マンションにおけるアスベスト規制、管理組合の対応の概要

2006年(平成18年)9月1日以前に”着工”したマンションでは、アスベストを含んだ建材が使われている可能性があるため、大規模修繕などの工事を行う際、事前調査が必要なようです。マンションにおけるアスベスト規制、大規模修繕工事の際の対応の概要をまとめました。
 
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法規制の概要
1)法規制の変遷
 
①1975年(昭和50年)
・5%を超える石綿の吹付け禁止
②1995年(平成7年)
・1%を超える石綿の吹付け禁止
③2004年(平成16年)
・1%を超える石綿含有建材等(10品目のみ)の製造禁止
④2006年9月(平成18年)
・0.1%を超える石綿含有建材(全て)の製造禁止。
・輸入、製造、使用などは禁止(罰則あり)
  ↓
〇解体工事・改修工事における対策が必要な建築物
・2006年9月1日以前に着工した建築物:アスベスト使用の可能性あり
・2006年9月1日以降に着工した建築物:対象外
 
2)関係法規と所管官庁
 
〇産廃処理
・環境省‐各自治体(市・区)-廃棄物処理法
〇アスベストの飛散対策
・解体等の工事による周辺空気の汚染防止を目的として規制
・環境省‐各自治体(市・区)-大気汚染防止法、条例
〇労働者の安全確保
・厚生労働省-労働基準監督署-労働安全衛生法、石綿則
〇建築基準法
・建築物に関連するところで建物利用者の健康保持の観点から規制
 
3)石綿含有建材と法規制
 
①石綿含有吹付け材
・建築基準法:”著しく衛生上有害な物質”(吹付け石綿・吹付けロックウール)
・石綿則:”吹き付けられた石綿”
・大気汚染防止法:”特定建築材料”
・廃棄法:”特別管理産業廃棄物(廃石綿等)”
②保温材・耐火被覆材・断熱材
・石綿則:”保温材等”
・大気汚染防止法:”特定建築材料”
・廃棄法:”特別管理産業廃棄物(廃石綿等)”
③その他石綿含有建材(成形板等)
・石綿則:”その他の含有建材”
・大気汚染防止法:-
・廃棄法:”石綿含有産廃”
 
4)アスベスト規制の流れ
 
①2014年(平成26年)6月1日 大気汚染防止法改正(環境省)
〇届出義務者の変更
・特定粉じん排出等作業(吹付け石綿等が使用されている建築物等の解体・改造・補修作業)の実施の届出義務者
 工事の施工者→工事の発注者又は自主施工者
〇解体工事の事前調査・説明の義務付け
・受注者は、石綿使用の有無について事前に調査をし、発注者へ調査結果を書面で説明するとともに、その結果等を解体等工事の場所へ掲示することが義務付けられた。
〇立入検査等の対象の拡大
・都道府県知事等による報告徴収の対象に、届出がない場合を含めた解体等工事の発注者、受注者又は自主施工者が加えられ、立入検査の対象に解体等工事に係る建築物等が加えられた。
・法律による罰則あり。
 
②2017年(平成29年)5月30日
・環境省通知「石綿含有仕上塗材の除去等作業における石綿飛散防止対策について」
 
③2017年(平成29年)5月31日
・厚生労働省通知「石綿含有建築用仕上塗材の除去等作業における大気汚染防止法令上の取扱い等について」
 
④2018年(平成30年)3月
・厚生労働省「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル改定 2.20版」
 
⑤令和3年3月「建築物の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル」
※上記法律を所管する環境省と厚生労働省により作成
アスベスト建材の分類、使用箇所
1)アスベストのレベル区分(危険度)
 
・2021年(令和3年)4月1日に法改正
①レベル1:石綿含有吹付け材
②レベル2:石綿含有保温材等
③レベル3:石綿含有成形版等
④石綿含有仕上塗材(下地調整材も含む)
※壁等に吹付け工法で施工された塗膜について、レベル1から”石綿含有仕上塗材”という別区分となり、レベル3と同様の扱いに変更された。
 
2)各レベル区分の材料と使用箇所
 
①レベル1 吹付け材
・著しく発じんしやすい製品、飛散性
・鉄骨の耐火被覆、配管の保温材、各種ボード類
 
②レベル2 保温材等
・発じんしやすい製品、飛散性
・天井裏や地下の配管(給水管、給湯管)の保温材。耐火被覆材、断熱材。
・通常は外側にカバーで覆われていて通常は問題なく飛散することはないが、劣化したりぶつけたり剥がれたりすると中にアスベストが含まれているので飛散する可能性がある。
 
③レベル3 その他石綿含有建材
・発じん性の低い製品、非飛散性
・基本的には固まっているもので、通常の生活においては飛散することはない。
・ボード、せっこう板、セメント板、パネル、床のビニル床タイル・床シート
 
④石綿含有仕上塗材(下地調整材も含む)
・塗材や下地調整材に含まれている場合がある。
大規模修繕工事時の対応のポイント
1)マンション管理組合(発注者)の配慮義務
 
①工事の費用(契約金額)、工期、作業の方法の配慮
・建築物の解体・改修工事の前に施工業者に実施が義務づけられている石綿の有無の調査(事前調査)の結果、石綿が使用されていることが明らかになった場合は、石綿除去等の工事に必要な費用を含めた発注条件について、施工業者が法令を遵守して工事ができるよう配慮すること。
 
②情報提供
・工事を発注する建築物等の事前調査が適切に行われるよう、石綿の有無についての情報がある場合は、その情報を施工業者に提供するなどの配慮をすること
 
③写真の撮影許可
・石綿除去等の工事を行う場合に、施工業者に義務づけられる作業の実施状況についての写真等による記録が適切に行われるよう、写真の撮影を許可する等の配慮をすること
 
2)大規模修繕工事・改修工事を行う受注者の義務
 
①工事開始前の石綿の有無の調査
・工事対象となるすべての部材について、石綿が含まれているかを事前に設計図書などの文書と※”目視”で調査し(事前調査)、調査結果(分析調査を含む)の記録を3年間保存すること(令和3年4月施行)
・建築物の事前調査は、厚生労働大臣が定める講習を修了した石綿含有建材調査者等に行わせること(令和5年10月施行)
※目視
・単に目で見て判断することではなく、現地で部材の製品情報などを確認すること
・目視ができない部分は、目視が可能となった時点で調査する
・事前調査で石綿含有の有無が不明であった場合は分析による調査を実施することが義務づけられているが、「石綿が含有されているとみなして労働安全衛生法令に基づく措置を講じれば、分析は不要とする」とされている。
 
②工事開始前の労働基準監督署への届出
・一定規模以上の建築物や特定の工作物の解体・改修工事は、事前調査の結果等を電子システム(スマホも可)で届け出ること(令和4年4月施行)
※届出の対象となる(報告が必要とされる)建築物の改修工事は、請負金額が100万円以上。
 
③石綿含有仕上塗材・成形板等の除去工事に関する規制
・石綿含有仕上塗材の除去工法として、ディスクグラインダーを用いての除去、高圧水洗による除去、超音波剥離機による除去等があるが、ディスクグラインダー等を用いて除去する工事は、作業場を隔離する(令和3年4月施行)とあり、この場合、作業場所を負圧に保つ必要はないが、ビニルシートなどにより作業場所を隔離し、湿潤な状態に保ちながら作業する必要がある。
・高圧水洗工法、超音波剥離機による工法等は作業場所の隔離は不要。
・石綿が含まれている成形板等の除去工事の原則切断・破砕等によらない方法で行うことについては、令和2年10月から義務化され、施行されている。
 
④作業の記録
・石綿が含まれている建築物の解体・改修工事は、作業の実施状況を写真等で記録し、3年間保存すること
・労働者の作業記録の40年間保存について記録項目の追加
 
●施工者に必要な資格等
〇元請会社
・特別管理産業廃棄物管理責任者
・石綿作業主任者(石綿作業時常駐)
・建築物石綿含有建材調査者
〇協力会社
・石綿作業主任者(実質工事時常駐)
・作業員:特別教育講習
・作業員:定期健康診断(じん肺、有機溶剤他)

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