%増)が、2040年まで継続すると想定
         2015年  2040年
ベースライン   644兆円  733兆円
自動化進展:中位 644兆円  844兆円
自動化進展:高位 644兆円  908兆円
自動化進展:低位 644兆円  780兆円
 
2)推計結果
 
①目標GDP達成のための労働力人口、労働市場ギャップ
         2030年の労働力人口:ギャップ   2040年
・自動化進展なし 7,899万
・自動化進展低位 7,045万:689万         7,231万:1,378万
・自動化進展中位 6,625万:269万         6,390万:538万
・自動化進展高位 6,356万: 0          5,853万: 0
 
②目標GDP達成に必要な外国人労働者数
・目標GDP達成における労働市場ギャップを埋めるために必要な外国人労働者数の推計
         2030年   2040年
・自動化進展なし 1,179万  2,183万
・自動化進展低位 840万   1,515万
・自動化進展中位 419万    674万
 
③目標GDP到達に必要な外国人労働者を確保できるかどうかの推計
               2030年  2040年
外国人労働需要量       419万   674万
外国人労働供給ポテンシャル  356万   632万
不足数            63万    42万
 
※外国人労働供給ポテンシャルについての詳細は以下を参照。
8.(参考)来日外国人労働者数の推計
 
・現行の受入れ方式では、目標GDP到達に必要な労働者数を確保できない(供給ポテンシャルが不足する)
・外国人労働者の滞在期間の長期化などの需要に見合った供給を検討する必要があることが示唆される
2040年労働需給予測(産業別)
(1)2040年までの労働需給シミュレーション(職種別)
 
未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる|Works Report|リクルートワークス研究所
 
1)輸送・機械運転・運搬(ドライバー)
         2030年   2040年
・労働需要    409.0万   413.2万
・供給不足    -37.9万  -99.8万
・不足率           24.2%
 
2)建設
         2030年   2040年
・労働需要    289.8万   298.9万
・供給不足    -22.3万  -65.7万
・不足率           22.0%
 
・道路のメンテナンスや災害後の復旧に手が行き届かず、重大な事故の発生や崩落したままにせざるを得なくなる可能性がある。
 
3)生産工程
         2030年   2040年
・労働需要    834.7万   845.0万
・供給不足    -22.1万  -112.4万
・不足率           13.3%
 
・不足率は13.3%で、比較的労働力が足りている職種といえるが、不足しているのは確かで、海外から生産拠点を戻したり、新規に大規模な生産工場を建設したりする際には労働力の確保がボトルネックとなり断念せざるを得ないかもしれない。
 
4)商品販売
         2030年   2040年
・労働需要    438.8万   438.5万
・供給不足    -40.2万  -108.9万
・不足率           24.8%
 
5)介護サービス
         2030年   2040年
・労働需要    199.0万   229.7万
・供給不足    -21.0万  -58.0万
・不足率           25.3%
 
6)接客給仕・飲食物調理
         2030年   2040年
・労働需要    365.2万   374.8万
・供給不足    -17.9万  -56.6万
・不足率           15.1%
 
7)保健医療専門職
         2030年   2040年
・労働需要    410.0万   467.6万
・供給不足    +21.3万  -157万
・不足率           17.5%
 
8)事務、技術者、専門職
         2030年   2040年
・労働需要    2,227万   2,290万
・供給不足    -18.6万  -81.6万
・不足率           6.8%
 
(2)産業別外国人労働者数の推計(JICA)
 
2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた取り組み調査・研究報告書 – JICA緒方研究所
 
●産業別の外国人労働者数の推計結果(万人)
 
               2020年実績  2030年  2040年
農業・林業             3.8   5.0   5.0
建設業               11.1  27.8   49.8
製造業               48.2  101.4   155.3
情報通信業             7.1   17.1   28.4
運輸業、郵便業           6.2   26.7   47.0
卸売業、小売業           23.2  62.4   104.3
学術研究、専門・技術サービス業   5.8   18.1   33.4
宿泊業、飲食サービス業       20.3  39.4   55.9
教育、学習支援業          7.2   11.6   16.7
医療・福祉             4.3   9.7   16.1
その他サービス業          27.7  81.8   125.0
 
(3)外国人労働者依存度(ニッセイ基礎研究所)
 
将来人口推計に基づく2070年の外国人労働者依存度について-産業別の推計
 
●推計方法
・外国人労働者依存度=外国人労働者数/就業者数
・各産業における就業者数および外国人労働者数を、それぞれ「15~64歳」人口伸び率で延伸。
・労働参加率の変化や産業構造の転換、直近の政策変更(特定技能2号)などの影響は織り込まれていない。
 
●推計結果
               2022年実績  2070年
農業・林業                 10.5%
建設業                   10.7%
製造業              4.6%   20.9%
情報通信業            2.7%   12.5%
運輸業、郵便業               8.6%
卸売業、小売業               10.3%
学術研究、専門・技術サービス業  2.6%   11.7%
宿泊業、飲食サービス業      5.4%   24.4%
教育、学習支援業              9.7%
医療・福祉                 3.7%
その他サービス業         6.3%   28.5%
産業計              2.7%   12.3%
(参考)労働市場ギャップ推計
2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた取り組み調査・研究報告書 – JICA緒方研究所
 
(1)労働市場ギャップの推計手順
 
①労働供給量の算出(GDPの供給要因)
・少子化や失業率を想定して将来のGDPの生産要素としての労働供給量を現状趨勢(トレンド)で数値を設定。
 
②技術進歩、資本ストックを推計(GDPの供給要因)
・労働以外のGDPの生産要素である「資本ストック」「技術進歩」の将来値を設定。
・イノベーション等を反映して推計。
・上記①の労働供給量と「代替」「補完」関係にある。
 
③公共投資、消費性向等を設定(GDPの需要要因)
 
④上記①~③からトレンドのGDP(将来の実現可能GDP)をマクロ計量モデルで推計
 
⑤目標GDPとのギャップの把握→労働需要量の推計
・上記④の実現可能GDPと目標GDPを比較してギャップを推計し、そこから労働市場のギャップ(≒外国人受け入れ人数等)を推計
 
⑥労働市場のギャップから労働供給量の再設定
・上記⑤から外国人の受入人数を加算して、労働供給量を再度設定して、実現可能なGDP を推計し、これを繰り返し行うことで複数の可能性をアウトプットする。
 
(2)実現可能なGDPの推計方法:マクロ計量モデルでの推計
 
・GDPの需要サイドと供給サイドの両面からGDPギャップが算出され、このGDPの需給ギャップから長期金利等を経由してGDPの需給が調整され、実現可能なGDPが出力される。
 
●需要側
・民間投資、住宅投資、設備投資
・政府消費、政府投資
・輸出、輸入
 
●供給側
・TFP(全要素生産性、Total Factor Productivity):技術進歩や生産効率化など
・労働力人口
・資本ストック
 
(3)目標GDPの設定
 
・政府が示している経済シナリオを参照して中位ケースを設定し、中位ケースよりも野心的な経済シナリオを高位ケース、中位ケースよりも低成長な経済シナリオを低位ケースとして設定する。
      年平均成長率  2015年のGDP 2040年のGDP
中位ケース  1.24%      517兆円  704兆円
高位ケース  2.00%      517兆円  849兆円
低位ケース  1.00%      517兆円  663兆円
 
(4)労働供給量の算出
 
・これまでの人口動態や労働参加率を考慮した労働政策研究・研修機構「労働力需給の推計」における労働力人口を設定。
 
・2015年:6,632万
・2020年:6,697万
・2025年:6,559万
・2030年:6,356万
・2035年:6,118万
・2040年:5,853万
 
(5)資本ストックの推計
 
・企業が自動化等への設備投資を促進した場合の資本ストックの将来値を設定。
 
〇ベースラインの推計
・1995~2015年までのこれまでの資本ストックのトレンド(対前年増加率約5%増)が、2040年まで継続すると想定。
 
〇自動化進展シナリオ
・労働力人口は、ベースラインと同じ設定値を用いる
・これまでのトレンドを参考に中位ケースを設定し、中位ケースの増加率(2015年→2040年)の±10% pt. で高位、低位ケースを設定。
・中位ケースでは、将来の資本ストックを、2001年のITバブル崩壊後からリーマンショック前の2007年までの間で最も資本ストックが増加した期間のトレンド(2004~2007年:年平均約1.0%増)が、2040年まで継続すると想定
 
         2015年  2040年
ベースライン   644兆円  733兆円
自動化進展:中位 644兆円  844兆円
自動化進展:高位 644兆円  908兆円
自動化進展:低位 644兆円  780兆円
 
(6)需給ギャップの推計結果
 
1)目標GDP中位ケースの場合
 
①GDP需給ギャップ
       2040年目標GDP 実質GDP ギャップ
ベースライン  704兆円   648兆円  56兆円
自動化中位   704兆円   685兆円  19兆円
自動化高位   704兆円   706兆円  解消
自動化低位   704兆円   664兆円  40兆円
 
②目標GDP達成のための労働力人口、労働市場ギャップ
         2030年の労働力人口:ギャップ   2040年
・自動化進展なし 7,899万
・自動化進展低位 7,045万:689万         7,231万:1,378万
・自動化進展中位 6,625万:269万         6,390万:538万
・自動化進展高位 6,356万: 0          5,853万: 0
 
●労働市場ギャップの内訳
・上記②の労働市場ギャップの一部は、目標GDP達成による経済成長に伴い日本人の労働参加が進展(労働力率が上昇)することで解消されるため、外国人受け入れによる対応が必要な労働量は、以下となる。
 
自動化進展中位ケース     2030年  2040年
 日本国内で対応可能な労働量 22万   36万
 外国人受入れが必要な労働量 247万   502万
 合計            269万   538万
 
③外国人労働需要量
・ベースラインでの外国人労働者数に、目標GDP達成における労働市場ギャップを埋めるために必要な追加的な外国人労働者数を加算して求める。
 
〇ベースラインでの外国人労働者数
・以下の2020年の実績値より172.4万
    外国人労働者数 就業者全体に占める割合
2010年  65.0万     1.0%
2012年  68.2万     1.1%
2014年  78.8万     1.2%
2016年  108.4万     1.7%
2018年  146.0万     2.2%
2020年  172.4万     2.6%
 
〇外国人労働需要量
      ベースライン 上記②の労働市場ギャップの外国人分  外国人労働量
・2030年  172万     247万                 419万
・2040年  172万     502万                 674万
(参考)来日外国人労働者数の推計
2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた取り組み調査・研究報告書 – JICA緒方研究所
 
(1)推計方法
 
1)推計の全体構造
 
・来日外国人労働者数(供給ポテンシャル)の推計は、「主要な送り出し国からの外国人労働者数」の推計と「その他の国からの外国人労働者数」の推計に分けて行う。
 
●「その他の国からの外国人労働者数」の推計
・来日外国人労働者数の過去のトレンドを延長して推計する。
 
●「主要な送り出し国からの外国人労働者数」の推計
・送り出し国の経済と来日外国人労働者数との関係を詳細に分析した上で推計する。
 
〇主要な送り出し国
・以下の13か国。来日外国人労働者数(総フロー)の約7割。
 東南アジア:カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム
 南アジア:バングラデシュ、インド、ネパール、パキスタン、スリランカ
 スリランカ:中国
 
2)推計の対象
 
・「就労可能な資格」で来日する外国人数(=外国人労働供給の潜在量)を推計する。
・これらの外国人は来日後に必ずしも就労するとは限らないことから、本推計で出される値は「日本で就労している外国人数」ではなく、「日本で就労する可能性のある外国人数」(外国人労働供給の潜在量)である。
 
〇就労可能な資格
①「専門的・技術的分野の在留資格」
②「技能実習」
③「身分に基づく在留資格」
④「留学」で来日後に日本で就職する(就労可能な資格に切り替える)
 
〇本推計対象の就労可能な資格による来日外国人労働者数の実績値
       2012年  2015年  2017年  2019年
専門・技術  10万   10万   13万   17万
技能実習   7万    8万   13万   19万
身分     2万    2万   3万    3万
留学生    1万    2万   2万    3万
合計     20万   22万   30万   42万
 
3)主要な送り出し国からの来日外国人労働者数の推計手順
 
①来日外国人労働者数(総フロー)の推計
・主要な送り出し国の「出移民率」と「出移民に占める日本向けの割合」を、過去のトレンド及び将来の経済成長を考慮して推計し算出する。
 
②来日外国人労働者数(純フロー)の推計
・上記①の総フローのうち滞在期間別に帰国する割合(帰国ハザード)を推定し、各年の帰国者数を推計することで算出する。
 
③来日外国人労働者数(将来ストック)の推計
・上記②の純フローと「外国人労働者数(現在ストック)」から、将来人口推計の手法により算出する。
・上記算出において、外国人労働者ストックの自然減(死亡)や年齢変動(高齢者になることによる労働市場からの退出)を考慮する。
 
(2)推定結果
 
1)来日外国人労働者数(総フロー)の推計結果
 
       2019年    2030年    2040年
ベトナム   12.5万(30%) 24.0万(32%)  24.4万(24%)
ミャンマー  1.0万(%)   9.1万(12%)  16.5万(17%)
カンボジア  0.6万(%)   5.5万(%)   13.1万(13%)
フィリピン  3.1万(7%)  6.1万(8%)   5.1万(%)
中国     8.2万(19%)  3.6万(%)   2.5万(%)
合計     42万     76万     100万
 
2)帰国ハザードの推定
 
・出入国管理統計のデータを用いて、来日外国人が滞在期間別(1年後、2年後、・・・)に帰国する割合(帰国ハザード)を推定する。
・各年次の日本での滞在期間別の出国者のうち、短期滞在者を除く値から算出する。
 
①現行シナリオ(直近のデータから帰国ハザードを設定)の場合の推定
・直近のデータ(2008-19年)から算出した滞在期間別の帰国ハザードを設定。
 
②滞在期間長期化シナリオ
・過去(技能実習導入前)のデータから最小の帰国ハザードを設定
・上記の現行シナリオでは、3年目、5年目の帰国ハザードが高くなっている。これは技能実習による帰国の影響が大きいと想定される。
・5年目の帰国ハザードを、1997-2006年の10年間(在留資格「技能実習」導入前で、5年目の帰国ハザードの最も低かった時期)の平均とし、3年目の帰国ハザードを2年目と5年目の線形補間とする。
 
〇推定の設定値
       入国から3年後の残存率 5年後  10年後
現行シナリオ       37.7%   31.0%  26.6%
滞在期間長期化シナリオ  49.2%   45.3%  41.6%
 
3)来日外国人労働者数(純フロー)の推計結果
 
・上記1)で推計した総フローに上記2)で推定した帰国ハザードを掛けることで、各年の帰国者数を推計。
→総フローから帰国者数を差し引くことで来日外国人労働者数(純フロー)を推計。
 
       入国から3年後の残存率 5年後  10年後
現行シナリオ       37.7%   31.0%  26.6%
滞在期間長期化シナリオ  49.2%   45.3%  41.6%
 
            2019年    2030年    2040年
現行シナリオ      20万     26万     29万
滞在期間長期化シナリオ 20万     36万     43万
 
4)来日外国人労働者数(将来ストック)の推計
 
●将来ストックの総数
 
             2030年    2040年
現行シナリオ       356万     632万
滞在期間長期化シナリオ  409万     810万
 
●国籍別の構成
 
       2020年    2030年    2040年
ベトナム   (23%)   107.6万(30%)  177.8万(28%)
ミャンマー  (%)    26.7万(%)    79.1万(12%)
カンボジア  (%)    15.7万(%)    55.1万(9%)
フィリピン  (14%)   35.1万(10%)   47.0万(%)
中国     (24%)   42.5万(12%)   43.0万(%)
合計           356万      632万
 
5)中国と外国人労働者獲得において競合する可能性について
 
・本推計では、将来における中国等との競合関係の変化(中国による政策的な移民獲得の強化等)による影響は考慮していない。
・しかし、今後、中国において少子高齢化の進行に伴い国内労働力需給が逼迫する可能性があること、また、特に沿岸部を中心に経済発展に伴い外国人労働者の受入れが進む可能性があることを考慮すると、中国との間で外国人労働者の獲得競争が起きることが考えられる。
・本推計では考慮していない上記の要素の影響により、将来の我が国における外国人労働者の確保が困難になる恐れがあると言える。
 
(3)外国人労働者の需給ギャップ
 
               2030年    2040年
外国人労働需要量       419万     674万
外国人労働供給ポテンシャル  356万     632万
(現行方式の場合)
需給ギャップ         63万人不足  42万人不足
 
※滞在期間長期化シナリオの場合の労働供給ポテンシャル
 2030年:409万  2040年:810万
 
●ギャップ解消に必要な外国人労働者の受入れ方式
・現行の受入れ方式では、目標GDP到達に必要な労働者数を確保できない(供給ポテンシャルが不足する)
・外国人労働者の滞在期間の長期化などの需要に見合った供給を検討する必要があることが示唆される。

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