マンションの給排水管の更正・更新工事の概要

マンションの給水、排水配管の改修の概要、配管の更正・更新に関する技術情報をまとめました。
 
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給排水管改修工事の注意点
1)更新と更正
 
・管を取り替える(更新)工事ではなく、今の管を延命させる更正工事という手法もある。
 代表的なものはライニング工法で、管の内面を樹脂コーティングし、錆などによる劣化を防ぐ工法。
・更正工法は、管を取り替える場合と比べて最小限の工事で済むので、工事日数が少なく、費用も低減できるメリットがある。
 
●給水管、給湯管、排水管の優先順位
 
・配管の材質、水質などによって異なる。劣化診断によって判断。
・多くの場合、劣化が進んだ管から優先順位をつけて行うが、同じ場所に優先順位の低い管もある場合は、同時に工事することも検討する。
 
2)専有部と共有部
 
・配管について、管理規約に共用部分と専有部分の切り分けに関して明記されている。
・床下でスラブの上にある管は、基本的には専有部分で、その改修や漏水の責任は区分所有者となる。
 上の階の配管がスラブを貫通し、下の階の天井内にある場合は、共有部分とみなし組合での工事となる場合が多い。
・排水管は共用部分である立て管と専有部分である枝管の切り分けが難しく、同時に改修する場合もある。
・共用部分と専有部分の工事を一緒に行う場合は、規約上可能となっているか確認する必要がある。
 費用が原則、各戸負担で、組合で負担する場合には、規約改正が必要となる場合がある。すでに自分で専有部分の管を交換している場合についても考慮する必要がある。
 
●専有部内の工事
 
・専有部配管の更新をするためには、床をはがす、キッチン・ユニットバスを外すなどの大掛かりな工事が必要。
・共用立て配管の配管スペースに余裕がない場合等は、廊下等への露出配管になったりもする。
 
3)工事中の注意点
 
・朝9時~夕方5時など長時間に及ぶ断水や排水制限がある。
・排水立て管の改修では、立て管系統全てを連続して工事するので、入居者の在宅や代理立会いの確保などの調整が必要。
 
4)給水管・排水管の防露被覆工法
 
・保温材を被覆していた給水管を改修する際、耐久性能の高い高密度ポリエチレン管を給水立て管に使用する場合、防露被覆を設けなくても可能な場合がある。
・共用部の既存の硬質塩ビライニング鋼管を高密度ポリエチレン管に更新する場合、保温材を設けない事によってコスト低減がはかれる。
・樹脂管の場合、紫外線を避ける必要があり、屋外では露出配管とする事はできない。また、使用圧力に制限がある。
給水管改修の概要
●屋外給水管
・内部腐食だけでなく外部腐食が進行していることがあるため、原則として更新工事。
・外面が亜鉛メッキされた塩ビライニング鋼管や外面防食ライニング鋼管、ステンレス管等の耐食管に取替える。
・バルブ類はコーティング製やコア内蔵バルブ等の赤水対策品に取替える。
・給水管の保温材の劣化腐食を防止するため鉄板ラッギング材をステンレス製に取替えることも考えられる。
 
●屋外埋設管
・電位差腐食、電気的腐食、バクテリア腐食等を防ぎ耐久性を高めるために、内外面防食管(内外面塩化ビニルライニング鋼管等)や耐食管(ステンレス管、高密度ポリエチレン管、耐衝撃塩化ビニル管等)に取替える。
・耐食性、耐震性に優れるポリエチレン管の採用が多い。
・耐震仕様の給水鋳鉄管に取替えることも考えられる。
・継手は内外面防食継手、弁類はコーティングバルブや埋設用バルブに取替える。
 
●住棟内共用給水管(1階床下、パイプスペース内配管)
・給水管とバルブ・減圧弁・量水器等との接続部は異種金属配管となり、局所的に錆の付着や腐食が生じやすいため、給水系統はバルブ・弁類を含めた全体を取替える。
 
●給水配管の高耐久仕様への変更
・既存の給水配管を改修する場合、硬質塩ビライニング鋼管の使用例が多い。
・共用部には高耐久性のステンレス管、専有部にはポリプテン管や架橋ポリエチレン管等の樹脂管に変更して、耐久性を向上させる事ができる。
 
●メーターボックス給水管の更新
・継手の削減、作業性の向上を目的にフレキシブル管も増えてきた。
 
2)専有部給水管改修工事の事例
 
●更生or更新
・全戸一斉に組合工事として行う場合、専有部分の工事は更生工法のことが多く、更新を希望する住戸はオプション工事としている。
・給水管の腐食がひどく更新工法とする場合、組合工事としては露出配管が標準で、隠蔽配管を希望する住戸は、オプション工事とする事例が多い。
 
●樹脂管で更新
・樹脂管と差し込み式継手により専有部の改修も容易になってきた。
・樹脂管は軽量で可撓性があるため、小さな開口で作業ができる。
排水管改修の概要
(1)排水管改修の概要
 
・配管用炭素鋼鋼管が使われている場合の改修、塩化ビニル管の破損による改修などがある。
・塩化ビニル管が使われている場合でも、区画貫通部(コンクリート躯体貫通部)については、配管用炭素鋼鋼管等を使用している場合があり、その部分で錆、腐食が発生し漏水に至るケースも見られる。
・更新工事が大半だが、雑排水管では配管の残存肉厚があれば、更生工事(ライニング工法等)も考えられる。
・屋外排水管では、一斉取替えと事故修繕とが考えられる。配管の材質にもよるが経年による傷みよりも、事故によるものが多い。
・屋外埋設管の勾配不良・地盤沈下による漏水は事故修繕、又は、年次計画による修繕が一般的。
・汚水管、汚水ポンプ、汚水桝等も計画的に交換する。
・排水管の更新工事では、管及び継手を最新の材質のものへとグレードアップすることや、排水能力を高めることがポイント。
・排水システムの変更も検討事項となる。
 
(2)専有部の排水管改修の注意点
 
〇埋設配管
・水まわり等、シンダーコンクリートに埋設される配管類には、熱伸縮や腐食に対応する被覆を付して埋設する。
 
〇排水管の勾配
・台所、洗面所、選択パン、浴室、便所の排水横引管を更新する場合は、原則として1/50以上の勾配を確保する。
 
〇ユニットバスまたぎ配管の改修
・老朽化した排水管がユニットバスの真下を横断し、立管に接続されている場合は、ユニットバスを解体しないと排水管を更新できない。
→ユニットバス真下部分の配管部分に対する接続口を設けた上で、真下部分以外の排水管を交換するなどの対応をする。
 
(3)排水管の改良
 
1)排水管のサイズアップ等により排水能力を高める
 
・排水能力を高めるために、口径の大きい配管に取替えて、通気性能を改善する。
・床下横主管の口径は、立て管口径以上とする。
・立て管の口径サイズは、接続枝管サイズより2サイズ以上とする。
・立て管から横主管へ排水が流れる時に起きるジャンピング現象による通気障害を避けるため、立て管から横主管の第一継手までの距離を2000㎜以上離して配管する。
 
2)通気管のサイズアップにより排水能力を高める
 
・通気不足による排水能力の改善のために、通気立て管の口径を排水立て管口径以上とし、通気を確保する。
 
3)排水管の清掃口を新設・増設
 
・台所・浴室・洗面所等の排水管は、付着物による詰まり、管内腐食による漏水事故の危険があるため、雑排水管では定期的な清掃が必要となる。
・清掃口が設置されていない場合や不足する場合には、新設・増設を行う。
 
4)排水システムを変更
 
●高経年マンションの排水システム
・通気立て管を併設した住棟内分流(汚水と雑排水が別配管)システムとなっているところが多い。
・住戸内を通る共用排水立て管は、汚水立て管、浴室・洗面・洗濯系雑排水立て管、台所系排水立て管と通気立て管等に別れ、それぞれパイプシャフト内に配管されているのが一般的。
 
●最近のマンション(特に高層マンション)
・排水用特殊継手を採用し、通気性能を高めた特殊継手排水システム(排水立て管の管内壁周囲に排水を旋回流として流し、立て管の芯を通気層として排水する方式)が主流。
・上記のような合流方式の排水システムへと変更することにより、排水通気性能をアップさせ、排水立て管、通気管の本数を減らすことが可能となる。
・専有部分の汚水と雑排水は合流方式とすることができないので、別の配管経路で行う分流方式とする必要がある。
※専有枝管が合流配管となっていると、詰まった時に汚水が洗濯機パンなどに逆流する危険性があるため。
 
5)1階住戸の排水系統を別系統とし排水能力を高める
 
・1階住戸の排水横管は上階の住戸に比べて排水勾配が十分にとれないことがある。
→立て管に接続せず、別系統の単独排水として直接汚水枡に接続することで、排水能力を高めることが考えられる。
給排水管の更正工法
給排水管の更新工法
(1)給水管の更新
 
・旧式の配管を耐久性に優れた材質の配管に取替え。
・給水管に用いられる材質は、経年とともに、赤水対策が講じられるようになってきており、管の防食性能や耐久性が向上してきている。
・共用部には高耐久性のステンレス管、専有部にはポリプテン管や架橋ポリエチレン管等の樹脂管に変更して、耐久性を向上させる事ができる。
・配管の防音・防震対策も検討事項となる。
 
・専有部内の配管、新設配管の配管スペースが施工可能な場所にあるかどうかが問題。
→既存配管を撤去してそのスペースに新設配管を敷設するためには、断水時間が長くなり、居住者への負担が大きくなる。
→露出配管とすると簡易だが、意匠的、資産価値的に影響が大きい。
・共用立て配管の配管スペースに余裕がない場合等は、廊下等への露出配管になったりもする。
 
1)隠蔽工法
 
・床・壁の解体復旧を伴うため工事費が高くなる。
 
2)露出工法
 
・隠蔽されていた給水管を露出させて更新する。
・配管が露出し見栄えが良くない。
・簡易だが、意匠的、資産価値的に影響が大きい。
・メーターボックスの開口部が小さく、隠蔽された状態で新しい管に更新しにくい場合など
 
○工程例
①仮設の給水管を設置、切替
②新設給水管ルートの躯体の穴あけ
③新設露出給水管設置
④新設給水管への切替
⑤仮設給水管撤去
 
3)給水管改修工事における注意点
 
●立管を層間変異に追随させる
〇配管の固定
・建物の構造躯体強固に支持固定を取ることが基本。
→コンクリートブロックやALC板などの二次部材は”構造耐力上の主要な部分”とならない。
→立管の場合は、コンクリートスラブの貫通部分に金物を用いて固定するのが現実的。
・高層の建物では、地震があった場合、地震力により建物が層間変形するので、その建物の変異に、給水立管を追随させなくてはならない。
〇塩ビライニング鋼管
・古い物だと可撓性のない”ねじ込み式”によって接合されていることが多いが、これは腐食状況によっては大地震時の建物の変形に追随できない可能性がある。
〇ステンレス管
・立管の継手には可撓性のある”ハウジング形管接手”が望ましい。
〇メーターボックス内で更新
・引き抜き工法等により仮設給水管を設けずに行うと経済的。
 
●配管の建物への導入部
・地中に埋設する管では、建物への導入部分を、地盤沈下や地震などによる変動に対し追随できるようにする必要がある。
例)
・柔軟性の極めて高い配管材(水道配水用ポリエチレン管)を使用したうえで、さらに3方向に曲がりを設けることで変位に追随しやすくしている。
・フレキシブル継手を使用する。
・配管用のピット(くぼみ)を設けて、地中埋設としない。
 
(2)排水管の更新
 
・配管を耐食性に優れ、耐久性のある材質のものに取替える。
・継手は耐食管材に合った耐食継手仕様のものに取替える。
・高層住宅等では地震時の揺れにある程度対応できる可とう継手仕様(メカニカルドレン継手等)とする。
 
1)排水管改修の標準的な工程、注意点
 
①工事場所の養生
・経験豊富の工事会社とそうでない工事会社とで大きな差がでる。
 
②器具の取外し
・トイレの向こう側がパイプスペースとなっている場合は、トイレの奥側の壁を解体する必要がある。
 
③取外した器具の仮置き
・便器の場合は、共用廊下に仮置きされることが多いが、毛布等で完全に覆うなどの配慮が望まれる。
 
④壁の解体
・木造壁とコンクリートブロック壁とで、コストや工期が大きく変わってくる。
 
⑤古い立管の切断
・切断時にはかなりの騒音が発生する。
・上階からの”ウッカリ排水”の対策が必要。
 
⑥スラブ貫通部のハツリ
・排水立管のスラブ貫通部分は、固いモルタルで拘束されているので、古い排水管を撤去するためには、電動のピック(小型の一種の削岩機)で解体しなければならない。
→強烈な騒音と振動が建物全体に広く響き渡る。
→近年はハツリを不要とした”引き抜き”工法も採用されている。
 
⑦新しい排水管の設置
・防火区画であるスラブを貫通する立管には、建築基準法で定める一定の防火性能が必要。
 
⑧仮の復旧
・一日の工事を終える際には、外した便器を一時的に元に戻す。
 
⑨解体した壁の復旧
・復旧の仕様と範囲をどこまで修繕積立金で行うのかについては、設計段階において検討しておかなければならない。
・必要に応じて壁に点検口を設置する。
 
2)排水管露出更新工法
 
・隠蔽されていた排水管を露出させて更新する。
・専有部に設置された排水立て管の更新が、内装の解体や継ぎ手周りのコンクリートの解体の工事が伴うような場合に採用される。
 
○工程
①給水管・衛生器具を取外し
②天井・壁・床内装解体
③既設排水立て管撤去
④既存継手廻り床解体
⑤新設排水立て管設置
⑥新設排水立て管廻り埋戻し
⑦天井・壁・床内装復旧
 
3)特殊継手工法
 
・コンクリートに打ち込まれていない、トイレ用汚水排水立て管、浴室・台所・洗面用雑排水立て管、通気立て管などを更新する際に、特殊継手を用いて1本の排水立て管に集約する。
 
○工程
①給水管・衛生器具取外し
②内装解体
③既設排水通気管撤去
④新設特殊継手1本設置
⑤内装復旧
⑥給水管・衛生器具取付け
 
4)屋上スラブを貫通する伸頂通気管の改修
 
・通気管の管材には配管用炭素鋼鋼管が使われている場合が多い。
※伸頂通気管より下の排水立管には、排水用塩化ビニルコーティング鋼管(アルファ―鋼管)や鋳鉄管が使われていたとしても、伸頂通気管では、管材を変えて耐久性の低い配管用炭素鋼鋼管が使われる、といったケースが多い。
→通気管には排水が流れてこないので腐食しないと考えてのこと。
・排水から上がってくる硫化水素などを含んだガスや湿気などによって部分的に腐食が生じて、管接合部が割れたり、穴が開いたりする場合がある。
 特に屋上スラブの下側にソケットが設けられている場合など、配管用炭素鋼鋼管のねじ接合部がある部分を中心に割れてしまう事例が報告されている。
・屋上スラブを貫通する部分は防水層が敷かれているので、簡単に更新することができない。
→屋上防水の改修時に伸頂通気管の屋上スラブ貫通部分も同時に改修するようにする。
・伸頂通気管が、2住戸系統分を1本にまとめてから屋上スラブを貫通しているようなマンションでは、通気性能が低くトラップの封水に悪影響が生じている場合もある。
→1住戸系統ごとの大気開放形態に改善したい。
・屋上には既製品の屋上貫通ユニット(ハトコッコ)を設置し、貫通部に直接雨が当たらないようにする。
排水立て管の更新
●概要
 
・従来は、下層の階から継手の受口に配管を差込んで積み上げていく仕組みのため、更新する際には排水立て管を切断する必要があった。
・スライド継手工法、やりとり継手工法では、排水立て管を切断せずに更新が出来る。
 
●スライド継手工法
 
・スライド継手を使用する事によって、立て管を接続しているスライド継手を上方にスライドし、立て管下側を水平方法にずらす事によって立て管を外すことができる。
 
●やりとり継手工法
 
・更新時にくぐり代(クリアランス)を確保できるようにした継手を使用する。
→クリアランスがあるので、立て管を持ち上げると立て管下側を水平方法にずらす事ができ、立て管を外すことができる。
 
●既存管無騒音引き抜き工法
 
ⅰ)古い配管を適当な寸法で切断。 ・室内のパイプシャフト内に設置されていた排水立管を、まずスラブを挟んだ上下の階、露出している部分をそれぞれ適当な寸法でカットする。
ⅱ)油圧ジャッキで古い配管を上階スラブへ押し込みながら抜いていく。
・スラブ貫通部から下に突き出た部分を、下の階から、ジャッキで上階方向に押し上げる。
排水管の更正と更新を併用する工法
●概要
 
・老朽化した既存の排水管の埋設部を除いて、排水管継手の上下と枝管を切断。
 ↓
埋設部の継手を含む管内を研磨・洗浄。
 ↓
下記2つの工法などによって管を更正。
 ↓
切断した立て管を更新
 
●工法
 
・ポリエステルの芯材筒にエポキシ樹脂を含浸させ、ゴムチューブを用いて圧着して、一体的に内管を形成する工法
・継手の分岐枝部に熱膨張樹脂管を圧着させ、その立て管部はポリエステル芯材筒にエポキシ樹脂を含浸させたもので更正する工法。
給排水管の保温
(1)給排水管の保温工事
 
※参考
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)
 
1)保温の種別
 
●給水管
①屋内露出(一般居室、廊下)
イ)ロックウール保温材
・保温筒→鉄線→合成樹脂製カバー1
ロ)グラスウール保温材
・保温筒→鉄線→合成樹脂製カバー1
ハ)ポリスチレンフォーム保温材
・保温筒→粘着テープ→合成樹脂製カバー1
 
②機械室、書庫、倉庫
イ)ロックウール保温材
・保温筒→鉄線→原紙→アルミガラスクロス
ロ)グラスウール保温材
・保温筒→鉄線→原紙→アルミガラスクロス
ハ)ポリスチレンフォーム保温材
・保温筒→粘着テープ→アルミガラスクロス
 
③天井内、パイプシャフト内、空隙壁中
イ)ロックウール保温材
・アルミガラスクロス化粧保温筒→アルミガラスクロス粘着テープ
ロ)グラスウール保温材
・アルミガラスクロス化粧保温筒→アルミガラスクロス粘着テープ
ハ)ポリスチレンフォーム保温材
・アルミガラスクロス化粧保温筒→アルミガラスクロス粘着テープ
 
④暗渠内、ピット内
ハ)ポリスチレンフォーム保温材
・保温筒→粘着テープ→ポリエチレンフィルム→着色アルミガラスクロス
 
⑤屋外露出(バルコニー、開放廊下を含む)、多湿箇所(浴室等)
ハ)ポリスチレンフォーム保温材
・保温筒→粘着テープ→ポリエチレンフィルム→ステンレス鋼板
※ステンレス鋼板の他にカラー亜鉛鉄板(塗装溶融亜鉛めっき鋼板)、溶融アルミニウム-亜鉛鉄板(ガルバリウム鋼板)もある。
 
●排水管
①屋内露出(一般居室、廊下)
・給水管と同様。
 
②機械室、書庫、倉庫
・給水管と同様。
 
③天井内、パイプシャフト内、空隙壁中
・給水管と同様。
 
④浴室、厨房等の多湿箇所
・給水管と同様。
 
●給湯管
①屋内露出(一般居室、廊下)
イ)ロックウール保温材
・保温筒→鉄線→合成樹脂製カバー1
ロ)グラスウール保温材
・保温筒→鉄線→合成樹脂製カバー1
 
②機械室、書庫、倉庫
イ)ロックウール保温材
・保温筒→鉄線→原紙→アルミガラスクロス
ロ)グラスウール保温材
・保温筒→鉄線→原紙→アルミガラスクロス
 
③天井内、パイプシャフト内、空隙壁中
イ)ロックウール保温材
・アルミガラスクロス化粧保温筒→アルミガラスクロス粘着テープ
ロ)グラスウール保温材
・アルミガラスクロス化粧保温筒→アルミガラスクロス粘着テープ
 
④暗渠内、ピット内
イ)ロックウール保温材
・保温筒→鉄線→ポリエチレンフィルム→着色アルミガラスクロス
ロ)グラスウール保温材
・保温筒→鉄線→ポリエチレンフィルム→着色アルミガラスクロス
 
⑤屋外露出(バルコニー、開放廊下を含む)、多湿箇所(浴室等)
イ)ロックウール保温材
・保温筒→鉄線→ポリエチレンフィルム→ステンレス鋼板
ロ)グラスウール保温材
・保温筒→鉄線→ポリエチレンフィルム→ステンレス鋼板
※ステンレス鋼板の他にカラー亜鉛鉄板(塗装溶融亜鉛めっき鋼板)、溶融アルミニウム-亜鉛鉄板(ガルバリウム鋼板)もある。
 
2)保温材、外装材
 
●保温材
〇アルミガラスクロス化粧保温筒
・保温筒の表面をアルミガラスクロスで被覆したもの。
 
●外装材
〇合成樹脂製カバー1(シートタイプ)
・合成樹脂を使用した難燃性の樹脂製カバーは、JIS A 1322(建築用薄物材料の難燃性試験方法)に規定する防炎2級に合格したもので板厚は、0.3mm以上とする。
 
〇アルミガラスクロス
・厚さ0.02㎜のアルミニウム箔に、JIS R 3414(ガラスクロス)に規定するEP11Eをアクリル系接着剤で接着させたものとし、管等に使用する場合は、適当な幅に裁断し、テープ状にしたものとする。
 
〇アルミガラスクロス粘着テープ
・アルミガラスクロスのガラスクロス面に粘着剤を粘着加工し、剥離紙をもってその粘着力を保持したものとし、JIS Z 0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)による粘着力1.5N/10mm以上のものとする。
 
〇着色アルミガラスクロス
・アルミガラスクロスの表面にアクリル系塗料を焼付塗装(焼付温度240℃以上、着色塗布量4g/㎡以上)したもの。
 
3)施工方法
 
●ポリスチレンフォーム保温筒
・合わせ目を全て粘着テープで止め、継目は、粘着テープ2回巻きとする。
・継目間隔が600 ㎜以上1,000 ㎜以下の場合は、中間に1箇所粘着テープ2回巻きを行う。
 
●鉄線巻き
〇帯状材の場合
・50㎜ピッチ以下にらせん巻き締め
〇筒状材の場合
・1本につき2 箇所以上、2巻き締め。
〇アルミガラスクロス化粧保温筒
・合わせ目及び継目を全てアルミガラスクロス粘着テープで貼り合わせ、筒は継目間隔が600 ㎜以上1,000 ㎜以下の場合は中間に1箇所アルミガラスクロス粘着テープ2回巻き。
 
●テープ巻きその他の重なり幅
・原則として、テープ状の場合は15 ㎜以上(ポリエチレンフィルムの場合は1/2重ね以上)、その他の場合は30 ㎜以上とする。
 
●テープ巻き
・配管の下方より上向きに巻き上げる。
・アルミガラスクロス巻き等で、ずれるおそれのある場合には、粘着テープ等を用いてずれ止めを行う。
 
●アルミガラスクロス化粧保温筒
・ワンタッチ式(縦方向の合わせ目に貼り合わせ用両面粘着テープを取付けたもの)の合わせ目は、接着面の汚れを十分に除去した後に貼合わせる。
 
●合成樹脂製カバー1の取付け
・重ね幅は25mm 以上とし、直管方向の合わせ目を両面テープで貼合せた後、150mm 以下のピッチで、合成樹脂製カバー用ピンで押さえる。
・立て管部は、下からカバーを取付け、ほこり溜まりの無いよう施工する。
 
●合成樹脂製カバー2の取付け
・合成樹脂製シート端部の差込みジョイナーに、ボタンパンチを差し込んで接合し、エルボ部分と直管部分の継目は、シーリングを行う。
・立て管部は、下からカバーを取付け、ほこり溜まりの無いよう施工する。
 
●金属板巻き
・管の場合ははぜ掛け又はボタンパンチはぜ、曲り部はえび状又は整形カバーとする。
 
●屋内露出の配管及びダクトの床貫通部
・その保温材保護のため、床面より少なくとも高さ150 ㎜までステンレス鋼板で被覆する。ただし、外装材にカラー亜鉛鉄板等の金属板を使用する場合を除く。
 
●屋内露出配管の保温見切り箇所
・菊座を取付ける。
 
(2)給水管の凍結防止(保温、仕上)
 
※参考
東京都水道局 給水装置設計・施工基準(給水装置編)
 
・屋外で気温が著しく低下しやすい場所その他凍結のおそれのある場所にあっては、耐寒性能を有する給水装置を設置するか、又は断熱材で被覆すること等により適切な凍結防止のための措置を講じる。
 
1)対象工事、対象箇所
 
●対象工事
・給水装置、受水タンク以下装置の新設及び改造工事
 
●対策箇所
〇給水管
・屋外露出配管、壁中配管及び受水タンク以下装置の配管
ただし、断熱材を施してある壁中配管の給水管は除く。
 
〇メータ
・メータます内に設置するもの:全部
・屋外パイプスペースに設置するもの:メータ室の扉に通気口(換気ガラリ)があるもの。
 
2)使用材料
 
●給水管
・管の外面を直接覆う保温材を使用する。
 
●メータ
〇メータます内に設置するもの
・保温材付きメータますを使用する。
〇屋外パイプスペースに設置するもの
・メータを直接覆うメータカバーを使用する。
 
3)使用材料の厚さ
 
●給水管
・屋外露出部:15㎜以上
・壁中配管、受注タンク以下装置の配管:10mm以上
 
●メータ
・直結:20mm以上
・受水タンク以下装置:15mm以上
 
4)使用材料の材質
 
・以下のもの又はこれらと同等以上の材質、保温効果を有するものを使用する。
ア)発泡ポリエチレン
イ)ポリエチレンとスチロ-ルを共重合し発泡させたもの
ウ)硬質ウレタン
・給水管用保温材については、他にグラスウール等一般に市販されているものでもよい。
 
5)施工方法
 
●給水管
〇施行手順
ア)管の外面を保温材で保護する。
イ)保温材の外面をテープで被覆する。
 
〇施工上の注意
・テープ巻は、保温材を圧縮しないよう施工する。
・テープ巻は、テープ幅の1/2以上重ね合わせて二重巻とし、下から上に沿って巻き上げ、雨水等の侵入を防ぐよう施工する。
・保温材の端部は、外部より湿気等が入らぬよう処理する。
・建物に沿う給水管は、支持バンド又は支持金等で1mから2mまでの間隔で固定し、振動やたわみ等から保護する。
 
●メータ
〇メータます内に設置するもの
・保温材付きメータますを使用する。
 
〇屋外パイプスペースに設置するもの
・各メーカーの施工手順に従い、密閉機能を損なわないように施工する。
・メータ引換等の支障にならないように空間を確保する。
防火区画の配管貫通処理
(1)防火区画の配管貫通処理の概要
 
●建築基準法の防火区画
・建築基準法で性能が定められている「所定の耐火性能を持った床又は壁」
〇主な対象建築物
・非住宅(学校・病院・工場・オフィスビル・ホテル等)
〇区画貫通部の規定(建築基準法施行令129条2の4第1項第七号)
以下のいずれかの構造方法を用いなければならない
イ)壁or床から両側1mを不燃材
・配管が貫通する隙間をモルタル等の不燃材料で埋め戻す。
ロ)貫通する配管(難燃材or塩ビ)の外径を規定未満とする。
ハ)性能規定
・耐火性能:20分間、45分間、最大60分間
・証明方法:国土交通大臣認定書
 
●共住区画
・特定共同住宅における「住戸等間の開口部のない耐火構造の床又は壁による区画
〇主な対象建築物
・マンション、公営住宅、寮等。
〇区画貫通部の規定(平成17年消防庁告示2号、4号)
以下のいずれかの構造方法を用いなければならない
イ)壁or床から両側1mを不燃材(建築基準法施行令129条2の4第1項第七号イ)
・配管が貫通する隙間をモルタル等の不燃材料で埋め戻す。
ロ)貫通する配管(難燃材or塩ビ)の外径を規定未満(建築基準法施行令129条2の4第1項第七号ロ)
ハ)性能規定
・耐火性能:1時間
・要求性能:遮炎性
・証明方法:(一財)日本消防設備安全センターの性能評定書
 
●令8区画
・1つの建築物内で複数の防火対象を定める場合に必要な区画
〇主な対象
・マンションと店舗もしくは駐車場との境界
〇区画貫通部の規定(平成7年消防庁予防課長通知53号)
・原則として給排水管以外の貫通は認められておらず、電気配線や樹脂製電線管等を敷設する場合は、令8区画ではない、外壁や地下ピット等を貫通させて導入する。
ハ)性能規定
・耐火性能:2時間
・要求性能:遮炎性、遮煙性、遮熱性
・証明方法:(一財)日本消防設備安全センターの性能評定書
 
(2)貫通処理が必要な箇所
 
●建築基準法による措置の検討が必要な箇所
・特定共同住宅の敷地内に受電設備があり、地下ピットを通じて各EPSへ幹線ケ-ブルが敷設されている場合のEPSへ入る部分
・住戸等にあるMBの上下部分にあるMBとの間の部分
・EPSやMBと廊下等の共用部分との間の部分
・上下を含む隣り合った位置関係にある住戸等間の外壁に0.5m以上の「ひさし等」がある場合の外壁貫通部
 
●消防法の告示性能評価を要する箇所
・特定共同住宅とされる建築物の部分に受電室があり、そこから各EPSへ幹線ケ-ブルが入る部分
・耐火構造の壁で囲まれている竪穴区画であるEPSから、住戸等に入る部分
・MBから住戸等内へ入る部分
・廊下等の共用部分と住戸等との間の部分
・住戸等と住戸等との間の部分
・EPSやMBを介さずに上下の住戸等間に敷設される排水管の床貫通部分
・上下を含む隣り合った位置関係にある住戸等間の外壁に0.5m以上の「ひさし等」がない場合の外壁貫通部
 
(3)防火区画を貫通する管仕様の概要
 
イ)不燃材料(建築基準法施行令129条の2の4第1第7号)
・貫通部分および両側1メートル以内を不燃材料とすること
※これを遵守すれば、そこから先の配管には不燃材料以外の材料を使うことができる。
〇管:鉄管(鋼管)
〇充填剤:隙間をモルタル等の不燃材料で埋め戻す。
〇全ての躯体に適用可能
 
ロ)一定の外径未満の難燃材料や塩ビ製の管(平成12年建設省告示1422号)
〇管:VP管
・排水管と通気管の場合は、厚さ0.5mm以上の鉄板で覆えば、覆いのない場合より太い管を使用することができる。
〇充填剤:隙間をモルタル等の不燃材料で埋め戻す。
〇すべての躯体に適用可能
〇口径と肉厚
・口径については小さい方が有利であるため指定寸法以下を認め、肉厚については厚い方が有利であるため指定寸法以上を認める基準となっている。
・日本建築行政会議が示している「建築設備設計・施工上の運用指針」においては、本告示の表の外径未満のVP管について、表中の肉厚に満たなくても同一の性能を有しているものとして取り扱うこととしている。(口径が決まれば肉厚は一意に定まり、口径が小さくなるほど肉厚も薄くなる傾向にあるが、口径が小さい方が有利側に働くとの経験則を基に定められた)
 
ハ)大臣認定
〇管:任意(例:耐火二層管)
〇充填剤:任意
・不燃材以外の充てん材(加熱膨張材が大半)は特殊性が高い。
〇適用躯体
・中空躯体の場合は、大臣認定工法が適用出来る躯体の仕様に制限がある。
 
(4)大臣認定の主な工法の種類
 
●加熱膨張材を用いる方法
〇熱膨張シート巻き工法
・配管に熱膨張シートを巻き付け、防火区画壁(床)と熱膨張シートの隙間にモルタル等を充填する。
例)フィブロック、耐火テープ、防火キット
〇熱膨張材を内蔵する排水用鋳鉄製継手による工法
・防火区画床を貫通する排水管の床部分に熱膨張材を内蔵する排水用鋳鉄製継手を設置し、隙間にモルタル等を充填する
〇タイカブラック パテエース
・300℃以上の熱を受けると4倍以上に膨らみ、延焼を防止する充填剤。
・貫通部の埋め戻しにモルタルを使用する必要がない。
 
●管自体に耐火性を持たせる方法
〇耐火二層管(繊維混入セメントモルタル被覆合成樹脂管)
・埋戻し材:セメントモルタル、ロックウール
●耐火仕切板と耐熱性シール(パテ)
●耐熱性シール(パテ)
●被覆材とシールを用いる方法
●縁切材による縁切り対策
・鋼管+保温筒+充填材
〇保温筒
・ロックウール保温筒
・ケイカル保温筒
〇充填材
・住宅用ロックウール
・アルカリアースシリケートウール(AES)
〇形状
・突出型(躯体表面から200mm程度突出)
・リブ型(躯体表面と面一)

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